アパート売却の手残りはいくら?入居者がいるまま売る流れと税金・買取

賃貸アパートを入居者がいるまま売却したときの手残りの計算方法と税金の注意点を解説する記事のイメージ

空室が増えた、修繕の見積もりが高かった、相続したが管理まで手が回らない——アパートを売ろうと考える理由はさまざまです。多くの方が最初に調べるのは「いくらで売れるか」ですが、実際に生活が変わるのは売却代金から残債と税金を引いて残る金額のほうです。

結論から言うと、手残りは「売却価格 − ローン残債 − 諸費用 − 譲渡所得税」で計算します。多くの人がつまずくのが税金で、買った値段より安く売っても税金が数百万円かかることがあります。賃貸期間の減価償却費が、計算上の取得費から差し引かれているからです。

この記事を読むとわかること

  • アパート売却の手残りの計算式と、具体的な金額のシミュレーション
  • 帳簿上は損なのに税金が出る理由(減価償却と取得費の関係)
  • 入居者がいるまま売るときに引き継がれるものと、売却の流れ
  • 査定価格が家賃と利回りから逆算される仕組み
  • 仲介で売れないときの買取・更地という選択肢の比べ方

この記事の結論

  1. 手残りは「売却価格 − ローン残債 − 諸費用 − 譲渡所得税」。価格だけで判断すると、残債と税金で手元がほとんど残らないことがあります。
  2. 取得費は賃貸期間に経費にした減価償却費を差し引いた金額です。4,200万円で買って4,000万円で売っても、税金が約335万円かかる例を本文で計算しています。税率は売った年の1月1日時点で5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%です。
  3. 入居者がいても売れます。同意は不要で、賃貸人の立場と敷金の返還義務はそのまま買主に引き継がれます。
  4. 価格は「年間の純収益 ÷ 還元利回り」で逆算されるため、空室が2戸増えると1,000万円以上下がることもあります。木造の法定耐用年数22年超では買主の融資も付きにくくなります。

アパート売却の手残りはいくら?計算式と3つの落とし穴

結論

手残りは「売却価格 − ローン残債 − 諸費用 − 譲渡所得税」で計算します。買った値段より安く売っても税金が出るため、売却価格だけで判断すると見込みが大きく外れます。

アパートの売却は、区分マンション1戸とは前提が違います。ローン残債が大きく、賃貸期間が長いぶん減価償却が進み、敷金や家賃の精算も発生します。

手残りの計算式は「売却価格 − 残債 − 諸費用 − 税金」

手元に残る金額は、次の4つを順に引いて求めます。このうち残債と税金が想定より大きくなりがちです。

引くもの 中身
ローン残債 決済日時点の残高。抵当権を抹消するために全額返済が必要
諸費用 仲介手数料、売買契約書の印紙税、抵当権抹消の登記費用、繰上返済手数料、測量費など
譲渡所得税・住民税 売却益に対する税金。売った年の翌年に確定申告して納める
精算で出ていくお金 入居者から預かっている敷金、前受けしている翌月分の家賃

※諸費用の内訳と目安は不動産売却の費用一覧で説明しています。

注意したいのは、敷金は売主の収入ではない点です。入居者に返すべきお金を預かっているだけなので、引渡し時に買主へ引き継ぎます。満室のアパートなら数百万円になることもあり、手残りの計算から抜け落ちやすい項目です。

落とし穴1:減価償却で取得費が目減りしている

税金の計算では、売却価格から「取得費」と「譲渡費用」を引いた金額が譲渡所得になります。この取得費は、買ったときに払った金額そのままではありません。

用語の補足:譲渡所得

不動産を売って出た利益のことです。給与や家賃収入とは分けて計算する「分離課税」で、税率も別に決まっています(国税庁:暮らしの税情報「土地や建物を売ったとき」)。

国税庁は、事業用に使っていた期間については、必要経費に算入した減価償却費の累積額を取得価額から差し引いて取得費を計算するとしています(国税庁:所得税基本通達38-9の2関係)。賃貸アパートは事業用なので、経費にしてきた減価償却費がそのまま取得費から消えます。

長く賃貸に出していたアパートほど取得費が小さくなり、売却価格が購入価格を下回っていても計算上の利益が出てしまいます。

具体例

4,200万円で買った木造アパートを、20年後に4,000万円で売った場合

  • 購入時:土地2,000万円+建物2,200万円=合計4,200万円
  • 木造住宅の法定耐用年数は22年。定額法で毎年およそ100万円(2,200万円÷22年)を経費にしてきた
  • → 20年間の減価償却費の累計 約2,000万円/建物の未償却残高 約200万円
  • → 取得費=土地2,000万円+建物200万円=2,200万円
  • → 譲渡所得=4,000万円 −2,200万円 −譲渡費用150万円=1,650万円
  • → 所有5年超なので税率20.315% → 税額 約335万円

売買だけ見れば「4,200万円で買って4,000万円で売った=200万円の損」ですが、税金は約335万円。これが「損したのに課税される」仕組みです。

ローン残債2,200万円、諸費用150万円とすると、手残りは 4,000万円 −2,200万円 −150万円 −335万円=約1,315万円。さらに敷金を引き継げば、実際に動く現金はその分減ります。

注意

上の計算は仕組みを示すための試算で、譲渡費用150万円は仮の金額です。減価償却費の累計額は、確定申告書に添付した青色申告決算書(不動産所得用)の減価償却費の計算欄で確認できます。

帳簿上の黒字と手元の現金がずれていく現象は、デッドクロスとしても知られています。売却を考える時期と重なりやすい論点です。

落とし穴2:売却損は給与や家賃収入と相殺できない

「損して売ったのだから、ほかの所得の税金が安くなるのでは」と考える方は多いのですが、できません。国税庁は、土地建物等の譲渡による損失は、原則として土地建物等の譲渡所得以外の所得と通算されないとしています(国税庁 No.3203)。

相殺できるのは、同じ年に別の土地や建物を売って利益が出ている場合だけです。給与所得やほかの物件の不動産所得とはぶつけられません。自宅(居住用財産)の譲渡損失には例外がありますが、賃貸アパートは対象外です。

この仕組みは区分マンションでも同じで、ワンルーム投資の損切り売却でも数字を追って解説しています。

落とし穴3:建物部分に消費税がかかる

アパートの売却代金は、土地部分と建物部分に分けて考えます。国税庁は土地(借地権などを含む)の譲渡及び貸付けを消費税の非課税取引として挙げています(国税庁 No.6201)。一方で建物の譲渡は課税取引です。

つまり売主が課税事業者なら、建物部分の売却代金に消費税の納税義務が生じます。個人事業者が課税事業者かどうかは、原則として基準期間(課税期間の前々年)の課税売上高で判定します(国税庁 No.6501)。

注意

住宅の家賃は非課税売上なので、居住用アパートだけなら免税事業者であることが多く、建物部分にも消費税はかかりません。ただし店舗・事務所を貸している、ほかに課税売上がある、課税事業者を選択している場合は変わります。売却前に税理士へ判定を依頼してください。

この項目のまとめ
  • 手残り=売却価格 − ローン残債 − 諸費用 − 譲渡所得税。敷金の引き継ぎも忘れずに差し引く
  • 取得費は減価償却費の累計を引いた後の金額。長く貸していた物件ほど税金が出やすい
  • 譲渡損が出ても給与・家賃収入とは相殺できない。課税事業者なら建物部分に消費税も

アパート売却の税金|税率は1月1日時点の所有期間で2倍違う

結論

税率は売った年の1月1日時点で所有5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%。判定は「売った日」ではなく「売った年の1月1日」で行うため、年末か年始かで税額が倍近く変わります。

税率の判定日は「売った年の1月1日」

国税庁の資料では、長期譲渡所得か短期譲渡所得かによって適用する税率が異なるとされ、税率表には長期が所得税15%・住民税5%、短期が所得税30%・住民税9%と示されています(国税庁:土地や建物を売ったとき)。これに復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が加わり、実務では20.315%・39.63%を使います。

区分 所有期間の判定 税率
長期譲渡所得 売った年の1月1日時点で5年超 20.315%
短期譲渡所得 売った年の1月1日時点で5年以下 39.63%

※所得税15%/30%、住民税5%/9%に復興特別所得税分を加えた割合です。

この「1月1日」の数え方で損をする人が毎年います。2021年6月に買ったアパートを2026年8月に売ると、保有は5年2か月ですが2026年1月1日時点では4年7か月なので短期扱いです。年明けまで待てば長期になります。数え方は短期譲渡所得は何年まで?で整理しています。

事業用アパートの取得費は「償却費を引いた後」の金額

取得費の計算は、建物を事業(賃貸)に使っていたかどうかで変わります。

  • 賃貸に出していた期間:必要経費に算入した減価償却費の累積額を取得価額から差し引く
  • 自分で住んでいた期間など非事業用の期間:取得価額×0.9×償却率×経過年数の「償却費相当額」を差し引く(取得価額の95%が限度)
  • 土地は減価しないため、購入時の金額がそのまま取得費になる

非事業用の計算式と95%の上限は国税庁 No.3261に示されています。アパートのように長期間貸していた建物は、未償却残高がほとんど残らないのが普通です。

取得費を正しく出すには、土地と建物の内訳が分かる売買契約書が欠かせません。建物価格が分からないと減価償却を計算できず、取得費を実額で主張できなくなります。

契約書がないと取得費は売却価格の5%

購入時の契約書が見つからない場合、取得費を売却価格の5%として計算する方法があります(国税庁:譲渡所得の申告のしかた)。ただしこれは税額がもっとも大きくなる計算方法です。

結論

4,000万円で売って取得費が5%=200万円とされると、譲渡所得は約3,650万円、長期でも税額は約741万円。実額計算(約335万円)と比べて400万円以上の差です。売買契約書は必ず探してください。

代替資料の探し方は投資用マンションの取得費がわからないで説明しています。アパートでも考え方は同じです。

この項目のまとめ
  • 税率の判定は「売った年の1月1日」時点。5年超か5年以下かで20.315%と39.63%に分かれる
  • 賃貸期間の減価償却費は全額が取得費から差し引かれる
  • 契約書を失うと取得費は売却価格の5%。税額が数百万円増えることがある

入居者がいるまま売る方法|引き継がれるものと売却の流れ

結論

入居者がいても売れます。売却に入居者の同意は必要ありません。賃貸人としての立場と敷金の返還義務は、そのまま買主に引き継がれます。

「入居者がいるから売れない」と心配される方は多いのですが、賃貸中のまま売る取引は「オーナーチェンジ」として広く行われています。退去を待つあいだの家賃の空白や立ち退き交渉を避けられる利点もあります。

入居者の同意は不要・敷金は買主へ

賃借人が対抗要件を備えた賃貸不動産が譲渡されたときは、賃貸人としての立場は当然に買主へ移ります。これに伴い敷金の返還債務と費用償還債務も買主が承継すると民法605条の2で定められています。

ただし地位の移転を入居者に主張するには所有権移転登記が必要です。また引渡し後は家賃の振込先が変わるため、入居者への通知は必ず行います。遅れると旧口座に家賃が入り続け、精算が何か月も続きます。

POINT

引渡しと同時に買主へ移るもの

  • 賃貸人としての立場(契約の当事者が買主に変わる)
  • 敷金の返還義務(だからこそ預かっている敷金そのものを引き渡す)
  • 入居者が支出した必要費・有益費の償還義務、設備の修繕に応じる義務

敷金・前受賃料・固定資産税の精算

決済日には、売買代金とは別に次の精算を行います。戸数が多いぶん精算額も大きくなります。

横にスクロールできます

精算する項目 どちらが渡すか 考え方
敷金 売主 → 買主 入居者に返すべきお金を預かっているだけなので、全額を引き渡す
当月分の家賃 日割りで分ける 決済日を境に、引渡し前は売主、引渡し後は買主の収入
前受けした翌月分の家賃 売主 → 買主 翌月分を月末に前払いで受け取る契約なら、その分を引き渡す
固定資産税・都市計画税 日割りで分ける 1月1日の所有者に納税通知が来るため、売買では日割り精算するのが一般的

※契約内容によって精算の方法は変わります。家賃5万円・8戸・敷金1か月なら、引き渡す敷金は40万円になります。

敷金の精算でつまずく例は少なくありません。手順はオーナーチェンジ物件の売却で説明しています。

売却の流れは5ステップ

  1. 資料をそろえる賃貸借契約書・レントロール・返済予定表・売買契約書を集める。ここが最も時間がかかる
  2. 残債と手残りを試算する金融機関に残高を確認し、価格の見込みから残債・諸費用・税金を引く
  3. 複数社の査定を比べる仲介の査定額と買取価格の両方を取り、利回りの根拠まで聞く
  4. 売却先を決めて契約する仲介なら媒介契約、買取なら直接売買契約。設備の不具合や滞納は隠さず申告する
  5. 決済・引渡しと通知残債を完済して抵当権を抹消し、敷金・家賃を精算。入居者と管理会社へ通知する

資料集めから決済まで、仲介なら3〜6か月を見込むのが現実的です。買主が融資を使う場合は審査の期間も加わります。

そろえておく書類

アパートの売買では、建物そのものより「いくら家賃が入っているか」が価格を決めます。賃貸の実態を証明する書類がそろっているかが、価格と成約率を左右します。

  • 全戸の賃貸借契約書(更新契約書・覚書を含む)とレントロール
  • 家賃の入金記録と、滞納の有無・金額が分かる資料
  • 購入時の売買契約書と、建物価格が分かる内訳
  • 確定申告書の控えと青色申告決算書(減価償却費の累計を確認するため)
  • ローンの返済予定表・残高証明書
  • 修繕・設備交換の履歴、建築確認済証・検査済証
用語の補足:レントロール

部屋ごとの家賃・敷金・契約期間・入居日などをまとめた一覧表です。買主はこれをもとに収入を見積もるため、記載が実態とずれていると価格の交渉や契約の解除につながります。

注意

満室に見せるために実態のない入居者を入れる行為は、買主に対する重大な説明義務違反です。退去予定や滞納も、分かった時点で正直に伝えてください。引渡し後に判明すると損害賠償や契約解除の問題になります。

アパートの査定価格はどう決まる?収益還元法と築年数の壁

結論

アパートの価格は、建物の新しさではなく「年間の純収益 ÷ 還元利回り」で逆算されます。空室が増えて純収益が下がると、価格は利回りの分だけ大きく下がります。

価格は「年間の純収益 ÷ 還元利回り」で逆算される

収益物件の価格の求め方は「収益還元法」と呼ばれます。国土交通省の資料では、直接還元法について対象不動産の一期間の純収益を還元利回りで還元して収益価格を求める方法と説明されています(国土交通省:不動産鑑定評価基準の改正に関する資料)。

  1. 年間の家賃収入満室想定ではなく実際の入居率で見る
  2. 運営費を引く固定資産税・管理費・修繕費・保険料など
  3. 年間の純収益が出るこれが価格の元になる数字
  4. 還元利回りで割る立地・築年数・構造で買主が求める利回りが変わる
図:アパートの査定価格が決まるまでの流れ
用語の補足:還元利回り

買主が「この物件ならこれくらいの利回りがほしい」と考える割合です。都心の新しい物件なら低く、地方や築古なら高くなります。利回りが高いほど、同じ家賃収入でも価格は安くなります。

具体例

年間の純収益360万円のアパートの価格(利回り別)

  • 前提:月額家賃5万円×8戸=年間480万円/運営費120万円 → 純収益360万円
  • 還元利回り8%の場合:360万円 ÷0.08=4,500万円
  • 還元利回り10%の場合:360万円 ÷0.10=3,600万円
  • → 利回りが2ポイント変わるだけで900万円の差

査定額に差が出たときは、金額ではなく「どの利回りを使ったか」を聞いてください。根拠を説明できない会社は価格の妥当性も説明できません。

空室が2戸増えると1,000万円以上下がる

価格が純収益から逆算される以上、空室は家賃の減収だけでなく、資産価値そのものを削ります。

具体例

8戸のアパートで空室が2戸出た場合(還元利回り9%で計算)

  • 満室:家賃480万円 −運営費120万円=純収益360万円 → 360万円 ÷0.09=4,000万円
  • 2戸空室:家賃360万円 −運営費120万円=純収益240万円 → 240万円 ÷0.09=約2,666万円
  • → 年間の家賃の減収は120万円だが、価格は約1,334万円下がる

家賃を下げて埋めるか空室のまま売るかは、下げた家賃がそのまま価格の下落になる点をふまえて判断します。

注意

家賃を1戸あたり5,000円下げて満室にすると、年間家賃は48万円減ります。還元利回り9%なら価格は約533万円下がる計算です。「とりあえず埋める」判断が売却価格を大きく下げることがあります。

木造22年の耐用年数が買主の融資を止める

国税庁の耐用年数表では、木造・合成樹脂造の住宅用建物の法定耐用年数は22年とされています(国税庁:主な減価償却資産の耐用年数表)。金融機関の多くは、この残り年数を融資期間の目安にします。

そのため築22年を超えた木造アパートでは、買主が長期の融資を組みにくくなります。融資が付かない物件は現金で買える人しか買主になれず、買主の数そのものが減ります。これが築古アパートの価格が落ちる主な理由です。

POINT

築年数が価格に効く3つの経路

  • 買主の融資期間が短くなり、返済額が増えるため買える価格が下がる
  • 買主が求める還元利回りが上がり、同じ家賃収入でも価格が下がる
  • 修繕・設備交換の見込み額を価格から引かれる
ちょっと一息

そのアパート、入居者がいるまま今いくらで売れるか知っていますか?

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アパートが売れないときの3つの選択肢|仲介・買取・更地

結論

選択肢は仲介・買取・更地にして売るの3つです。築古で融資が付かない物件は、仲介で時間をかけても買主が現れないことがあります。期間と手残りの両方で比べてください。

仲介で売る|高いが買主が限られる

仲介は買主を探して売る方法で、相場に近い価格を狙えます。一方で収益物件を買える人は投資家と事業者に限られ、融資が付かない築古物件では候補がかなり絞られます。

入居者がいるまま売るメリット

  • 売れるまで家賃収入が続く
  • 立ち退き料や空室期間の負担がない
  • 収益の実績を示せるので価格の根拠が明確

空室にしてから売るメリット

  • 自分で住む人・建て替える人も買主になれる
  • 室内を見せられるので建物の状態を評価してもらえる
  • 更地にする選択肢も取れる

入居者に退去してもらう場合は、立ち退き料が必要になることがあります。金額の目安と税金上の扱いは立ち退き料の相場はいくら?を参照してください。

買取で売る|入居者も修繕もそのまま

買取は、不動産会社や買取業者が直接の買主になる方法です。買主を探す期間が不要で、入居者がいる状態・修繕が必要な状態のまま引き渡せます。価格は仲介の相場より低くなりますが、確定した金額と時期で手残りを計算できます。

  • 仲介に出して3か月以上、内見の申し込みが入らない
  • 築年数が古く、買主の融資が付かないと言われた
  • 大規模修繕や設備交換の見積もりが出て、持ち続ける判断がつかない
  • 遠方に住んでいて管理が続けられない、相続人が複数で早く現金にして分けたい

当てはまるなら、仲介の査定と並べて買取価格も確認しておくとよいでしょう。

更地にして売る|解体費と税金の負担に注意

建物を解体して土地として売る方法もあります。買主の幅が広がる反面、解体費を売主が先に負担し、固定資産税も上がるリスクがあります。

注意

入居者が1人でも残っていれば解体できません。全戸の退去が前提になるため、立ち退きの交渉と期間が必要です。また解体すると住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が上がることがあります。解体費の目安は空き家の解体費用が払えない場合の売却方法で確認できます。

横にスクロールできます

項目 仲介で売る 買取で売る 更地にして売る
価格の水準 相場に近い 相場より低い 土地の相場 −解体費
期間の目安 3〜6か月以上 数週間〜1か月程度 退去交渉+解体+売却
入居者 いたまま売れる いたまま売れる 全戸の退去が必要
売主の先出し費用 原則なし 原則なし 解体費を先に負担

※期間は目安で、立地・価格・買主の融資状況により変わります。

相続したアパートを売るときの期限|相続登記と3年10か月

結論

相続登記は取得を知った日から3年以内が申請義務です。相続税を納めた場合は、相続開始から約3年10か月以内に売ると取得費加算の特例で税負担を軽くできます。

親が建てたアパートを引き継いだ場合、売却の前に登記と期限の確認が必要です。順番を間違えると、契約を結んだのに決済できない事態になります。

相続登記は「知った日から3年以内」が義務

法務省は、相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないとし、正当な理由なく違反した場合は10万円以下の過料が科されることがあるとしています(法務省:相続登記の申請義務化)。

この義務は2024年4月1日の施行より前の相続にもさかのぼって適用され、その場合は2027年3月31日までに申請する必要があります。過料とは別に、登記名義が亡くなった方のままでは売却できません。

詳細と必要書類は相続登記の義務化とはにまとめています。

取得費加算の特例は約3年10か月が期限

相続税を納めた財産を売る場合、納めた相続税のうち売った財産に対応する部分を取得費に加算できる特例があります。国税庁は適用期間を相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までとしています(国税庁 No.3267)。申告期限は死亡から10か月なので、実質的に相続開始から約3年10か月が期限です。

  1. 相続開始(死亡の日)ここから期限を数えはじめる
  2. 10か月後相続税の申告・納付の期限
  3. 3年以内相続登記の申請義務の期限。登記しないと売却できない
  4. 約3年10か月取得費加算の特例を使える最終期限
図:相続したアパートを売るときに意識する4つの期限
注意

この特例は譲渡益が出ている場合にしか意味がなく、加算額は特例を使わずに計算した譲渡益が限度です。相続税を納めていない(基礎控除内で申告不要だった)場合は使えません。計算方法は相続税の取得費加算の特例とはで確認してください。

相続したアパートの取得費は、亡くなった方が買い入れたときの購入代金などを基に計算し、取得の時期もそのまま引き継ぎます(国税庁 No.3270)。親の売買契約書と確定申告書を探すことが、税額を抑える鍵です。

共有名義なら全員の同意が必要

法定相続分のまま共有登記している場合、アパート全体を売るには共有者全員の同意が必要です。1人でも反対すれば売却は進みません。

  • 遺産分割協議を終え、誰の名義にするかを決めてから売る
  • 売って現金で分ける(換価分割)なら、売却の窓口となる代表者を決めておく
  • 共有者が遠方・海外にいる、認知症であるなど、手続きに時間がかかる事情を先に洗い出す

同意が得られないときの選択肢は相続で共有名義になった不動産の売却方法にまとめています。

売却後の確定申告|期間・必要書類・不動産所得の処理

結論

譲渡所得の申告は売った年の翌年2月16日から3月15日までです。売却した年は不動産所得と譲渡所得の両方を申告することになります。

申告は売った翌年の2月16日〜3月15日

国税庁は、譲渡所得の申告を譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までの間に行うとしています(国税庁 No.3102)。還付になる申告は2月15日以前でも提出できます。

住民税は確定申告の内容にもとづいて翌年度に課税されるため、納税のタイミングは売却から1年以上あとになります。手残りを計算するときは、税金分を使ってしまわないよう別に確保しておいてください。

売却した年は、引渡しまでの家賃収入にかかる不動産所得と、売却による譲渡所得の両方を申告します。その年の減価償却費は、引渡しまでの月数で按分して不動産所得の経費にします。

用意する書類と捨てない資料

必要な資料は売却前から手元にあるものがほとんどです。引渡し後も捨てないことが大切です。

  • 売却時の売買契約書と、仲介手数料などの領収書
  • 購入時の売買契約書(土地と建物の内訳が分かるもの)と当時の領収書
  • 過去の確定申告書の控えと青色申告決算書(減価償却費の累計を出すため)
  • 登記事項証明書、固定資産税の納税通知書、相続税の申告書
  • 測量・解体・立ち退きなど、売るために支出した費用の領収書

なお賃貸をやめたあとは、税務署への届出が必要になる場合があります。青色申告をしていた方や課税事業者だった方は、提出書類と期限を税理士または所轄の税務署に確認してください。

よくある質問

アパートを売るとき、入居者の同意は必要ですか?

売却そのものに入居者の同意は必要ありません。ただし引渡し後は賃貸人が買主に変わるため、家賃の振込先と連絡先を通知します。

通知が遅れると家賃が旧口座に入り続け、精算が複雑になります。売買契約の段階で、通知の文面と時期を買主・管理会社と決めておくと安全です。

売却損が出たら、家賃収入や給与の税金は安くなりますか?

安くなりません。土地建物の譲渡損失は、原則として給与所得や不動産所得と損益通算できません。同じ年に別の土地建物を売って利益が出ている場合に、その利益とだけ相殺できます。

買った値段より安く売っても、減価償却で取得費が目減りしていれば譲渡益が出て課税されることがあります。

築30年の木造アパートでも売れますか?

売れます。ただし木造の法定耐用年数22年を超えると買主が組める融資の期間が短くなり、買える人が限られるため価格は下がりやすくなります。

現金で買う投資家や、土地としての価値で判断する買取業者が主な候補です。仲介で反応がないときは、買取価格を並べて比べると判断しやすくなります。

相続したアパートは、いつまでに売ればいいですか?

売却自体に期限はありませんが、相続税を納めた場合は相続開始から約3年10か月以内に売ると、取得費加算の特例で納めた相続税の一部を取得費に加算できます。

また相続登記は取得を知った日から3年以内が申請義務で、登記を済ませないと売却の手続きそのものを進められません。

この記事のまとめ

  • 手残りは「売却価格 − ローン残債 − 諸費用 − 譲渡所得税」。預かっている敷金も買主へ引き渡す
  • 取得費は賃貸期間の減価償却費を引いた後の金額。買値より安く売っても数百万円の税金が出ることがある
  • 税率は売った年の1月1日時点で5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%
  • 入居者がいても売れる。同意は不要で、賃貸人の立場と敷金の返還義務は買主が引き継ぐ
  • 価格は「純収益 ÷ 還元利回り」。空室や値下げは減収額の10倍前後の価格下落になる
  • 相続したアパートは相続登記3年以内、取得費加算の特例は約3年10か月が期限

アパートの売却は、価格の交渉よりも先に「残債・税金を引いていくら残るか」を確かめることから始まります。まずは入居者がいるまま今いくらの評価になるかを知り、持ち続ける場合の修繕費と比べてみてください。

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