実家などの不動産を相続して売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」をご存知でしょうか。うまく使えば譲渡所得税・住民税の負担を軽減できる一方、適用には期限があり、知らずに過ぎてしまうと使えなくなってしまいます。本記事では、特例の仕組みや適用要件、期限の考え方、加算できる金額の計算方法までわかりやすく解説します。
取得費加算の特例とは
取得費加算の特例とは、相続や遺贈により取得した土地・建物などの財産を一定期間内に譲渡した場合に、その財産に対応する相続税額の一部を譲渡所得の計算上の取得費に加算できる制度です。取得費が増えるほど譲渡所得(売却益)は圧縮されるため、結果として譲渡所得にかかる税金を軽減できます。相続した不動産は購入時の契約書などが残っておらず取得費が分からないケースも多く、そうした場合でも活用できる数少ない節税策のひとつです。
特例を受けるための3つの要件
国税庁のタックスアンサー(No.3267)によると、この特例を受けるための要件は次の3つです。
- 相続または遺贈により財産を取得したこと
- その財産を取得した人に相続税が課されていること(納めるべき相続税額があること)
- その財産を、相続開始があった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(実務上は相続開始から3年10ヶ月以内が目安)に譲渡していること
期限の考え方
相続税の申告期限は、原則として相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。この特例の譲渡期限は、そこからさらに3年を経過する日までとされているため、合計するとおおむね「相続開始から3年10ヶ月以内」が期限の目安になります。たとえば相続開始日を2023年5月10日とすると、期限の目安は3年10ヶ月後にあたる2027年3月10日頃です。実際の期限は各家庭の相続税申告期限を基準に決まるため、正確な日付は税理士や税務署に確認することをおすすめします。
取得費加算額の計算方法
取得費に加算できる相続税額は、次の計算式で求めます。
- 取得費加算額 = その者の相続税額 ×(譲渡した財産の相続税評価額 ÷ その者の相続税の課税価格〈債務控除前〉)
この計算式で求めた金額が、実際の譲渡益(売却による利益)を上回る場合は、譲渡益相当額が上限となります。特例の適用を受けるには、確定申告の際に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」などの書類を添付する必要があります。
期限が迫っている場合は「買取」も検討を
不動産会社の仲介による売却は、買主を見つけるまでに数ヶ月から半年以上かかることも珍しくありません。相続開始から3年10ヶ月という期限が近づいている場合、仲介での売却活動中に期限を過ぎてしまうリスクがあります。不動産会社による買取であれば、条件が合えば仲介よりも短期間で現金化できるため、特例の適用期限に間に合わせたい場合の選択肢のひとつとして検討する価値があります。
取得費加算の特例は、要件と期限が明確に定められた制度です。相続した不動産の売却を検討している場合は、まず複数の不動産会社に査定を依頼し、ご自身のケースにとって仲介と買取のどちらが適しているかを比較検討することをおすすめします。