実家じまいとは|売る・貸す・手放す・持ち続けるの4択を費用・制度で比較

実家じまいの4つの選択肢(売る・貸す・手放す・持ち続ける)を費用と制度で比較して決める方法の解説イメージ

親が亡くなった、あるいは施設に入って実家が空き家になった。片付けに手がつかないまま、固定資産税の納付書だけが毎年届く。「売るのか、貸すのか、手放すのか、持ち続けるのか」を決めかねている方は少なくありません。

実家じまいの選択肢は「売る・貸す・手放す・持ち続ける」の4つです。この記事では4つを費用・期間・手間で比べ、使える制度と期限を整理したうえで、立地・築年・残債・兄弟の意向で答えが決まるフローにまとめます。

この記事を読むとわかること

  • 売る・貸す・手放す・持ち続けるの違いと向き不向き
  • 片付け・解体・登記・仲介手数料・税金まで、実家じまいの費用の全体像
  • 空き家の3,000万円特別控除・解体補助金・相続登記の義務化など使える制度と期限
  • 自分の実家ならどれを選ぶかを判断するフロー

この記事の結論

  1. 実家じまいの選択肢は売る・貸す・手放す・持ち続けるの4つ。まず複数社の査定で「いくらで売れる家か」を知ると、残り3つを比べる物差しになります。
  2. 仲介で売れなければ現況のまま・片付け不要・短期間の買取へ。価格は仲介相場の7〜8割程度が目安です。
  3. 相続土地国庫帰属制度は建物があると申請できず、相続放棄は相続を知ってから3か月以内。放棄後も現に占有していれば保存義務が残ります。
  4. 持ち続けると固定資産税と管理費が毎年かかり、「管理不全空家」の勧告で住宅用地特例(土地の税額を最大1/6に軽減)が外れます。
  5. 昭和56年5月31日以前の建築なら空き家の3,000万円特別控除が使えますが、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで(かつ2027年12月31日まで)の売却が条件です。

実家じまいとは|4つの選択肢を比較

結論

実家じまいとは、親が住まなくなった実家の家財を整理し、家と土地の行き先を決めることです。行き先は「売る・貸す・手放す・持ち続ける」の4つに必ず分かれるので、先に全体像を1枚で比べてから細部に入ります。

実家じまいの意味と「決めないこと」のコスト

実家じまいに決まった定義はありませんが、一般には「空き家になった実家を片付け、売却や処分まで済ませること」です。相続した後に行う場合と、親が存命のうちに親と一緒に進める場合があります。

決めずに放置する間も、固定資産税・火災保険・庭木や郵便物の管理は毎年かかります。さらに放置された空き家は「管理不全空家」として指導・勧告の対象になり、勧告を受けると固定資産税の軽減(住宅用地特例)が外れます。「決めない」にもコストがあり、こうした家は「負動産」とも呼ばれます。

売る・貸す・手放す・持ち続けるの比較表

4つの選択肢を、お金の出入り・期間・手間・向いている実家の順に並べたのが次の表です。

横にスクロールできます

選択肢 お金の出入り 期間の目安 手間 向いている実家
①売る(仲介) 売却代金が入る。仲介手数料・片付け費用が出る 数か月〜1年程度 片付け・内見対応 買い手がつく立地・状態の家
①売る(買取) 売却代金が入る(仲介相場の7〜8割程度)。仲介手数料なし 数週間〜1か月程度 現況のまま・片付け不要 古い・荷物が多い・早く終えたい家
②貸す・活用する 家賃が入る。修繕費が出る 借り手が付くまで不定 管理・修繕義務が続く 借り手需要がある立地の家
③手放す(国庫帰属・引き取り) お金は入らず、解体費・負担金を払う 解体+審査で半年以上 更地化と申請手続き 売れず貸せない田舎の土地
④持ち続ける 毎年、税金・保険・管理費が出る 期限なし(先送り) 定期的な換気・見回り 将来住む・使う予定がある家

※期間・費用は目安です。実家の立地・状態・相続人の人数で大きく変わります。

最初にやるのは「市場価値を知る」こと

4つのうちどれが得かは、実家が「いくらで売れる家か」で決まります。1,500万円で売れる家なら貸す・持ち続ける案と比べる意味がありますが、買い手がつかない家は貸す案も成り立ちにくく、早めに手放す方向に傾きます。

だからこそ、片付けや解体を始める前に、複数の不動産会社の査定で市場価値と「買取ならいくらか」を同時に把握するのが正しい順番です。査定は売ると決めていなくても依頼できます。

POINT

実家じまいは「価格を知ることから」始める

  • 市場価値が分かると、貸す・手放す・持ち続けるのコストと比べられる
  • 買取なら現況のまま売れるので、先に片付け費用をかけると損をすることがある
  • 相続放棄を検討している間は家財を処分しない(相続を承認したとみなされるおそれ)

①売る|仲介・買取・更地の3通り

結論

売り方は仲介・買取・更地にして売るの3通りです。高く売るなら仲介、早く手間なく終えるなら買取、更地にするのは買い手側の要望や解体補助があるときに限るのが基本です。

売ると決めた後の具体的な流れ(存命中と相続後の違い、相続登記、兄弟の共有、必要書類)は実家売却の流れの記事で解説しています。ここでは「どの売り方を選ぶか」に絞って比べます。

仲介で売る|高く売れるが期間と片付けが必要

仲介は、不動産会社に買い手を探してもらい一般の個人に売る方法です。市場価格に近い金額で売れる一方、買い手が見つかるまで数か月〜1年程度かかることがあり、内見に備えた片付けも必要です。

成約すると仲介手数料がかかり、売買価格400万円超の上限は売買価格×3%+6万円+消費税です。2024年7月からは800万円以下の「低廉な空家等」について、売主から受け取れる上限が30万円+消費税まで引き上げられ、安い実家でも仲介会社が引き受けやすくなりました。

買取で売る|現況のまま・片付け不要・短期間

買取は、不動産会社が直接買主になる方法です。仲介手数料がかからず、家財が残ったままの現況で引き渡せるケースが多く、契約から決済まで数週間〜1か月程度で終わります。遠方で実家に通えない人に向いています。

一方、会社は再販のための修繕費と利益を差し引くため、買取価格は仲介で売れる相場の7〜8割程度が目安です。極端に低い金額をつかまされないよう、仲介の査定額も同時に取って比べます。

具体例

仲介相場1,500万円の実家を、仲介で売る場合と買取で売る場合

  • 仲介:1,500万円で成約。仲介手数料の上限は 1,500万円×3%+6万円=51万円、消費税込みで56.1万円
  • → 手元に約1,444万円。ただし片付け費用(15万〜50万円程度)と売れるまでの維持費が別途かかる
  • 買取:相場の7〜8割なら1,050万〜1,200万円。仲介手数料0円、片付け不要、1か月程度で決済

金額差は200万〜400万円程度ですが、売れるまでの期間が長引けば片付け費用と維持費がその差を縮めます。

更地にして売る|解体費と固定資産税の注意点

古い実家を解体して土地だけで売る方法もあります。買い手が土地を探す層に広がる反面、解体費は売主の先払いです。木造30坪なら100万〜150万円程度が目安で、立地やアスベストの有無で上がります。

もう1つの注意点は固定資産税です。建物を取り壊すと住宅用地特例の対象から外れ、翌年1月1日時点で更地なら土地の固定資産税が上がるため、解体は売却の見通しが立ってからが安全です。買主が取り壊す「古家付き土地」なら解体費を負担せずに済みます。

注意

空き家の3,000万円特別控除は、解体して敷地だけを売る場合も使えますが、取り壊してから売るまで土地を貸したり建物の敷地に使ったりしないことが条件です。解体後に駐車場として貸すと使えません。

②貸す・活用する|戸建て賃貸・空き家バンク・用途変更

結論

貸す案は、借り手需要のある立地で、修繕費をかけても家賃で回収できる場合に限って成り立ちます。一度貸すと空き家の3,000万円特別控除が使えなくなるので、売る可能性が残っているなら順番に注意が必要です。

戸建て賃貸|修繕義務と空き家特例の注意

実家をそのまま貸せれば家賃収入が入り、資産も残ります。ただし築30年を超える家は貸す前に水回りや屋根の修繕が必要で、初期費用が数百万円になることも珍しくありません。入居後の修繕も原則として貸主の負担です。

税金面にも影響があります。空き家の3,000万円特別控除は「相続から譲渡まで貸付けの用などに供していないこと」が要件なので、一度でも貸すと、その後に売っても特例は使えません。「売れるまでの間だけ貸す」は税金面で損になり得ます。

貸すメリット

  • 家賃収入で固定資産税や保険料をまかなえる
  • 実家を手放さず、将来の選択肢を残せる

貸すデメリット

  • 貸す前の修繕費が先に出て、入居後も修繕義務が続く
  • 空き家の3,000万円特別控除が使えなくなる

空き家バンク|買い手・借り手を探す

空き家バンクは、自治体が空き家の情報を登録して移住希望者などに紹介する仕組みです。国土交通省の支援で構築された「全国版空き家・空き地バンク」では、LIFULLとアットホームの2社が自治体を横断して検索できるサイトを2018年4月から本格運営しています。

賃貸でも登録でき、仲介会社が採算を取りにくい安い物件でも買い手・借り手に出会えるのが利点です。一方で登録から成約まで時間がかかること、内見や交渉を所有者が担う自治体が多いことは覚悟が必要です。手順は田舎の家が売れないときの手放し方の記事で扱っています。

駐車場・店舗などへの用途変更

建物を解体して月極駐車場にする、店舗・事務所・シェアハウスなどに転用するといった活用もあります。ただし駐車場にすると住宅用地特例が外れて土地の固定資産税が上がり、店舗や宿泊施設への転用は法令上の手続きや改修工事が必要になるのが通常です。

用途変更は土地の需要が確実にある場所でなければ改修費を回収できません。活用案も、まず売った場合の価格と比べて投資に見合うかを判断します。

③手放す|国庫帰属・引き取りサービス・隣地・相続放棄

結論

売れない実家を「お金を払ってでも手放す」手段が国庫帰属・引き取りサービス・隣地への譲渡で、相続そのものを辞退するのが相続放棄です。どれも条件と期限があり、順番を間違えると使えなくなるので、先に全体を押さえます。

相続土地国庫帰属制度は「建物を壊してから」

相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらう制度で、2023年4月27日に始まりました。対象は土地だけで、法務省の案内のとおり「建物がある土地」は申請できません。使うには先に家を解体して更地にする必要があります。

費用は、申請時に土地1筆あたり14,000円の審査手数料、承認後に原則20万円の負担金(10年分の管理費相当。市街地の宅地などは面積に応じて増える)です。境界が不明な土地なども引き取られません。

具体例

木造30坪の実家を解体して、土地1筆を国庫帰属させる場合の持ち出し

  • 解体費:100万〜150万円程度
  • 審査手数料:14,000円×1筆=1.4万円
  • 負担金:原則20万円
  • → 合計で約121万〜171万円を払って土地を手放す計算

お金を払って手放す制度なので、その前に買取や隣地への声かけで引き取り手を探す順番が合理的です。

民間の空き家引き取りサービスと隣地所有者への譲渡

民間には、所有者が引き取り料を払って売れない空き家を引き取ってもらうサービスもあります。建物付きでも相談できる反面、金額は物件ごとの見積もりで、契約内容を確認せずに任せるとトラブルの元になります。所有権移転登記まで責任を持つかを必ず確かめてください。

もう1つ有効なのが、隣の土地の所有者に声をかける方法です。隣地と一体にすれば広く使えるため、第三者には売れない土地でも隣地の所有者だけは買い手になり得ることがあります。無償で譲ると受け取る側に贈与税が生じることがあるので、金額は税理士に相談します。

相続放棄は3か月以内、放棄後も保存義務が残る

実家を含む遺産を一切受け取らないのが相続放棄です。裁判所の案内のとおり、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ申述します。親が存命のうちに「先に放棄しておく」ことはできません。

放棄しても実家から完全に縁が切れるとは限りません。2023年4月施行の改正民法940条では、放棄の時に実家を現に占有している人は、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで保存する義務を負います。実家に住んでいた場合などは注意が必要です。詳しくは相続放棄した空き家の管理義務の記事をご覧ください。

  1. 相続開始親が亡くなった日。遺産は相続人全員の共有状態に
  2. 3か月以内相続放棄の申述期限(家庭裁判所)
  3. 10か月以内相続税の申告・納税期限
  4. 3年以内/3年目の年末相続登記の申請期限。空き家3,000万円控除は3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が条件
図:実家じまいに関係する相続後の期限(相続放棄は「相続の開始を知った時」から起算)
この項目のまとめ
  • 国庫帰属は建物があると申請不可。解体費+手数料1.4万円+負担金20万円が持ち出し
  • 引き取りサービス・隣地への譲渡は契約内容と贈与税を確認してから
  • 相続放棄は3か月以内。放棄後も現に占有していれば保存義務が残る

④持ち続ける|固定資産税・管理費と特例が外れるリスク

結論

持ち続ける選択は「将来住む・使う」具体的な予定がある場合にだけ合理的です。毎年の税金と管理費に加えて、管理不全空家の勧告を受けると土地の固定資産税が最大6倍程度に跳ね上がるリスクを抱えるからです。

空き家でも毎年かかる固定資産税と維持費

固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課され、標準税率は1.4%です。住宅が建っている土地は住宅用地特例で、200㎡以下の部分は課税標準が1/6、200㎡を超える部分は1/3に軽減されます(総務省「固定資産税」)。

税金以外にも火災保険料、光熱費の基本料金、庭木の手入れといった維持費がかかります。内訳は空き家の管理費用の記事で計算していますが、固定資産税を含めて年間10万〜20万円程度が「何も生まない家」に出ていくのが持ち続ける案の実態です。

管理不全空家の勧告で住宅用地特例が外れる

以前から、倒壊のおそれがある空き家は「特定空家」に指定され、勧告で住宅用地特例が外れる仕組みがありました。2023年12月施行の改正空家法では、その手前の「管理不全空家」も指導・勧告の対象になり、国土交通省の空き家対策特設サイトのとおり、勧告を受けると特例が受けられなくなりました。

窓が割れている、雑草が隣地まで伸びているといった状態で指導を受け、改善しないまま勧告されると、土地の固定資産税が単純計算で最大6倍になります。指定の条件や回避策は特定空き家・管理不全空き家の固定資産税の記事にまとめています。

具体例

土地の固定資産税評価額1,200万円・面積180㎡の実家が、勧告で特例を外れた場合

  • 特例あり:1,200万円×1/6=課税標準200万円 → 200万円×1.4%=年2.8万円
  • 特例なし:1,200万円×1.4%=年16.8万円(単純計算。負担調整措置で段階的に上がる場合あり)
  • → 差額は年14万円。10年持ち続ければ140万円の負担増

管理せず持ち続ける案は、この増税リスクを常に抱えます。

空き家管理サービスに頼む場合の費用

遠方で管理に通えない場合は、空き家管理の代行サービスを使う方法があります。外周の見回りと郵便物の回収だけなら月4,000円前後、鍵を預けて室内の換気・通水まで任せると月1万円程度が目安です。

ただし管理サービスは「傷みを遅らせる」手段であって出口ではありません。月1万円を3年払えば36万円で、その間も建物の価値は下がり続けます。「いつまで持つか」を家族で決めたうえで使うのが前提です。

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実家じまいの費用の全体像|片付け・解体・登記・税金

結論

実家じまいの費用は「片付け・解体・登記・仲介手数料・税金」の5つに分けると全体像がつかめます。売り方によってかかる項目が変わり、買取なら片付けと仲介手数料が不要になります。

横にスクロールできます

費用項目 目安 仲介で売る 買取で売る 国庫帰属
片付け・残置物処分 一戸建てで15万〜50万円程度 必要 不要(現況のまま) 必要
解体 木造30坪で100万〜150万円程度 古家付きなら不要 不要 必須
相続登記(登録免許税) 固定資産税評価額×0.4% 必要 必要 必要
仲介手数料 3%+6万円+消費税が上限(400万円超) かかる かからない 手数料1.4万円/筆+負担金20万円
譲渡所得税 売却益×20.315%(長期) 利益が出れば 利益が出れば なし

※片付け・解体は民間業者の見積もりで決まる目安額。司法書士・税理士への報酬は別途。

片付け・残置物処分と解体の費用

家財の片付け(残置物処分)を業者に頼む費用は、量と間取りで変わりますが一戸建てで15万〜50万円程度が目安です。「残す物」だけ先に決めておくと見積もりが下がります。

解体は木造30坪で100万〜150万円程度、鉄骨や鉄筋コンクリート造はさらに高くなります。解体費が用意できないとき、古家付きのまま買い取ってもらう方法は空き家の解体費用が払えない場合の売却方法の記事にまとめています。

相続登記の登録免許税と仲介手数料

相続した実家は、どの選択肢でも先に相続人の名義へ相続登記が必要です。登録免許税は固定資産税評価額の0.4%(1,000分の4)で、評価額100万円以下の土地は2027年3月31日までの登記について免税です。

仲介手数料は成約時にだけ発生し、上限は売買価格の3%+6万円+消費税(400万円超)です。買取では不動産会社が直接買うため、仲介手数料そのものが発生しません。

売ったときの税金(譲渡所得税)

実家を売って利益(譲渡所得)が出ると所得税・住民税がかかります。相続した実家は親の所有期間を引き継ぐため多くは長期譲渡所得となり、税率は所得税15%・住民税5%に復興特別所得税を加えた20.315%です。

親が買ったときの契約書がなく取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費とみなして計算するため、税額が大きくなりがちです。そこで効くのが次の章の空き家の3,000万円特別控除です。

具体例

昭和50年築の実家を2,000万円で売り、取得費が分からない場合の税金

  • 概算取得費:2,000万円×5%=100万円、譲渡費用(仲介手数料など):約73万円
  • 譲渡所得:2,000万円−100万円−73万円=1,827万円
  • 特例なし:1,827万円×20.315%=約371万円の税金
  • 空き家の3,000万円特別控除を適用:1,827万円−3,000万円<0 → 税金は0円

特例の有無で約371万円の差が出ます。「貸さない」「3年目の年末まで」の要件は、進め方の順番で満たせなくなるので先に確認してください。

実家じまいで使える制度|3,000万円控除・解体補助・相続登記

結論

実家じまいで使える制度は、売る人向けの空き家の3,000万円特別控除、壊す人向けの自治体の解体補助金、全員に関わる相続登記の義務化の3つです。いずれも期限付きなので、方針決めと同時にカレンダーに入れます。

空き家の3,000万円特別控除

相続した実家を売ったときに、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける制度です(国税庁 No.3306)。相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円までになります。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物を除く)で、亡くなった親が1人で住んでいたこと
  • 相続の時から売る時まで、貸したり誰かが住んだりしていないこと
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 耐震基準に適合させて売るか、取り壊して敷地を売ること(買主が一定期間内に取り壊す場合も可)

細かい判定や、親が老人ホームに入っていた場合の扱いは相続空き家の3,000万円特別控除の記事で解説しています。適用には確定申告が必要です。

自治体の解体補助金

多くの市区町村が老朽化した空き家の解体費用の一部を補助しています。財源の1つである国の「空き家対策総合支援事業」では、所有者が特定空家等の除却を行う場合の補助率を国2/5・自治体2/5・所有者1/5と定めており(2026年度)、自治体はこれを基に独自の上限額や条件を設けています。

補助の有無・上限額・対象は自治体ごとに違い、着工前の申請が条件になるのが一般的です。解体を決める前に市区町村の空き家担当窓口に確認してください。

相続登記の義務化と登録免許税の免税

2024年4月1日から相続登記が義務化され、法務省の案内のとおり、相続で取得したことを知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前に相続した未登記の実家も、2027年3月31日までに登記が必要です。

遺産分割がまとまらない場合は「相続人申告登記」で義務を果たせますが、売却には正式な相続登記が必要です。評価額100万円以下の土地の登録免許税は2027年3月31日まで免税なので、田舎の実家は登記費用を抑えられることがあります。詳しくは相続登記の義務化の記事をご覧ください。

選び方のフロー|立地・築年・残債・兄弟の意向で分岐

結論

「売れる家か」「古い家か」「ローンや兄弟の問題は片付いているか」の3つで分岐すれば、ほとんどの実家は出口が決まります。まず複数社の査定で市場価値を知り、売れなければ空き家バンク・国庫帰属を検討する順番です。

  1. 査定で市場価値を知る仲介と買取の査定額を複数社から取る
  2. 売れる家なら仲介買い手がつく立地・状態。片付けと数か月の期間を見込む
  3. 古い・荷物が多い家は買取現況のまま・片付け不要・1か月程度で決済
  4. 売れなければ空き家バンク・隣地自治体の制度と隣地所有者に声をかける
  5. それでも残れば国庫帰属・引き取り解体費+手数料+負担金を払って手放す
図:実家じまいの出口を決める順番(貸す・持ち続けるは借り手需要や将来使う予定が明確なときの分岐)

立地と築年で売れる家かどうかを分ける

最初の分岐は立地です。駅や生活施設に近く、周辺で中古住宅の取引がある地域なら、築年が古くても仲介で買い手がつく可能性があります。過疎地域や接道に問題がある土地は、空き家バンクや買取が現実的です。

次の分岐は築年です。昭和56年5月31日以前の建築なら空き家の3,000万円特別控除の対象になり得るので、貸す前・3年目の年末が来る前に売る方が税金面で有利です。築浅で状態が良い家は貸す案も土俵に乗ります。

残債と兄弟の意向が決まらないと進まない

親の住宅ローンが残っている場合は、売却代金で完済できるかを先に確認します。相続人が複数いるなら誰が相続して誰が売るのかを遺産分割で決めないと、売却も国庫帰属の申請も進みません(共有なら全員の同意が必要)。

親が存命で認知症が進んでいる場合は、本人が売買契約を結べないため、成年後見人の選任と家庭裁判所の許可が必要です。段取りは成年後見人が不動産売却する手順の記事にまとめています。

  • 親のローン残債の有無と、売却代金で完済できるかを確認した
  • 相続人全員で「誰が相続するか」「代金をどう分けるか」を共有した
  • 相続放棄を検討している人がいるなら、3か月以内に結論を出す段取りにした
  • 親が存命なら売却の意思を本人に確認した(認知症なら成年後見の要否も)

査定から出口までの進め方

手順は次の5ステップです。片付けと解体は査定の後に回すと、買取なら不要になる費用を先に払わずに済みます。

  1. 相続人と方針を共有し、相続登記を進める遺産分割で取得者を決め、3年以内に相続登記。売却は登記後に進める
  2. 複数社に査定を依頼する仲介の査定額と買取の査定額を並べて、売れる家かどうかを判断する
  3. 売り方を決める売れる家は仲介、古い・荷物が多い家は買取。更地化は買い手の要望か補助金があるときだけ
  4. 片付け・必要なら解体を行う買取なら現況のまま引き渡せるので省略できる。解体補助金の申請は着工前に
  5. 売却・確定申告空き家の3,000万円特別控除を使うなら、売った翌年に確定申告する
結論

実家じまいは「片付けから」ではなく「価格を知ることから」始めると、4つの選択肢を同じ物差しで比べられます。仲介で売れなければ現況のままの買取、それでも引き取り手がなければ空き家バンクや国庫帰属という順番が、お金と時間を最も失わない進め方です。

よくある質問

実家じまいはいつまでに決めればいいですか?

法律上の期限は制度ごとに違います。相続放棄は相続を知ってから3か月、相続税の申告は10か月、相続登記は3年以内です。売る場合は、空き家の3,000万円特別控除が「相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日」までの売却に限られるため、この年末を目安に方針を決めると現実的です。

実家が売れなかったら国に引き取ってもらえますか?

相続土地国庫帰属制度は土地だけが対象で、建物が建っている土地は申請できません。解体して更地にしたうえで、土地1筆につき14,000円の審査手数料と、承認後に原則20万円の負担金を納めます。

その前に、空き家バンクや隣地の所有者への声かけ、現況のままの買取で引き取り手が見つかることも多いので、順番に試す価値があります。

実家じまいの費用は全部でいくらかかりますか?

家財の片付けは一戸建てで15万〜50万円程度、木造30坪の解体は100万〜150万円程度が目安です。これに相続登記の登録免許税(評価額の0.4%)と、仲介で売る場合は仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税が上限)が加わります。

買取なら片付けと仲介手数料が不要になるため、手元の出費を抑えやすい方法です。

相続放棄をすれば実家の管理から解放されますか?

必ずしも解放されません。相続放棄は相続の開始を知ってから3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きで、親が存命のうちにはできません。

また、放棄の時点で実家を現に占有している人には、次の相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存する義務が民法940条で残ります。

この記事のまとめ

  • 実家じまいの選択肢は「売る・貸す・手放す・持ち続ける」の4つ。最初に複数社の査定で市場価値を知る
  • 売れる家は仲介、古くて荷物の多い家は現況のまま買取(仲介相場の7〜8割程度が目安)
  • 貸すと空き家の3,000万円特別控除が使えなくなる。借り手需要と修繕費を見てから決める
  • 国庫帰属は建物があると申請不可。相続放棄は3か月以内で、放棄後も保存義務が残ることがある
  • 持ち続けると年10万〜20万円程度の維持費に加え、管理不全空家の勧告で土地の固定資産税が最大6倍程度に
  • 3,000万円控除は昭和56年5月31日以前の建築・3年目の年末まで・2027年12月31日まで。相続登記は3年以内が義務

どの出口を選ぶにしても、判断の物差しは「今いくらで売れる家か」です。片付けや解体にお金をかける前に、まず現在の価格を知ることから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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