親から相続した田舎の家を売りに出したのに、何か月たっても問い合わせがない。地元の不動産会社に相談しても「この場所は難しい」と言われ、固定資産税と草刈りの手間だけが毎年続いている。そんな状況で、このページにたどり着いた方も多いと思います。
先に結論をいうと、田舎の家が売れないのは買い手の少なさと仲介の採算の問題であることが多く、打てる手は「売り方を変える」「制度で手放す」「買取に切り替える」の3方向です。建物が残ったままでは国の引き取り制度(相続土地国庫帰属制度)は使えないため、順番を間違えないことが大切です。
この記事を読むとわかること
- 田舎の家が売れない5つの理由と、自分の家がどれに当てはまるか
- 空き家バンクの仕組みと、800万円以下の物件の仲介手数料の特例
- 農地が付いている家を売るときの農地法の許可
- 相続土地国庫帰属制度の費用と、建物があると使えない理由
- 買取・隣地への売却・寄付など、売れないときの出口の比べ方
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 田舎の家が売れない主な原因は買い手の少なさ・建物の古さ・仲介の採算割れ・農地や山林の付属。原因ごとに打ち手が違う
- 空き家バンクは自治体の物件情報の窓口。国の「全国版空き家・空き地バンク」で自治体をまたいで検索される
- 2024年7月から、800万円以下の物件は仲介手数料の上限が30万円の1.1倍(33万円)まで認められ、安い家でも仲介会社が動きやすくなった
- 相続土地国庫帰属制度は建物がある土地は申請できない。審査手数料は1筆14,000円、負担金は市街化区域・用途地域の外にある宅地なら20万円
- 農地付きは農業委員会の許可が必要で、許可のない売買は効力を生じない。時間をかけられないなら現況のままの買取も比べる
田舎の家が売れない5つの理由
売れない原因は「価格が高すぎる」だけではありません。買い手の少なさ・建物の状態・仲介の採算・農地や山林の付属のどれが効いているかで、取るべき手段が変わります。
都市部の家は、相場どおりの価格で出せばいずれ買い手が見つかることがほとんどです。一方で田舎の家は、価格を下げても問い合わせが来ないことがあります。まずは自分の家がなぜ売れないのかを切り分けることが出発点です。
買い手の母数が少なく、比較される物件が多い
人口が減っている地域では、家を探している人そのものが少なくなります。そのうえ同じ地域で売りに出ている空き家が多ければ、少ない買い手を多くの物件で取り合う状態になります。
賃貸の需要も小さいため、投資目的で買う人も見つかりにくくなります。移住希望者や地元の方など、買い手になりうる層に情報を届けられるかどうかが分かれ目です。
建物の古さ・接道・ライフラインの問題
築年数が古く、長く空き家だった家は、雨漏りや設備の傷みで修繕費が読めません。買い手はその不安を価格に織り込むため、建物の評価がほぼゼロになることもあります。
都市計画区域内では、建物の敷地が道路に2m以上接していないと建て替えができない可能性があり、さらに買い手が限られます。仕組みは再建築不可物件の売却方法で解説しています。上下水道ではなく井戸や浄化槽の家も、確認事項が増える分だけ敬遠されやすくなります。
価格が安いほど仲介会社の採算が合わない
仲介手数料は物件価格に比例して上限が決まります。数百万円の家では手数料が十数万円にとどまる一方、遠方への案内や調査の手間は高い物件と変わりません。そのため、安い家ほど仲介会社が積極的に動きにくいという構造がありました。
この問題に対応するため、2024年7月に800万円以下の物件の手数料ルールが見直されています。詳しくは後半の「800万円以下の家は仲介手数料の特例で頼みやすくなった」で説明します。
農地・山林が一緒に付いている
田舎の家は、敷地の周りに田畑や山林が一緒に付いていることがよくあります。農地は農地法の許可がないと売買の効力が生じないため、買える人が限られるうえ、手続きにも時間がかかります。
| 売れない原因 | 主な打ち手 |
|---|---|
| 買い手が少ない | 空き家バンクへの登録、価格の見直し、隣地への打診 |
| 建物が古い・傷んでいる | 現況のままの買取、解体して土地として売る |
| 仲介会社が動かない | 800万円以下の手数料特例を前提に依頼先を探す |
| 農地・山林が付いている | 農地法の許可を前提に買い手を探す、家と分けて考える |
| どうしても買い手がいない | 解体後の相続土地国庫帰属制度、寄付 |
※実際には複数の原因が重なることが多いため、上から順に当てはまるものを確認してください。
空き家バンクで買い手を探す
空き家バンクは、自治体が地域の空き家情報を集めて発信する仕組みです。移住希望者など、普通の不動産サイトでは届かない層に情報を届けられるのが強みです。
田舎の家の買い手は、地元の方か、その地域に移り住みたい人であることが多いものです。後者は自治体の移住支援の情報とあわせて物件を探すため、空き家バンクに載っているかどうかで目に触れる機会が変わります。
空き家バンクと全国版空き家・空き地バンク
空き家バンクは各自治体が運営しており、登録の条件や運営方法は自治体ごとに異なります。これとは別に、国土交通省が構築・運営を支援した「全国版空き家・空き地バンク」があります。
全国版は、各自治体が提供する空き家情報を自治体をまたいで検索できるようにしたもので、国の公募で選ばれた株式会社LIFULLとアットホーム株式会社が2018年4月から本格運営しています。地元の自治体が参加していれば、登録した物件が全国の検索で見つかるようになります。
空き家を売りたい・貸したい所有者と、使いたい人をつなぐために、自治体が物件情報を集めて公開する制度です。名称や運営方法は自治体ごとに異なります。
登録から契約までの流れと注意点
一般的には、所有者が自治体に登録を申し込み、物件の確認を経て情報が公開されます。問い合わせが来た後の交渉や契約の進め方は自治体によって違うため、登録時に「契約は誰が仲介するのか」を必ず確認しておきましょう。
- 自治体の窓口に相談する家がある市町村に空き家バンクがあるか、登録の条件は何かを確認します。
- 登録を申し込み、物件情報を公開する登記の名義が自分になっているか、価格や引渡しの条件を決めておきます。
- 問い合わせ・内覧に対応する遠方に住んでいる場合は、鍵の管理や案内を誰が担うかを決めておきます。
- 条件を詰めて契約・引渡し不動産会社を通すか当事者同士で進めるかで、契約書の作成や調査の範囲が変わります。
相続した家の名義が亡くなった方のままだと、売買による名義変更ができません。登録の前に相続登記を済ませておきましょう(相続登記の期限は相続登記の義務化の解説を参照)。
空き家バンクのメリット・デメリット
空き家バンクは、費用をかけずに広く情報を出せる一方、登録すればすぐ売れるわけではありません。不動産会社への依頼と並行して使うのが現実的です。
メリット
- 移住希望者など、地域外の買い手に情報が届く
- 全国版に参加している自治体なら、全国から検索される
- 自治体によっては改修や移住の支援制度とあわせて紹介される
デメリット
- 買い手が見つかるまでの期間が読めない
- 契約や調査を誰が担うかが自治体ごとに異なる
- 自治体によっては空き家バンク自体がない
800万円以下の家は仲介手数料の特例で頼みやすくなった
2024年7月1日から、800万円以下の宅地・建物の売買では、仲介手数料の上限が30万円の1.1倍(税込33万円)まで認められています。安い家でも仲介会社が引き受けやすくするための見直しです。
「数百万円の家では仲介会社が動いてくれない」という問題は、手数料の上限が価格に比例して決まることが原因でした。この特例は、遠方の調査や案内にかかる費用を手数料に反映できるようにしたものです。
低廉な空家等の媒介報酬の特例とは
仲介手数料の上限は、国土交通大臣の告示で決まっています。原則は、物件価格のうち200万円以下の部分が5%、200万円超400万円以下の部分が4%、400万円超の部分が3%(いずれも税抜)です。
このうち、価格が800万円以下の宅地・建物を「低廉な空家等」とし、媒介に要する費用を勘案して、原則の上限を超えて30万円の1.1倍まで受け取れるようにしたのが国土交通省の報酬規定の見直しです。名前に「空家」とありますが、告示上は空き家に限らず800万円以下の宅地・建物が対象です。
| 売却価格 | 原則の上限(税込) | 特例の上限(税込) |
|---|---|---|
| 200万円 | 11万円 | 33万円 |
| 300万円 | 15万4,000円 | 33万円 |
| 500万円 | 23万1,000円 | 33万円 |
| 800万円 | 33万円 | 33万円 |
※原則の上限は告示の料率から計算。特例の上限は売主・買主それぞれの依頼者から受け取れる額の上限で、必ずこの額になるわけではありません。
300万円の家なら手数料はいくらになるか
特例が使われると売主の負担は増えますが、そもそも引き受けてもらえなければ売却は始まりません。手数料の差と、売れずに持ち続ける費用を並べて判断しましょう。
田舎の家を300万円で売る場合の仲介手数料
- 原則の上限:200万円×5%+100万円×4%=14万円(税込15万4,000円)
- 特例を適用した場合の上限:30万円×1.1=33万円
- → 差額は最大17万6,000円。手数料33万円なら、売主の手取りは300万円−33万円=267万円(ほかに印紙代などがかかります)
差額だけを見ると負担増ですが、固定資産税や管理費を何年も払い続けるより早く手放せるなら、結果的に手残りが多くなることもあります。
特例は事前の説明と合意が前提
国土交通省の資料では、特例の報酬を受け取るには、媒介契約を結ぶ際にあらかじめ上限の範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意する必要があるとされています。後から一方的に請求されるものではありません。
- 媒介契約の前に、特例を使うかどうかと金額の説明を受ける
- 33万円は上限であり、交渉の余地があるかを確認する
- 手数料に含まれる作業(現地調査・案内・書類作成)の範囲を聞いておく
- 800万円以下の宅地・建物は、仲介手数料の上限が税込33万円まで認められる
- 適用には媒介契約時の事前説明と合意が必要
- 手数料の差より「売れずに持ち続ける費用」と比べて判断する
農地付きの田舎の家は農地法の許可が必要
農地を売るには、農地のまま売るなら農業委員会の許可、宅地などに変えて売るなら都道府県知事等の許可が必要です。許可を受けないでした売買は効力を生じません。
「家の裏の畑も一緒に」と考えがちですが、農地は家や宅地とはルールが違います。登記簿の地目や現況が田・畑になっている土地が含まれていないか、最初に確認しておきましょう。
農地のまま売るなら農業委員会の許可(3条)
農地法第3条では、農地の所有権を移すときは当事者が農業委員会の許可を受けなければならないと定めています。同条6項により、許可を受けないでした行為はその効力を生じません。
許可は、買う人が取得後に農地のすべてを効率的に耕作すると認められない場合などには出ません。法人の場合は原則として農地所有適格法人でなければなりません。つまり、農地のまま買えるのは、実際に農業をする人に限られるということです。
宅地などに変えて売るなら転用の許可(5条)
買い手が農地を駐車場や住宅の敷地にするために買う場合は、農地法第5条により都道府県知事等の許可が必要です。市街化区域内の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出る方法も定められています。
一方で、農用地区域内の農地や、集団的に存在するなど良好な営農条件を備えた農地は、原則として転用の許可が出ません。家の周りの農地が転用できるかどうかは、所在地の農業委員会で確認するのが確実です。
家と農地を分けて考える
家と農地をまとめて売ろうとすると、買い手が「農業をする人」に絞られます。家と宅地だけを先に売り、農地は別の買い手や借り手を探すほうが進めやすいこともあります。
- 地目と現況を確認登記簿と現地で田・畑がないか
- 買い手の使い道を確認農地のまま使うか、転用するか
- 農業委員会に相談3条許可か5条許可かを確認
- 許可を得て所有権移転許可前の名義変更は効力を生じない
売買契約は「許可が出ること」を条件にする
- 農地を含む売買では、許可が得られなかった場合の扱いを契約書に定めておく
- 許可が出るまで代金の授受や引渡しのタイミングを調整する
その田舎の家、現況のままいくらで売れるか知っていますか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
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相続土地国庫帰属制度は「建物を壊してから」
相続した土地を国に引き取ってもらえる制度ですが、建物がある土地は申請そのものができません。家を解体したうえで、審査手数料と10年分の管理費相当の負担金を払う必要があります。
どうしても買い手が見つからない土地の受け皿として、2023年4月27日に相続土地国庫帰属制度が始まりました。相続や相続人への遺贈で土地を取得した人が対象で、制度開始前に相続した土地も申請できます。
建物がある土地は申請できない
法務省は、建物は一般に土地より管理コストが高く、老朽化すれば建替えや取壊しも必要になるため、建物がある土地は申請できないと説明しています。田舎の家をそのまま国に引き取ってもらうことはできません。
そのため、制度を使うなら先に建物を解体することになります。解体費用の目安や、費用が出せないときの考え方は空き家の解体費用が払えない場合の売却方法で解説しています。
審査手数料と負担金はいくらか
申請時には、土地1筆あたり14,000円の審査手数料がかかります。却下や不承認になっても返還されません。承認されたら、10年分の標準的な管理費用を考慮して算定した負担金を、通知の翌日から30日以内に納めます。
負担金は土地の種目と区域で決まり、市街化区域・用途地域の外にある宅地のように、面積に応じた算定の対象にならない土地は20万円です。森林や、市街化区域・農用地区域内などの農地は面積に応じて計算されます。
| 土地の種類 | 負担金 |
|---|---|
| 下記以外の土地(市街化区域・用途地域の外にある宅地など) | 20万円 |
| 市街化区域内(または用途地域内)の宅地 | 面積に応じて算定(50㎡以下なら地積×4,070円+20万8,000円) |
| 市街化区域・農用地区域内などの農地 | 面積に応じて算定(250㎡以下なら地積×1,210円+20万8,000円) |
| 森林 | 面積に応じて算定(750㎡超1,500㎡以下なら地積×24円+23万7,000円) |
※相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令第5条より抜粋。面積区分ごとに算定式が異なります。
市街化区域・用途地域の外にある宅地1筆と、隣の山林1,000㎡を国庫帰属させる場合
- 審査手数料:14,000円×2筆=28,000円
- 負担金(宅地):20万円
- 負担金(森林1,000㎡):1,000×24円+23万7,000円=26万1,000円
- → 合計48万9,000円(このほかに建物の解体費用がかかる)
宅地と森林のように種目が違う土地は、隣り合っていても1筆分にまとめて負担金を計算する特例は使えません。
ほかにも引き取ってもらえない土地がある
建物のほかにも、申請の段階で却下される土地と、審査の結果で不承認となる土地が法務省の要件ページで示されています。
- 抵当権などの担保権や、賃借権などが設定されている土地(却下)
- 道路・墓地・ため池など、他人の利用が予定されている土地(却下)
- 土壌汚染がある土地、境界が明らかでない・争いがある土地(却下)
- 勾配30度以上・高さ5m以上の崖があり、管理に過分な費用がかかる土地(不承認)
- 管理や処分を妨げる物が地上や地下にある土地(不承認)
解体費用をかけて更地にしても、境界の争いなどで却下・不承認になる可能性はあります。解体の前に、管轄の法務局の相談窓口で申請できそうかを確認しておくと安全です。
売れないときの出口|買取・隣地・寄付を比べる
仲介で買い手が見つからないときは、不動産会社の買取・隣地の所有者への売却・寄付の順に検討します。解体や国庫帰属の費用を払う前に、現況のままの買取価格を確認しておくのが近道です。
国庫帰属制度は、解体費用と負担金を自分で払って土地を手放す方法です。その前に、お金を払わずに、あるいはいくらかでも代金を受け取って手放せる道がないかを確認しましょう。
買取なら現況のまま・短期間で手放せる
買取は、不動産会社が自ら買い主になる方法です。仲介のように一般の買い手を待つ必要がないため、建物が古いまま・残置物があるままでも条件次第で引き取ってもらえることがあります。
価格は仲介の相場より低くなるのが一般的です。ただし、解体費や国庫帰属の負担金を払って手放す場合と比べれば、手元に残るお金が多くなることもあります。1社だけでなく複数社の価格を比べるのが基本です。
隣地の所有者に声をかける
田舎では、隣の土地の所有者が「庭や駐車場を広げたい」「畑を広げたい」と考えていることがあります。一般には売れにくい土地でも、隣地の所有者にとっては価値がある場合があります。
ただし、親族など特別な関係にある人への売却は、空き家3,000万円控除などの税の特例が使えないことがあります。売却先を決める前に、使いたい特例の要件を確認しておきましょう。
寄付・無償譲渡と税金の注意点
自治体への寄付は、受け入れるかどうか、どんな条件なら受け入れるかが自治体ごとに異なるため、まず所在地の役所に問い合わせることになります。個人や法人に無償で譲る場合は、誰に渡すかで税金のかかり方が変わる点に注意が必要です。
| 譲る相手 | 税金の主なポイント |
|---|---|
| 個人 | 受け取った人に贈与税。暦年課税の基礎控除は年110万円 |
| 法人 | 渡した側が時価で譲渡したものとみなされ、譲渡所得の計算対象になる(所得税法第59条) |
※国税庁「贈与税がかかる場合」、所得税法第59条をもとに作成。個別の判断は税理士にご確認ください。
更地にして売るか、古家付きのまま売るか
買い手がつかないとき、建物を壊して更地で売り出すかどうかで迷う人は少なくありません。一般的に、古家付きのままなら建物を使いたい人と土地だけ欲しい人の両方に声をかけられ、更地にすると建物の傷みを気にする人にも検討してもらいやすくなります。
ただし解体費は売主が先に払ううえ、固定資産税の負担も変わります。住宅用地特例は住宅が建っている土地に使われる軽減で、税額は毎年1月1日(賦課期日)の状況で決まるため、年内に解体して売れ残ると、翌年度から土地の固定資産税が上がりやすい点に注意が必要です(総務省「固定資産税」)。
- 解体の見積もり額と、その分を売却価格で取り戻せるか
- 解体は買主が決まってから(引渡し前に)行う形にできないか
- 自治体に空き家の解体費の補助制度があるか
- 現況のままの買取価格と、解体後の手取りの比較
- 仲介で売る空き家バンク・800万円以下の特例も活用
- 買取・隣地に売る現況のまま代金を受け取って手放す
- 寄付・無償譲渡受け手と税金を確認
- 解体して国庫帰属解体費+手数料+負担金を払う
田舎の家は「売れない」と決めつけて解体や国庫帰属に進む前に、現況のままの買取価格を確認してください。費用を払って手放すか、代金を受け取って手放せるかで、手元のお金は大きく変わります。
放置のコストと、売るときに使える税の特例
売れないからと放置すると、固定資産税の軽減が外れたり、相続登記の義務違反になったりします。売れたときには空き家3,000万円控除や低未利用土地の100万円控除で税金を減らせる場合があります。
田舎の家は売却価格が低くても、持ち続ける限り固定資産税や管理の手間がかかります。年間の維持費の内訳は空き家の管理費用の解説にまとめています。
管理不全空家に指定されると固定資産税が上がる
2023年の空家法改正で、適切に管理されていない空き家も「管理不全空家」として指導の対象になりました。国土交通省によると、指導に従わず勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなります。
住宅用地特例は、200㎡以下の部分の課税標準を6分の1、200㎡を超える部分を3分の1にする軽減です。詳しくは特定空き家・管理不全空き家の固定資産税で解説しています。
相続登記をしないと売ることも手放すこともできない
2024年4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の登記が必要です。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
名義が亡くなった方のままでは、売却も寄付もできません。義務化前に相続した不動産も対象なので、田舎の家を手放すと決めたら、まず登記の名義を確認しましょう。相続放棄を検討している場合は相続放棄した空き家の管理義務も参考にしてください。
空き家3,000万円控除と低未利用土地の100万円控除
相続した家を売る場合、1981年5月31日以前に建てられた家などの要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。相続人が3人以上の場合は2,000万円です。要件は相続空き家の3,000万円特別控除で詳しく解説しています。
3,000万円控除が使えない場合でも、都市計画区域内の低未利用土地等を一定額以下で売れば、譲渡所得から100万円を控除できる特例があります。上限額は原則500万円、市街化区域などは800万円で、建物の対価も含めて判定します。
- 2028年12月31日までの譲渡であること
- 売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えること(相続した家は亡くなった方の取得時期を引き継ぐ)
- 親子・夫婦など特別な関係のある人への売却でないこと
- 売った後に土地が利用されること(市区町村長の確認書が必要)
- ほかの譲渡所得の特例と重ねて使わないこと
都市計画区域内の田舎の家を400万円で売り、100万円控除を使った場合
- 取得費が分からないため売却額の5%=20万円、仲介手数料33万円
- 譲渡所得:400万円−20万円−33万円=347万円
- 控除なし:347万円×20.315%=約70万5,000円
- → 100万円控除あり:247万円×20.315%=約50万2,000円(約20万3,000円の減税)
長期譲渡所得の税率20.315%(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%)で概算しています。都市計画区域の外にある家はこの特例の対象外です。
- 放置すると住宅用地特例が外れ、固定資産税が上がることがある
- 相続登記は3年以内が義務。名義が古いままでは売ることもできない
- 売却時は3,000万円控除か、都市計画区域内なら100万円控除を確認する
よくある質問
空き家バンクに登録すれば、不動産会社に頼まなくても売れますか?
登録だけで買い手が見つかるとは限りません。問い合わせ後の交渉や契約を誰が担うかは自治体ごとに異なるため、登録時に確認が必要です。不動産会社への依頼と並行して使うと、移住希望者など買い手に届く経路を増やせます。
800万円以下の家だと仲介手数料が高くなるのですか?
2024年7月から、800万円以下の宅地・建物は手数料の上限が30万円の1.1倍(税込33万円)まで認められています。ただし上限であり、媒介契約の際に事前の説明と合意が必要です。説明なく請求されるものではありません。
田舎の家をそのまま国に引き取ってもらえますか?
相続土地国庫帰属制度では、建物がある土地は申請できません。解体して更地にしたうえで、1筆14,000円の審査手数料と、承認後に負担金(市街化区域・用途地域の外にある宅地なら20万円)を納める必要があります。
畑が付いた田舎の家は誰にでも売れますか?
農地を農地のまま売るには農業委員会の許可が必要で、取得後に効率的に耕作すると認められる人などに限られます。転用目的なら都道府県知事等の許可が必要です。許可のない売買は効力を生じないため、まず農業委員会に相談してください。
田舎の家を無償で譲ると税金はかかりますか?
個人に譲ると、受け取った人に贈与税がかかる場合があります(基礎控除は年110万円)。法人に譲ると、渡した側が時価で売ったものとみなされ、譲渡所得の計算対象になります。譲る前に、所在地の税務署や税理士へ確認してください。
この記事のまとめ
- 田舎の家が売れない原因は、買い手の少なさ・建物の状態・仲介の採算・農地の付属に分けて考える
- 空き家バンクは移住希望者に届く窓口。契約を誰が担うかを登録時に確認する
- 800万円以下の物件は仲介手数料の上限が税込33万円まで認められ、仲介を頼みやすくなった
- 農地付きは農業委員会などの許可が必要。家と農地を分けて売る方法もある
- 国庫帰属制度は建物があると使えない。解体費・手数料・負担金を払う前に買取価格を確認する
- 放置は固定資産税の増加や相続登記の過料につながる。売却時は税の特例を確認する
どの方法で手放すにしても、判断の出発点は「今の状態でいくらになるか」です。まずは現況のままの価格を確認することから始めてください。