市街化調整区域の売却は難しい?|建て替えできるか調べる手順と買取

市街化調整区域の土地の売却と、建て替えの許可を調べる手順を解説するイメージ

親から引き継いだ家や土地を売ろうとしたら、不動産会社にこう言われた。「ここは市や町が家を建てないでおこうと決めたエリアなので、売るのは難しいですよ」。そんな経験でこの記事にたどり着いた方が多いはずです。

先に結論をお伝えします。売ること自体はできます。登記の手続きも契約も、ふつうの土地と同じように進みます。難しくなるのは、買った人がその土地に新しい家を建てられるかがはっきりしないときです。ここを先に調べておくと、売却の進み方が変わります。

この記事を読むとわかること

  • 市街化調整区域の不動産が売りにくいと言われる3つの理由
  • 自分の土地で建て替えができるかを市役所で確認する手順
  • 「既存宅地だから建てられる」という話が、今は通用しない理由
  • 手元に残るお金の計算と、売る方法5つの比べ方
  • 売って利益が出たときの税金と3,000万円の控除の条件

この記事の結論

  1. 市街化調整区域の不動産は売れます。問題になるのは売買そのものではなく、買った人が建て替えようとした段階で許可が下りない場合です。
  2. 建て替えができるかは、土地のある市区町村の窓口でしか分かりません。ウェブの地図で分かるのは区域の種類までです。
  3. 昔の「既存宅地」という仕組みは2001年5月18日に廃止され、5年間の移行期間も2006年5月17日で終了。当時の確認だけを根拠に建てることはできません。
  4. 売る方法は、仲介・買取・隣地の所有者などへの売却・空き家バンク・国に引き取ってもらう制度の5つです。国に引き取ってもらう制度は、建物があると申請できません。
  5. 売って利益が出たときの税金は、所有期間が5年を超えていれば20.315%、5年以下なら39.63%です。自宅や相続した空き家なら、利益から最大3,000万円を引ける仕組みがあります。

市街化調整区域の売却が難しいと言われるのはなぜ?

結論

「売れない」のではなく、買った人が家を建てられるとは限らないから難しいと言われます。契約も登記も、ふつうの土地と同じように進みます。

市街化調整区域は、法律で決められた土地の区分です。都市計画法には「市街化を抑制すべき区域」と書かれています。市や町が「ここは家を増やさないでおこう」と決めたエリアです。

用語の補足:市街化調整区域

市や町が、街を広げるエリアと広げないエリアに線を引いて分けたときの、広げないほうのエリアです。家やお店を増やすほうは「市街化区域」と呼ばれます。この線引きで、同じ市内でも土地の扱いが変わります。

市街化区域と市街化調整区域の違いを2つの箱で比べた図 市街化区域と市街化調整区域のちがい 市街化区域 街を広げるエリア 家やお店を増やす 市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域 原則、許可が必要 建て替えにも、原則として県や市の許可が必要になります
図:市街化区域と市街化調整区域の違い

理由1:建て替えに許可が必要になる

市街化調整区域では、原則として開発行為や建築行為ができません。例外にあてはまる場合だけ許可を受けて建てられます。この出発点が、ふつうの住宅地と違います。

手続きは2種類あります。土地の形を変える工事をともなう場合は、都市計画法34条に並んだ14の種類のどれかにあてはまる必要があります。土地をいじらず建物だけを建て替える場合は、43条にもとづく都道府県知事の許可が必要です。どちらにもあてはまらなければ建て替えはできません。条文は国土交通省の都市計画法の抜粋で確認できます。

理由2:買った人が建て替えでつまずく

ここが実務でいちばん問題になる点です。売買そのものを止める仕組みはありません。登記に「売ってはいけない」と書かれているわけでもなく、契約も代金のやりとりも終わります。

つまずくのは、その後です。買った人が建て替えや増改築をしようとした段階で許可が下りず、そこで初めて問題が表面化しやすいとされています。この順番を知っている買主は最初から慎重になります。

注意

市街化調整区域であることと、再建築不可であることは別の話です。再建築不可は、道路に十分接していないために建築基準法上の制限がかかる状態です。根拠になる法律そのものが違います。詳しくは再建築不可物件の売却方法をご覧ください。

理由3:住宅の需要が少なく相場も低い

市街化調整区域は、住宅の需要も流通量も少なく敬遠されやすい地域で、相場が低い傾向があるとされています。買いたい人が少なければ価格は下がります。

ただし不利な面だけではありません。都市計画税が原則かからないので、持ち出しは少なく済みます。

この項目のまとめ
  • 市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」。原則として開発行為・建築行為ができない
  • 売買そのものは止まらない。買主が建て替えようとした段階で許可が下りず問題になりやすい
  • 住宅の需要が少ないため相場も低いが、都市計画税は原則かからない

建て替えできるか調べる3つの手順|まず市役所で確認する

結論

建て替えができるかは、土地のある市区町村の窓口でしか分かりません。地図で分かるのは区域の種類までで、許可が取れるかは別の話です。

不動産会社に査定を頼む前に、自分で確認しておくことを強くおすすめします。この情報があるかないかで、不動産会社の答えが「分かりません」から「それなら売れます」に変わるからです。費用はかからず、電話1本で始められます。

聞く順番は「区域」「許可」「根拠」

聞く相手は市区町村の都市計画の担当課です。都市計画課・開発指導課・建築指導課など名前は違いますが、代表番号に「市街化調整区域の建て替えについて」と伝えれば回してもらえます。

  1. 区域の種類を確認する住所と地番を伝え、その土地が市街化調整区域かどうかを確定させます。ウェブの都市計画地図で先に見ておくと話が早く進みます。
  2. 建て替えができるかを聞く「今の家を取り壊して、同じくらいの家に建て替えられますか」と具体的に聞きます。許可が必要か、必要ならどの基準にあてはまるかを確認します。
  3. 根拠になる基準の名前を聞く答えが出たら「それは何号の基準ですか」まで聞いてメモします。この一言で、不動産会社や買主への説明が通じるようになります。

窓口で聞くこと・持っていくもの

窓口で話が止まる原因は、たいてい土地を特定できないことです。登記事項証明書と住宅地図を手元に置いてから電話してください。地番が分かれば、その場で答えてもらえます。

  • この土地は市街化調整区域か。線引きがされたのはいつか
  • 今の建物を取り壊して、同じ規模の家に建て替えられるか
  • 建て替えができるなら、根拠は都市計画法の何条・何号か
  • 市町村の条例で指定された区域(34条11号・12号)に入っているか
  • 買主が自分で住む場合と、賃貸や分譲にする場合で結果が変わるか
  • 建物を解体して更地にしたあとも、建て替えの許可は取れるか

5つ目の質問は見落とされがちですが重要です。条例で指定された区域であっても、自分で住む目的や自分の仕事で使う目的以外の建物は建てられないという運用をしている自治体があります。「自分で住むなら建てられるが、アパートにするなら建てられない」土地が実際にあるのです。

POINT

買主の「使い方」で結果が変わる

  • 自分で住む家なら許可が下りるが、賃貸や分譲は不可の区域がある
  • 条例は改正される。過去に建てられた条件が今は通らないこともある
  • だから「数年前に隣が建てたから大丈夫」という判断は危ない

「開発許可」と「建築許可」は別のもの

窓口ではこの2つの言葉が出ます。どちらも「建ててよい」というお墨付きをもらう手続きです。土地を造成したり区画を変えたりする工事をともなうときは「開発許可」、今ある土地の上で建物だけを建て替えるときは「建築許可」と呼び分けます。

許可がいらない工事もあります。農林漁業用の建築物、公益上必要な建築物、仮設の建築物などです。また建築物の改築や用途の変更で、床面積の合計が10平方メートル以内のものも対象外とされています。リフォームと建て替えは、この線で分かれます。

結論

売却の相談は、市区町村の窓口で建て替えの可否と根拠の条文を聞いてから始めてください。この1枚のメモが、査定額と買主の反応をいちばん変えます。

「既存宅地だから建てられる」は今は通用しない

結論

「昔、既存宅地の確認を受けた」という話を根拠に建てることは、今はできません。制度は2001年5月18日に廃止され、移行期間も2006年5月17日で終わっています。

相続した土地では、親や親族から「ここは既存宅地だから建てられるはずだ」と聞いている方がよくいます。昔の話としては正しいのですが、今は通りません。勘違いしたまま売り出すと、買主の調査で話が止まります。

用語の補足:既存宅地

市街化区域と市街化調整区域の線引きがされた日に、すでに宅地だった土地のことです。昔は市区町村の確認を受けておけば、許可なしで建物を建てられました。これを「既存宅地の確認制度」と呼びます。今は廃止されています。

2001年5月18日に制度が廃止された

1974年の都市計画法改正から2000年の改正までは、線引きの日にすでに宅地だった土地に特別な扱いがありました。確認を受けたものが「既存宅地」と呼ばれ、許可が不要でした。この仕組みが2001年(平成13年)5月18日に施行された改正都市計画法で廃止されました。

5年間の移行期間も2006年5月17日で終了

廃止のとき、すでに確認を受けていた土地への配慮として移行期間が設けられました。施行日から5年間は、自分で住む建物か自分の仕事で使う建物なら、それまでどおり許可なしで建てられました。

その5年間の移行期間は2006年(平成18年)5月17日に終わりました。北九州市も、確認を受けた土地であっても許可なしでは建築できないと説明しています。当時の確認証が手元にあっても、それだけでは根拠になりません。

  1. 1974年ごろ〜2001年線引きの日に宅地だった土地は、確認を受ければ許可なしで建てられた
  2. 2001年5月18日改正都市計画法の施行で、既存宅地の確認制度そのものが廃止
  3. 2006年5月17日5年間の移行期間が終了。確認証だけを根拠に建てることはできなくなった
  4. 現在市町村の条例で指定された区域か、開発審査会(自治体の審査会議)で個別に判断される
図:既存宅地の確認制度が廃止された流れ

今は「条例で指定された区域」かで判断

では現在はどう扱われるのか。道は2つです。市町村が条例で指定した区域にあてはまる場合と、開発審査会にかけて個別に認めてもらう場合です。横浜市は、一定の条件を満たしたものを開発審査会に付議する形で認めていると説明しています。

条例の基準は自治体ごとにまったく違います。たとえば久留米市では、都市計画法34条11号の区域は市街化区域から概ね500メートル以内で、概ね50戸以上が連なっていることが追加の要件です。自分の土地があてはまるかは窓口で聞かないと分かりません。

注意

条例は改正されます。堺市は、以前はある基準に合えば住宅系の建物を建てられたが、条例の改正によって建てられなくなると説明しています。近所で数年前に建った実例があっても、今の基準では通らないことがあります。必ず現時点の条例で確認してください。

この項目のまとめ
  • 既存宅地の確認制度は2001年5月18日に廃止、移行期間も2006年に終了
  • 当時の確認証だけでは建て替えの根拠にならない
  • 今は条例で指定された区域か、開発審査会での個別判断の2つの道がある

いくらで売れる?価格が下がる理由と手元に残るお金

結論

「いくらで売れるか」は、建て替えができるかで大きく変わります。そして売れた値段がそのまま手元に残るわけではありません。引かれるものを先に知っておきましょう。

建て替えできるかで価格は大きく変わる

同じ市街化調整区域でも、買主が建て替えの許可を取れる土地と取れない土地では、買える人の数がまったく違います。建て替えられる土地なら、そこに住みたい個人が買主になれます。取れない土地だと、今の建物をそのまま使う人や資材置き場に使う人に限られます。

価格を上げるためにできることは「建て替えの可否を先に調べておくこと」です。査定を頼むときに「34条の何号で建て替えができます」と伝えられれば、買える人の範囲が一気に広がります。

手元に残るお金|800万円以下の注意点

売れた値段から、不動産会社への報酬や税金が引かれます。物件の価格が低くなりがちなので、安い物件ならではの決まりが効いてきます。

国土交通省は2024年7月1日から、空き家などの売買の仲介手数料の特例を広げました。対象が従来の400万円以下から800万円以下に拡大され、上限は税込33万円に引き上げられています。買主からも最大33万円を受け取れるようになりました。

注意

この特例は、安い物件でも不動産会社が扱いやすくするためのものです。売主の立場では、通常の計算より手数料が高くなることがあります。媒介契約(=不動産会社に売却を頼む契約)を結ぶ前に、手数料を必ず確認してください。

具体例

500万円で売れた場合の仲介手数料

  • 前提:売買価格500万円、売主が手数料を負担
  • 通常の上限:500万円×3%+6万円=21万円、税込23万1,000円
  • 800万円以下の特例を使う場合:税込最大33万円
  • → 差は9万9,000円。特例を使った場合、手元に残るのは467万円

どちらになるかは媒介契約の内容で決まります。

500万円で売れたときに仲介手数料が引かれる内訳を横棒で示した図 500万円で売れたときの手残りのイメージ 売れた値段 500万円 仲介手数料を引いたあと 467万円 仲介手数料 最大33万円(税込) ここからさらに、売って出た利益にかかる税金が引かれます
図:500万円で売れたときの内訳

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項目 どんなお金か 金額の決まり方
仲介手数料 不動産会社への報酬 800万円以下の空き家などは税込33万円まで。それより高い物件は価格に応じた上限
売って出た利益(譲渡所得)の税金 利益にかかる所得税・住民税 所有期間が5年超なら20.315%、5年以下なら39.63%
解体費用 更地にして引き渡す場合だけ 建物の構造・広さ・搬出経路で変わる。必ず見積もりを取る

※税率は復興特別所得税を含めた数字。解体費用は見積もりで確認してください。

固定資産税と都市計画税は安く済む

売れるまでの間、持っているだけでかかる税金の話です。都市計画税は、原則として市街化区域内の土地と家屋にかかる市町村の税金です。市街化調整区域は、条例で定める区域などを除いて原則として課税の対象外です。制限税率は0.3%なので、市街化区域の同じ評価額の土地と比べると、毎年の負担はその分だけ軽くなります。

用語の補足:住宅用地の特例

家が建っている土地は、固定資産税を計算するもとになる金額が安くなる仕組みです。1戸あたり200平方メートル以下の部分は6分の1、超える部分は3分の1になります。地方税法349条の3の2の決まりです。家を壊すとこの仕組みから外れます。

この項目のまとめ
  • 建て替えができる土地かで、買える人の数と価格が変わる
  • 800万円以下の空き家などは仲介手数料の上限が税込33万円
  • 都市計画税は原則かからず、家が建っている間は固定資産税も軽い
ちょっと一息

その市街化調整区域の土地、今いくらで売れるか知っていますか?

持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
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売る方法5つを比較|仲介・買取・隣地・空き家バンク・国庫帰属

結論

買い手を一般の個人に限らないほど選択肢は増えます。1社に断られただけで「売れない土地だ」と決めないでください。方法は5つあります。

行き詰まる理由の多くは、相談先が1つしかないことです。最初の会社が調整区域を扱っていなければ、そこで話が終わります。以下の5つを試してください。

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方法 向いている人 手にするお金 注意点
仲介で売る 時間をかけてよい人。建て替えができる土地 相場に近い金額 買主が見つかるまでの期間が読めない
買取(会社が直接買う) 早く確実に手放したい人 仲介より低くなる 調整区域を扱える会社かどうか確認する
隣地の所有者などに売る 隣に使い道がある場合 交渉次第 相手が限られる
空き家バンクに登録 自治体の仕組みに任せたい人 相場より低いことが多い 参加していない自治体もある
相続土地国庫帰属制度 相続した土地で買主が見つからない人 受け取るお金はなく、負担金を払う 建物があると申請できない

※一般的に検討しやすい順に並べています。

仲介と買取、どちらを選ぶか

仲介は、不動産会社に買いたい人を探してもらう方法です。買取は、不動産会社が自分で買主になる方法です。市街化調整区域では、この2つの差が普通の住宅地より大きく出ます。

建て替えの許可が取れる土地なら、仲介で個人の買主を探す価値があります。取れない土地なら現況のまま買い取る会社を探すほうが現実的です。価格は下がりますが、期間が読めます。

買取のメリット

  • 買主を探す期間がいらず、手放す時期が読める
  • 建て替えができない土地でも検討してもらえる
  • 解体や片付けをせずに引き渡せる場合がある

買取のデメリット

  • 価格は仲介より低くなる
  • 調整区域を扱える会社が限られる
  • 1社だけでは金額が妥当か分からない

隣の人・農家・福祉事業者も買い手

一般の個人以外にも買い手はいます。まず隣の土地の所有者です。隣地を買って広く使いたい人には、建て替えの可否が問題にならない場合があります。

農林漁業用の建築物は許可が不要なので、農業を営んでいる人には使い道がある土地です。医療や介護の施設は、周辺の住民が利用する公益上必要な施設として、市街化調整区域でも許可の対象になることがあります。医療法人や介護事業者に持ちかける方法も提案されています。

空き家バンクと相続土地国庫帰属制度

空き家バンクは、売りたい人と買いたい人を自治体が仲立ちする仕組みです。国土交通省の全国版空き家・空き地バンクは2018年4月から本格運用されました。2023年2月末時点で、全国1,788自治体のうち949自治体が参加していました。自分の自治体が参加しているかは確認が必要です。田舎の土地の手放し方は田舎の家が売れない理由と手放し方でも扱っています。

相続土地国庫帰属制度は、相続でもらった土地をお金を払って国に引き取ってもらう制度です。売るのではなく手放す仕組みなので、お金は入ってきません。審査手数料が土地1筆につき1万4,000円、さらに10年分の管理費にあたる負担金がかかります。宅地や田畑は原則20万円です。

大きな落とし穴もあります。建物がある土地は申請できません。通常の管理や処分に過分な費用または労力がかかる土地は対象外とされ、建物がある土地はその例に挙げられています。詳しい要件は法務省の資料と相続土地国庫帰属制度は使えない?で確認してください。

売れたときの税金|3,000万円の控除は使える?

結論

「調整区域だから控除が使えない」ということはありません。控除の条件に区域の種類は入っていません。判断されるのは、誰が住んでいた家か、いつ売ったかです。

税金は「売れた値段」ではなく「利益」にかかる

700万円で売れたら、700万円に税金がかかるわけではありません。かかるのは売れた値段から、買ったときの値段と売るためにかかった費用を引いた残りです。中古車を売ったとき、受け取った金額まるごとが儲けではないのと同じです。

用語の補足:譲渡所得と取得費

売って出た利益のことを、税金の世界では「譲渡所得」といいます。そこから引く「買ったときの値段」が「取得費」です。取得費は購入代金や購入手数料などに改良費・設備費を加えた金額です。建物は年数が経った分(償却費相当額)を差し引いて計算します。

買ったときの契約書が見つからないこともあります。相続した土地では珍しくありません。実際の取得費が売れた値段の5%に満たないときは、売れた値段の5%を取得費として計算できます。計算式は国税庁のタックスアンサーNo.3208に書かれています。

売れた値段から取得費と譲渡費用を引いて利益を出す計算を縦に並べた図 税金は「売れた値段」ではなく「利益」にかかる 売れた値段 700万円 買ったときの値段(取得費) −35万円 売るためにかかった費用 −30万円 残りが利益(譲渡所得) 635万円 この635万円に税率をかけて税金を計算します
図:売れた値段から利益を計算する順番

利益が出たら、そこに税率をかけます。税率は所有期間で2段階に分かれ、判定するのは売った年の1月1日時点の所有期間です。年末に売るか年明けに売るかで区分が変わることがあります。

横にスクロールできます

所有期間(売った年の1月1日時点) 所得税 住民税 合計(復興特別所得税を含む)
5年以下(短期譲渡所得) 30% 9% 39.63%
5年超(長期譲渡所得) 15% 5% 20.315%

※所得税・住民税の率は国税庁の資料によるもので、合計は復興特別所得税を含めた数字です。

具体例

契約書がない相続した土地を700万円で売った場合

  • 前提:相続した土地を700万円で売却、契約書がない、所有期間5年超、控除なし
  • 取得費:売れた値段の5%で計算 → 700万円×5%=35万円
  • 売るためにかかった費用:30万円
  • 利益:700万円−35万円−30万円=635万円
  • → 税金:635万円×20.315%=約129万円

契約書が見つかって取得費が500万円だと分かれば、利益は170万円に下がります。

自分が住んでいた家なら3,000万円の控除

自分が住んでいた家を売った場合、所有期間に関係なく利益から最大3,000万円を引ける仕組みがあります。市街化調整区域かどうかは、この控除の条件に入っていません。

今は住んでいない家でも使えますが、期限があります。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。家を取り壊した土地も、定められた期限の中なら対象です。条件は国税庁のタックスアンサーNo.3302で確認してください。

相続した空き家なら3,000万円または2,000万円

親が住んでいた家を相続して売る場合は、別の控除があります。対象は、亡くなった人が住んでいた家やその敷地です。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売り、売却代金が1億円以下であることなどが条件です。

金額には注意点があります。2024年1月1日以後の売却で、その家や土地を取得した相続人が3人以上いる場合、控除額は3,000万円ではなく2,000万円になります。兄弟3人で相続した実家を売るときは、この違いが効きます。要件は国税庁の確定申告の手引きと相続空き家の3,000万円特別控除とはをご覧ください。

POINT

税金で損をしないための3つの順番

  • 買ったときの契約書を探す。見つかるだけで税金が変わる
  • 相続した家なら、3年を経過する日の属する年の12月31日という期限を先に確認する
  • 年末に近い時期は、1月1日時点の所有期間で税率が変わらないか確認する

更地にしてから売るべき?解体前に必ず確認すること

結論

市街化調整区域では先に解体するのは危険です。建物を壊したあとに建て替えの許可が取れず、価値が下がる場合があるためです。

「古い家があると売れないから先に壊しておこう」という発想は、普通の住宅地なら理にかなっています。しかし市街化調整区域では逆効果になることがあります。理由は2つです。

解体すると建て替えの許可を失うことがある

市街化調整区域では、今建っている建物があることを前提に扱われる場面があります。たとえば埼玉県久喜市には、解体後、最大3年間は建築物があるとみなすことができるという施策があり、空き家を解体したあとの売却を後押ししています。ただし新築できる人には制限があるとされています。

つまり、自治体によっては解体後に猶予があり、別の自治体にはないということです。猶予がない地域で建物を壊すと、更地になったとたんに「何も建てられない土地」になりかねません。解体は元に戻せない判断です。

更地にすると固定資産税が最大6倍になる

もう1つは、持っている間の税金です。先ほどの住宅用地の特例は、家が建っていることが前提です。家を壊すと、この仕組みから外れます。

具体例

150平方メートルの土地を更地にした場合の固定資産税

  • 前提:土地の評価額600万円、面積150平方メートル、税率1.4%
  • 家が建っている間:600万円×6分の1=100万円 → 1万4,000円
  • 更地にしたあと:600万円がそのまま計算のもと → 8万4,000円
  • → 差は年間7万円

実際には急な上昇をやわらげる仕組みもあるため、この通りの金額にならないこともあります。

判断の順番|解体を決めるのは最後にする

では、どういう順番で進めればよいか。解体を検討する前に情報を集めてください。査定は建物があるうちに取れます。壊してから後悔するのは、順番を逆にするからです。

  1. 市役所で許可を確認建て替えと解体後の許可を確認
  2. 現況のまま査定を取る古家付きで買う会社を探す
  3. 解体費用の見積もりを取る更地の査定とあわせて比べる
  4. 手残りを比べて解体を決める元に戻せないので最後に判断
図:解体を決める前の4つの段階
  • 解体後も建て替えの許可が取れるか窓口で確認した
  • 解体後の猶予の仕組みがある自治体か確認した
  • 古家付きのまま買い取る会社に、1社以上あたった
  • 更地にした場合の査定額から解体費用を引いて計算した
  • 固定資産税が上がる分を、売れるまでの期間ぶん見込んだ

更地にして渡す条件は更地渡しとは?解体費用は売主負担、解体費用が用意できないときの進め方は空き家の解体費用が払えない場合の売却方法でまとめています。

結論

市街化調整区域では、解体を決めるのは最後にしてください。建物があるうちに査定を取れば、現況のまま売る道も残せます。

よくある質問

市街化調整区域の土地は、不動産会社に断られることがありますか?

断られることはあります。建て替えの許可が取れるかを調べる手間がかかり、買いたい人も見つかりにくいためです。都市計画法に詳しい会社や、現況のまま買い取る会社に相談すると話が進みやすくなります。1社で止まらず、複数の会社に同時に聞いてみてください。

市街化調整区域の家は、リフォームもできないのですか?

リフォームと建て替えは別の扱いです。建築物の改築や用途の変更でも、床面積の合計が10平方メートル以内のものなどは許可が要りません。

一方で、建て替えにあたる工事は許可の対象になります。どこまで許可なしでできるかは、工事の内容ごとに市区町村の窓口で確認してください。

市街化調整区域の家にも、相続した空き家の3,000万円控除は使えますか?

区域の種類で控除の可否が決まるわけではありません。相続した空き家の3,000万円控除は、売る時期と売却代金で判断されます。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることなどが要件です。市街化調整区域かどうかは、ここには含まれていません。

市役所に行かずに、市街化調整区域かどうかを調べられますか?

多くの市区町村が、都市計画の区域をウェブの地図で公開しています。ただし、建て替えの許可が取れるかどうかは地図では分かりません。

最後は窓口か電話で、住所と地番を伝えて確認してください。登記事項証明書と住宅地図を手元に用意しておくと、話が早く進みます。

この記事のまとめ

  • 市街化調整区域の不動産は売れる。難しくなるのは買主が建て替えの許可を取れない場合
  • 建て替えの可否は市区町村の窓口で確認する。根拠の条文までメモする
  • 既存宅地の確認制度は2001年5月18日に廃止、移行期間も2006年5月17日で終了している
  • 800万円以下の空き家などは仲介手数料の上限が税込33万円。媒介契約の前に確認する
  • 売る方法は仲介・買取・隣地など・空き家バンク・国庫帰属の5つ
  • 解体は最後に決める。先に壊すと建て替えの許可を失い、固定資産税も最大6倍になる

市街化調整区域の土地は、調べる順番を間違えなければ手放せます。まずは建物があるうちに、現在いくらで売れるのかを確認してください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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