既存不適格の建物は売れる?違反建築との違いと住宅ローン・買取での売却

既存不適格の建物が違反建築と何が違うのか、売却時の住宅ローンや増築の制限を解説する記事のイメージ

「この建物は既存不適格です」と不動産会社や役所の窓口で言われて、自分は違法建築を持ってしまったのかと不安になる方は少なくありません。取り壊しを命じられるのではないか、もう売れないのではないか、というご相談もよくいただきます。

結論から言うと、既存不適格は違反建築ではありません。そのまま所有して住み続けることも、売ることもできます。ただし買主の住宅ローンが通りにくいために買い手が限られ、相場より安い価格になりやすいという現実的な不利はあります。売れるかどうかではなく「誰に、どの方法で売るか」が実質的な論点です。

この記事を読むとわかること

  • 既存不適格と違反建築・再建築不可はどこが違うのか
  • 自分の建物が既存不適格かどうかを調べる4つのステップ
  • 買主の住宅ローンが通りにくい理由と、価格が下がる仕組み
  • 増築したときに現行基準が遡って適用される3段階の線引き
  • 現況のまま売る・是正してから売る・買取で手放すの比較

この記事の結論

  1. 既存不適格は建築基準法3条2項で現行基準の適用を除外された建物で、違反建築ではない。住み続けても、売っても違法にならない。
  2. ただし増築・改築・大規模の修繕に着手すると適用除外が外れる(同法3条3項)。増築が既存不適格部分の2分の1を超えると、建物全体を現行基準に合わせることになる。
  3. 不利は法律ではなく資金面に出る。買主の住宅ローンが通りにくいため買い手が現金客や事業者に絞られ、相場より安い価格でしか売れないことがある。
  4. 既存不適格は重要事項説明の対象。知りながら告げなかった場合は、免責特約を付けていても責任が残る。
  5. 判断に必要なのは建物の知識ではなく現況の価格と是正費用の2つの数字。是正費用が価格差を上回るなら、現況のまま買取で手放したほうが手残りは多くなる。

既存不適格とは?違反建築とどう違うのか

結論

既存不適格とは、建てたときは適法だったのに、その後の法改正や都市計画の変更で現行基準に合わなくなった建物です。違反建築ではないので、住み続けることも売ることも違法ではありません。

根拠は建築基準法3条2項です。国土交通省がまとめた参照条文では、法令の施行や適用の時点ですでに存在していた建築物が新しい規定に適合しない場合、その規定はその建物には適用しないとされています。

つまり「後からできたルールを遡って当てはめない」という考え方です。これがなければ、法改正があるたびに全国の既存の建物が一斉に違法になってしまいます(国土交通省「建築基準法 参照条文」)。

用語の補足:既存不適格建築物

建築した当時の法令には適合していたが、その後の法令改正や都市計画の変更によって現行の基準に適合しなくなった建物のことです。実務では「既存不適格」と略して呼ばれます。

違反建築との違いは「いつの法律で判断するか」

違反建築物かどうかは、現在の建築基準法ではなく、建てたとき(増築や用途変更をしたとき)の法令に適合していたかどうかで判断されます。名古屋市も同じ説明を公表しています。

だから、建築時には適法で、あとから基準が変わっただけの建物は違反建築になりません。逆に、確認を受けた内容と違う建物を建てた場合や、確認申請をせずに増築した場合は、建てた時点ですでに違反なので、何年経っても既存不適格には変わりません。

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項目 既存不適格 違反建築 再建築不可
適否の判断時点 建築した当時の法令 建築した当時の法令(当時から不適合) 現在の接道義務
違法かどうか 違法ではない 違法 違法ではない
是正命令 原則なし(劣化で危険な場合に勧告・命令の制度あり) 是正命令の対象になりうる 原則なし
買主の住宅ローン 通りにくいことがある 通らないことが多い 通りにくい
建て替え できるが現行基準に合わせるため小さくなる 現行基準に合わせる必要がある 建築確認が下りず建て替えできない

※既存不適格と再建築不可は重なることもあります(接道義務を満たさない既存不適格の建物など)。

既存不適格でも「放置して危険」なら行政が動く

既存不適格なら何もされないわけではありません。2005年(平成17年)の建築基準法改正で、特定行政庁は、不特定または多数の人が利用する既存不適格建築物について、劣化が進み放置すれば著しく危険または有害になるおそれがあると認めるときに、所有者へ勧告し、必要なら是正命令を出せるようになりました。

国土交通省は2019年に、この措置の運用についてのガイドラインを出しています(国土交通省住宅局建築指導課のガイドライン)。対象は劇場や店舗など多数が利用する建物が中心で、一般の戸建てがただちに命令を受けるわけではありません。

ただし「既存不適格だから永久に手を付けなくてよい」とまでは言えない点は押さえておきましょう。空き家として放置した場合は、空家等対策の特別措置法による別の枠組みも関わってきます。

POINT

既存不適格について、まず押さえる3点

  • 違法ではない。所有・使用・売却のすべてが可能
  • 違反建築かどうかは「建てたときの法令」で判断される
  • 不利が出るのは買主の資金調達(住宅ローン)と建て替えの規模

既存不適格と再建築不可は別の問題

既存不適格は「現行基準に合っていない」状態の総称で、そのうち接道義務を満たさないものが、建て替えの建築確認が下りない再建築不可になります。容積率が少しオーバーしているだけの建物は既存不適格ですが、再建築不可ではありません。

接道義務は、敷地が原則として幅4m以上の建築基準法上の道路に2m以上接していなければならないという決まりです。満たさない敷地の扱いと売却方法は再建築不可物件の売却方法の記事で詳しく整理しています。

既存不適格になる主なパターン

結論

多いのは、建てたあとに容積率・建ぺい率の指定が下げられた、用途地域が変わった、耐震基準が変わった、道路の扱いが変わった、というパターンです。所有者が建物に何も手を加えていなくても既存不適格になります。

容積率や建ぺい率の指定が引き下げられた

容積率は延べ面積を敷地面積で割った割合、建ぺい率は建築面積を敷地面積で割った割合で、どちらも用途地域ごとに上限が定められています。この指定が都市計画の見直しで引き下げられると、既存の建物がそのまま上限を超えてしまいます。

具体例

容積率の引き下げで既存不適格になる例

  • 敷地100㎡、延べ面積180㎡の建物(建築当時の指定容積率200%)
  • → 当時は 180㎡ ÷ 100㎡ = 180% なので適法
  • → その後、指定容積率が150%に引き下げられた
  • → 現行基準で建てられるのは延べ150㎡まで。既存の180㎡は30㎡超過の既存不適格になる

建物には一切手を加えていないのに、都市計画の数字が変わっただけで既存不適格になります。所有者の落ち度ではありません。

用途地域が変わって同じ用途で建てられなくなった

用途地域は、建てられる建物の用途と容積率・建ぺい率の上限を定めるもので、見直しによって変わることがあります。工場や店舗つきの住宅があった区域が住居系の用途地域に変更され、同じ用途では新築できなくなるケースが典型です。

この場合も現在の建物の使用は続けられますが、建て替えると同じ用途・同じ規模では建てられません。収益用の建物であれば、その差が賃料収入の前提にも影響します。

耐震基準・高さの制限・道路の扱いが変わった

新耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日以降の建築確認から適用された基準で、それ以前に確認を受けた建物は旧耐震基準です。旧耐震の建物は構造の規定について既存不適格に当たり、買主の住宅ローンの審査で不利になりやすい類型です。詳しくは旧耐震基準の家の売却の記事をご覧ください。

ほかに、日影規制や道路斜線・北側斜線といった高さの制限が強化された、前面道路がセットバックの必要な道として扱われるようになった、といった変更も既存不適格の原因になります。

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パターン 合わなくなる規定 売却への主な影響
容積率オーバー 指定容積率の引き下げ 建て替えで延べ面積が減る。住宅ローンの担保評価が下がる
建ぺい率オーバー 指定建ぺい率の引き下げ 建て替えで建築面積が減る。増築がほぼできない
用途地域の変更 建てられる用途の制限 同じ用途で建て替えられず、買い手の用途が限られる
旧耐震基準 構造の耐震基準 住宅ローンが通りにくく、耐震診断・補強の費用を見込まれる
高さ・斜線制限 日影規制・道路斜線・北側斜線 建て替えで階数や高さが抑えられる
前面道路の扱い 接道義務・セットバック セットバックで有効敷地が減る。接道を満たさなければ再建築不可

※1つの建物に複数のパターンが重なることも多く、重なるほど買い手の層は狭くなります。

注意

「容積率が少しオーバーしているだけ」と聞いていた建物が、調べると旧耐震かつセットバック未了だった、ということは珍しくありません。1つ見つかった時点で、ほかの規定も通しで確認してください。

自分の建物が既存不適格かどうかを調べる4ステップ

結論

建築確認・検査済証の有無を確認し、役所で現在の規制と照らし合わせれば、費用をかけずに大枠の判定ができます。書類が残っていない場合の代わりの手段も用意されています。

順番を間違えると二度手間になります。次の4ステップで進めてください。役所に行くのは3つ目ではなく2つ目です。

  1. 手元の書類を集める確認済証(建築確認通知書)・検査済証・設計図書・登記事項証明書・固定資産税の課税明細を揃える。建築確認の年月日と各面積が分かれば先に進めます。
  2. 役所で現在の規制を調べる都市計画課で用途地域・指定容積率・建ぺい率・高さの制限を、建築指導課で前面道路の種類と幅員を確認する。都市計画情報をウェブで公開している自治体も多いです。
  3. 当時の数値と現在の数値を見比べる延べ面積÷敷地面積が現在の指定容積率を超えていれば容積率オーバー、建築面積÷敷地面積が指定建ぺい率を超えていれば建ぺい率オーバーの既存不適格に当たります。
  4. 書類が無い場合の代替手段をとる検査済証を紛失した場合は、直近の工事についての処分等概要書を特定行政庁に請求できます。国土交通省の既存建築物の現況調査ガイドラインは、これを最初の手順として示しています。
  • 建築確認を受けた年月日(新耐震・旧耐震の判定に使う)
  • 検査済証があるか、建築計画概要書を取得できるか
  • 敷地面積・建築面積・延べ面積の3つの数字
  • 増築や用途変更をした履歴があるか、その確認申請をしたか
  • 前面道路の幅員と、セットバックしているかどうか

検査済証がないときの進め方

検査済証がないと、既存不適格なのか違反建築なのかという判定自体が難しくなります。国土交通省は2014年7月に、検査済証のない建築物について指定確認検査機関を活用した「建築基準法適合状況調査」のガイドラインを出しました。対象は木造戸建てに限らず、鉄筋コンクリート造や鉄骨造を含むすべての建築物です(国土交通省の同ガイドライン概要)。

また、より新しい既存建築物の現況調査ガイドラインでは、最初の手順として直近の工事の検査済証の有無を確認し、紛失していれば処分等概要書を特定行政庁に請求する流れが示されています。

これらの調査を受ければ法適合の状況を書面で示せますが、費用と期間がかかります。売却を前提にするなら、調査費用と価格差のどちらが大きいかを先に比べたほうが現実的です。検査済証がない家の売却は検査済証がない家の売却の記事で詳しく扱っています。

増築した部分があるときは確認申請の有無を調べる

増築そのものは違法ではありませんが、必要な建築確認を受けずに増築した部分があると、その建物は既存不適格ではなく違反建築として扱われます。登記の有無だけでなく、確認申請の履歴も確認してください。

増築部分が未登記になっているケースも多く、売却時には表題部変更登記の費用も見込む必要があります。詳しくは未登記建物(増築未登記)の家の売却の記事をご覧ください。

この項目のまとめ
  • 判定に必要なのは「建築確認の年月日」と「3つの面積」と「現在の指定数値」
  • 検査済証がなくても、処分等概要書や法適合状況調査という代替手段がある
  • 確認申請をしていない増築があると、既存不適格ではなく違反建築になる

既存不適格の建物は売れる?価格が下がる理由

結論

売れます。ただし買主の住宅ローンが通りにくいため買い手が絞られ、相場より安い価格になりやすいのが実情です。

住宅ローンが通りにくいので買い手が限られる

金融機関は担保評価の際に、現行の建築基準法に適合しているかを見ます。既存不適格だと融資が受けにくくなることがあり、その結果として買い手が限られ、近隣の相場より安い価格でしか売れない、なかなか買い手がつかないという指摘があります。

一方で、審査の基準は金融機関ごとに違います。容積率が数%超えているだけなのか、そもそも建て替えができないのかで扱いも変わります。「既存不適格だから必ず融資不可」ではないため、1社の回答だけで売却方針を決めないことが大切です。

  1. 現行基準に不適合容積率オーバー・旧耐震など
  2. 金融機関の担保評価が下がる住宅ローンの審査が通りにくくなる
  3. 買い手が現金客・事業者に絞られる住宅ローン前提の購入希望者が検討から外れる
  4. 成約価格が相場より下がる価格を下げて買い手を探すことになる
図:既存不適格が売却価格に影響するまでの流れ

建て替えで小さくなる分だけ評価が下がる

既存不適格の建物を建て替えるときは、現行の容積率・建ぺい率を守らなければならないので、以前より小さい建物しか建てられません。買主から見れば「同じ広さを建て直せない土地」なので、その差が価格に反映されます。

具体例

建て替えると延べ面積が減る例

  • 敷地100㎡・現在の延べ面積180㎡(建築当時の指定容積率200%)
  • 現在の指定容積率は150%
  • → 建て替え後に建てられるのは延べ150㎡まで
  • → 同じ用途でも30㎡(約9坪)狭い建物になる

容積率オーバーの程度が大きいほど、この差は広がります。買主は「建て替え後に建てられる規模」を前提に価格を考えます。

既存不適格マンションは建替えが組み立てにくい

区分所有のマンションでは影響がさらに大きくなります。国土交通省の資料では、マンション建替えが実現しなかった理由として「既存不適格(容積率オーバー等)で事業スキームが組み立てられなかった」が最も多く挙げられています(国土交通省のマンション建替えに関する資料)。

建て替えても従前の床面積を確保できないと、事業者が参画しにくく、区分所有者の負担も大きくなります。築年数が古い既存不適格マンションは、建替えを待つより売却の出口を先に検討したほうが現実的な場合があります。

結論

既存不適格の不利は「売れない」ことではなく「買い手が絞られて価格が下がる」ことに出ます。だから対策も、建物を直すことより買い手の幅を広げることに向けるのが筋です。

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増築・建て替えはどこまで現行基準に合わせる必要がある?

結論

増築・改築・大規模の修繕に着手すると、建築基準法3条2項の適用除外が外れます。ただし増築の規模に応じて、遡って適用される範囲が3段階に分かれています。

建築基準法3条3項は、法令の施行・適用後に着手した増築、改築、大規模の修繕・模様替などを2項の特例の対象外としています。文字どおり読めば「少し増築したら建物全体を現行基準に合わせる」ことになり、既存の建物に手を入れられなくなってしまいます(国土交通省「建築基準法 参照条文」)。

そこで建築基準法86条の7に緩和規定が置かれています。国土交通省の資料では、2007年の改正で、増改築時にただちに全基準に適合させる必要があった点を見直し、工事に関係する基準から順次適合させられるようにしたと整理されています。

増築の規模で遡及の範囲が3段階に分かれる

自治体が公表している運用資料では、既存不適格部分の延べ面積に対する増築部分の割合に応じて、遡って適用される基準が変わると整理されています。目安は次の3段階です。

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増築部分の規模 現行基準が遡って適用される範囲 実務上の負担の目安
1/20以下かつ50㎡以下 増築部分が中心。既存部分への適用は限定的 小規模な増築。比較的ハードルが低い
1/2以下 構造の種別に応じて既存部分にも一部適用される 耐震性の確認などが求められ、調査費用が発生する
1/2を超える 建物全体を現行基準に適合させる 事実上、建て替えに近い負担になる

※具体的な適用範囲は構造種別・用途・自治体の運用で変わります。着工前に特定行政庁または建築士に確認してください。

独立した棟が複数あるときは工事する棟だけが対象

建築基準法86条の7第2項により、既存不適格の独立部分が2つ以上ある場合、増築する独立部分以外には現行基準が遡って適用されません。渡り廊下でつないだ別棟など、構造上独立した部分が分かれているケースで使える考え方です。

一方で、増築部分そのものには原則として現行規定が適用されます。「既存部分がどこまで対象になるか」と「増築部分は必ず現行基準」を分けて考えると整理しやすくなります。

確認申請の前に既存不適格調書が必要になる

86条の7の緩和を受ける場合は、確認申請の前に既存不適格調書を作成し、その建物が既存不適格であることを確認する手続きが必要です。自治体の案内でも、調書の提出が前提として示されています。

調書の作成には当時の図面や確認の記録が必要になるため、書類が揃っていないほど手間と費用が増えます。図面が無ければ建築士が復元図を作る必要があり、その分の設計費用もかかります。

注意

増築の計画を先に固めてから相談すると、遡及の範囲が分かった段階で計画ごと作り直しになることがあります。面積や工事の範囲を決める前に、特定行政庁か建築士に当たってください。

この項目のまとめ
  • 増築に着手すると3条2項の適用除外が外れるが、86条の7で段階的に緩和されている
  • 増築が既存不適格部分の1/2を超えると、建物全体を現行基準に合わせることになる
  • 緩和を受けるには既存不適格調書が必要で、図面が無いほど費用がかかる

売るときの説明義務と契約不適合責任

結論

既存不適格であることは重要事項説明の対象です。知りながら告げなかった場合は、免責特約があっても責任が残ります。

重要事項説明で建築基準法令の制限が説明される

宅地建物取引業法35条1項2号は、都市計画法・建築基準法などの法令に基づく制限の概要を、重要事項として買主に説明することを求めています。国土交通省は、この号に当たる法令と概要の一覧を公表しています(国土交通省「宅地建物取引業法第35条第1項第2号に定める法令一覧」)。

つまり既存不適格は「言わなくてよい話」ではなく、仲介業者が調査して買主に説明する項目です。売主としては、把握している事実を仲介業者に正確に伝えることが出発点になります。

知りながら告げなければ免責特約でも守られない

契約で売主の責任を免除する特約を付けることはできますが、売主が知っていた不具合を買主に告げなかった場合は、特約があっても責任を免れられません(民法572条)。この考え方は物理的な不具合でも同じで、雨漏りする家の売却の記事で詳しく整理しています。

既存不適格で問題になりやすいのは、「買主が住宅ローンを組めない」「建て替えると今より小さくなる」という、契約後に分かる不利です。売る前に自分で把握して開示しておくほうが、結果的に安全です。

  • 建築確認を受けた年月日と、検査済証の有無
  • 敷地面積・建築面積・延べ面積と、現在の指定容積率・建ぺい率
  • 増築・用途変更の履歴と、その確認申請をしたかどうか
  • 前面道路の種類・幅員と、セットバックの状況
  • 過去に役所から指導や通知を受けたことがあるか

境界・越境・セットバックも同時に整理する

既存不適格の建物は築年数が古いことが多く、境界が確定していない、塀や庇が隣地に越境している、セットバックが未了のまま、といった論点が重なりがちです。買主から見れば、どれも引き渡し後のトラブル要因です。

これらを一つずつ解消すると時間と費用がかかります。どこまで整えてから売るかは、整えることで上がる価格と、かかる費用を見比べて決めるのが現実的です。

既存不適格の建物を手放す3つの方法

結論

現況のまま仲介で売る、是正・改修してから売る、買取で手放すの3つです。是正にかかる費用が価格差を上回るなら、現況のまま手放したほうが手残りは多くなります。

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項目 現況のまま仲介 是正してから仲介 買取
売れるまでの期間 読みにくい(長期化しやすい) 工事期間+売却期間 短い
想定価格 相場より下がりやすい 相場に近づく 仲介の成約価格より低め
売主が先に出す費用 なし 耐震補強・減築・登記などの工事費 なし
買主の住宅ローン 通りにくい 通りやすくなる 審査なし(事業者が買う)
仲介手数料 かかる かかる かからない(直接買取の場合)
向くケース 不適合の程度が軽く、立地が良い 工事費を価格差が上回る見込みがある 期間を確定させたい、費用をかけたくない

※金額や期間は物件の状態と地域で変わります。3つを並べて比べるために、それぞれの見積もりを取るのが前提です。

現況のまま仲介で売る

手を加えずに市場に出す方法です。売主が先に出す費用はかかりませんが、住宅ローンを使う買主が検討から外れるため、買い手は現金で買える層や事業者に絞られます。期間が読みにくく、価格の見直しを重ねることになりやすい方法です。

既存不適格の程度が軽く、立地が良い場合はこの方法でも決まります。なかなか決まらないときの打ち手は家が売れない原因と対策の記事にまとめています。

是正・改修してから売る

耐震補強を行う、増築部分を減築して容積率の範囲に収める、未登記部分を登記する、といった是正をしてから売る方法です。買主の住宅ローンが通りやすくなる分、価格は上がりやすくなります。

ただし費用が価格の上昇分を上回ると、手残りはかえって減ります。減築は構造の検討と確認申請が必要になることもあり、期間も読みにくくなります。

メリット

  • 買主の住宅ローンが通りやすくなる
  • 買い手の層が広がり、価格が上がりやすい
  • 引き渡し後のトラブルが起きにくい

デメリット

  • 工事費を売主が先に負担する
  • 費用が価格差を上回ると手残りが減る
  • 確認申請や工事で売却までの期間が伸びる

買取で現況のまま手放す

不動産会社が直接買い取る方法です。買主が事業者なので住宅ローンの審査がなく、既存不適格・旧耐震・検査済証なしといった状態のままでも引き渡せます。

価格は仲介の成約価格より低くなる傾向がありますが、是正費用がかからず、期間も短く、引き渡し後の責任を負わない形にしやすいのが特徴です。「仲介の想定価格 − 是正費用 − 仲介手数料」と買取価格を並べて比べるのが判断の軸になります。

  1. 現況の価格を把握する複数社の査定で、現況のままいくらで売れるかを確認する
  2. 是正費用の見積もりを取る耐震補強・減築・登記などにいくらかかるかを把握する
  3. 差額を比べて方法を決める価格差が是正費用を上回らなければ、現況のまま手放す
図:是正してから売るか、現況のまま売るかを決める順番
具体例

是正してから仲介で売る場合と、現況のまま買取の場合を比べる例

  • 是正後に仲介で2,000万円で売れる見込み/耐震補強と登記の費用400万円
  • 仲介手数料の上限は、売買価格が400万円を超える場合「売買価格×3%+6万円+消費税」(報酬告示で定める区分計算と同じ額になる速算式)
  • → 是正して仲介:2,000万円 − 400万円 − 手数料約72.6万円 = 手残り約1,527万円
  • → 現況のまま買取1,600万円(仲介手数料なし):手残り1,600万円
  • → この前提では買取のほうが約73万円多く残る

数字が入れ替われば結論も変わります。どちらが得かは前提の金額次第なので、現況の査定額と是正費用の見積もりを両方そろえてから決めてください。

結論

既存不適格の建物は、直してから売るか、現況のまま手放すかの二択です。判断に必要なのは建物の専門知識ではなく、現況の価格と是正費用という2つの数字です。

この項目のまとめ
  • 手放し方は「現況で仲介」「是正して仲介」「買取」の3つ
  • 是正費用が価格差を上回ると手残りは減るので、先に両方の数字を取る
  • 買取は価格が低めになる一方、費用・期間・引き渡し後の責任を抑えられる

よくある質問

既存不適格の建物は違法ですか?取り壊しを命じられることはありますか?

違法ではありません。建築基準法3条2項により、建てたときの基準に適合していれば後からできた規定は適用されないため、そのまま所有・使用できます。

ただし不特定多数が利用する建物で、劣化が進み放置すれば著しく危険または有害になるおそれがあると認められる場合は、特定行政庁が所有者に勧告し、必要なら是正命令を出せる制度があります。

既存不適格の家を買う人は住宅ローンを組めますか?

金融機関によって扱いが異なります。現行の建築基準法に適合していないと担保評価が下がり、融資が受けにくくなることがあります。容積率の超過がわずかな場合と、建て替えそのものができない場合では判断も変わるため、1社の回答で決めず複数の金融機関に確認するのが安全です。

既存不適格の建物でも増築はできますか?

できますが、増築に着手すると建築基準法3条2項の適用除外が外れます。自治体の運用資料では、増築部分が既存不適格部分の延べ面積の2分の1を超えると建物全体を現行基準に適合させる必要があると整理されています。規模を決める前に特定行政庁か建築士に確認してください。

検査済証が見つからない場合はどうすればよいですか?

直近の工事についての処分等概要書を特定行政庁に請求できます。国土交通省の既存建築物の現況調査ガイドラインは、これを最初の手順として示しています。

それでも足りない場合は、指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査という方法があります。

この記事のまとめ

  • 既存不適格は建築基準法3条2項で現行基準の適用を除外された建物で、違反建築ではない
  • 原因は容積率・建ぺい率の引き下げ、用途地域の変更、耐震基準や高さ制限の強化など
  • 建築確認の年月日と3つの面積、現在の指定数値を照らし合わせれば大枠の判定ができる
  • 買主の住宅ローンが通りにくいため買い手が絞られ、相場より安くなりやすい
  • 増築が既存不適格部分の1/2を超えると、建物全体を現行基準に合わせることになる
  • 手放し方は「現況で仲介」「是正して仲介」「買取」の3つ。是正費用と価格差を比べて決める

既存不適格だから売れない、という話ではありません。決め手になるのは現況のままいくらで売れるかという数字です。まずは現在の価格を知ることから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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