更地渡しとは?解体費用は売主負担|現況渡しとの違いと買取での比較

更地渡しで売主が負担する解体費用と、固定資産税や3,000万円控除の期限、現況渡しとの違いを解説する記事のイメージ

古い家が建った土地を売りに出したら、不動産会社や買主から「更地渡しでお願いしたい」と言われた——。実家や空き家を手放そうとしている方から、よく聞く場面です。建物を壊してから引き渡すということは分かっても、費用を誰が出すのか、いつまでに壊せばいいのか、税金がどう変わるのかまでは説明されないまま話が進みがちです。

結論から言うと、更地渡しの解体費用は売主負担が原則です。そして費用そのものよりも、解体のタイミングを間違えると固定資産税や3,000万円控除で数十万〜百万円単位の差が出ることのほうが重要です。順番を間違えなければ防げる損ばかりなので、契約書にサインする前に確認してください。

この記事では、更地渡しと現況渡しの違い、解体費用の目安と内訳、税金の3つの落とし穴、手続きの期限、そして解体せずに手放す方法までをまとめます。

この記事を読むとわかること

  • 更地渡しと現況渡し(古家付き)の違いと、費用・リスクの分かれ目
  • 木造30坪の解体費用はいくらか、見積もりに入っていない追加費用3つ
  • 1月1日・1年以内・1か月以内——更地渡しで守るべき3つの期限
  • 解体費用を出さずに手放す方法と、更地渡しと比べる手順

この記事の結論

  1. 更地渡しは売主の費用で解体してから引き渡す契約条件。契約書に書いた時点で、解体は売主の義務になります。
  2. 解体費用の目安は木造30坪(約99㎡)で約110万〜120万円。自治体が補助金の算定に使う単価(1㎡あたり11,000〜12,000円)から逆算した水準です。
  3. 解体時期を誤ると翌年度の固定資産税が上がります。住宅用地特例は1月1日時点の状況で決まるため、年内に壊して年明けに売れ残ると税額が跳ね上がります。
  4. 自宅を壊して土地を売るなら、解体日から1年以内に売買契約を結ばないと3,000万円控除が使えません。解体後に駐車場として貸すのもNGです。
  5. 解体費用が用意できない、期限に間に合わないなら、現況のまま買い取ってもらう選択肢があります。

更地渡しとは?現況渡しとの違いをまず確認する

結論

更地渡しは、売主の費用と責任で建物を解体し、何も建っていない状態で土地を引き渡すという契約条件です。建物を残したまま引き渡す「現況渡し」とは、費用の出どころも、工事中のリスクを負う人も変わります。

更地渡しは「売主の費用で解体してから引き渡す」条件

建物が建っている土地の売買には、大きく2つの進め方があります。売買契約を結んだあとに売主が建物を撤去して更地として引き渡す方法と、売主は現状のまま引き渡して買主が自分の目的に合わせて解体する方法です。前者が更地渡し、後者が現況渡し(現況有姿渡し)です。

重要なのは、更地渡しが法律で決まった取引形態ではなく、契約で決める条件だという点です。「売主の費用負担で、引渡し日までに建物を解体して更地にする」と売買契約書や覚書に書いて初めて成立します。

用語の補足:現況有姿(げんきょうゆうし)渡し

今ある状態のまま引き渡すこと。建物が建っていればそのまま、庭木や物置が残っていればそのままの状態で所有権を移します。解体や片付けは買主が自分の費用で行います。

現況渡し(古家付き)との違いは、手間とリスクを誰が持つか

更地渡しと現況渡しの違いは、単に「誰が解体費用を払うか」だけではありません。解体工事に伴う近隣トラブル、追加費用、工期の遅れも、すべて引き受ける側に回ってくるのが実際のところです。

更地渡しを選ぶと、売主は引渡し日という締切つきで工事を完了させる義務を負います。近隣から騒音や振動の苦情が出れば対応するのも売主です。一方で買主にとっては、すぐに新築の計画を立てられるため土地が売れやすくなるという利点があります。

POINT

更地渡しを求められたときに最初に考えること

  • 解体費用を出したぶん、売買価格は上がっているか(同じなら負担だけ増えている)
  • 解体を済ませる期間が引渡し日までに取れるか(届出や工期で1〜2か月かかる)
  • 手元に解体費用を立て替える資金があるか(売買代金は引渡し時にしか入らない)

更地渡し・現況渡し・買取を3つ並べて比べる

売り方は2択ではありません。不動産会社が直接買主になる「買取」を含めて3つで比べると、判断しやすくなります。

横にスクロールできます

項目 更地渡し 現況渡し(仲介) 現況のまま買取
解体費用 売主が立て替える 買主が負担 買主(買取会社)が負担
売主の手間 業者選定・届出・近隣対応 残置物の片付け程度 ほぼなし
売却価格 更地価格で売れる 解体費用分を値引きされやすい 相場より低くなりやすい
売れるまでの期間 買い手は付きやすいが工期が必要 買い手が限られ長引きやすい 短い
固定資産税のリスク 年をまたぐと特例が外れる 建物がある間は特例が続く 引渡しまで特例が続く

※価格・期間は物件の立地や状態によって変わります。実際の判断は複数社の査定額を比べて行ってください。

この項目のまとめ
  • 更地渡しは法律上の決まりではなく、契約書に書いて成立する条件
  • 費用だけでなく、工期・近隣対応・追加費用のリスクも売主に移る
  • 「更地渡しか現況渡しか」の2択ではなく、買取を含めた3択で考える

更地渡しの解体費用は誰が、いくら負担するのか

結論

更地渡しなら解体費用は売主負担が原則です。目安は木造30坪で約110万〜120万円ですが、残置物・地中埋設物・樹木の処分は見積もりに入っていないことが多く、あとから上振れします。

原則は売主負担。ただし売買価格に織り込まれている

「更地渡し」と契約で定めた以上、解体は売主が果たすべき契約上の義務です。費用は売主が出し、工事の発注も売主が行います。買主が解体費用を別途支払うという形にしたいなら、その旨を契約書に明記しなければなりません。

ただし、売主が損をしているとは限りません。更地のほうが土地は高く売れるからです。買主は解体の手間と費用を考えずに済み、住宅ローンや建築計画も立てやすくなるため、その分が価格に乗ります。判断すべきは「解体費用を払うかどうか」ではなく、解体費用を差し引いた手取りが、現況渡しの手取りを上回るかどうかです。

具体例

更地渡しと現況渡しの手取りを比べる

  • 更地渡しの売買価格:1,500万円/解体費用:120万円
  • → 手取りは 1,380万円(諸費用・税金は別)
  • 現況渡しの売買価格:1,350万円/解体費用:0円
  • → 手取りは 1,350万円

この場合、更地渡しのほうが30万円だけ有利です。差がこの程度なら、工期・近隣対応・追加費用のリスクを考えて現況渡しを選ぶ判断も十分に合理的です。

木造30坪ならいくら?自治体の補助単価から逆算する

解体費用の相場はサイトによって幅があり、どれを信じればよいか分かりにくいものです。そこで、自治体が解体補助金を計算するときに使っている公式の単価を手がかりにすると、現実的な水準が見えてきます。

たとえば宇都宮市の老朽危険空き家除却費補助金は、延べ床面積1㎡あたり11,000円を基準額のひとつとしています。東大阪市の空き家解体費補助では1㎡あたり12,000円です。30坪(約99㎡)に当てはめると、約109万〜119万円という計算になります。

延べ床面積 費用の目安(1㎡11,000〜12,000円)
20坪(約66㎡) 約73万〜79万円
30坪(約99㎡) 約109万〜119万円
40坪(約132㎡) 約145万〜158万円

※自治体が補助金の算定に用いる単価から換算した目安です。木造を前提としており、鉄骨造・鉄筋コンクリート造はこれより高くなります。実際の金額は現地を見た見積もりで決まります。

重機が入れない狭い道路、隣家との距離が近い、前面道路が狭く手壊しになる——こうした条件が重なると、同じ面積でも費用は大きく変わります。空き家の解体費用全般については空き家の解体費用が払えない場合の売却方法で詳しく扱っています。

見積もりに入っていない追加費用3つ

解体業者の見積書は「建物本体の解体・運搬・処分」までしか含まれていないことが珍しくありません。あとから請求されやすいのは次の3つです。

  • 残置物の処分費:家具・家電・布団・食器などが残っている場合。一般廃棄物として別扱いになり、数万〜数十万円かかります
  • 庭木・塀・門扉・物置・カーポートの撤去費:建物本体と別見積もりになりがちです
  • 地中埋設物の撤去費:古い基礎、浄化槽、井戸、以前の建物のガラなど。掘ってみるまで分からず、数十万円単位で上振れします
注意

石綿(アスベスト)は2006年9月に製造・使用が全面禁止されたため、それ以前に着工した建物には含有建材が使われている可能性があります。含有が判明すると除去工事が必要になり、費用も工期も大きく変わります。詳しくはアスベストがある家の解体費用と売却をご覧ください。

この項目のまとめ
  • 解体費用は売主負担だが、その分は売買価格に乗っているはず。手取りで比べる
  • 木造30坪の目安は約110万〜120万円(自治体の補助算定単価から逆算)
  • 残置物・外構・地中埋設物の3つは見積もり外のことが多く、予算に余裕を見る

更地にすると税金はこう変わる|3つの落とし穴

結論

更地渡しで最も損が出やすいのは解体費用そのものではなく税金です。1月1日をまたぐと固定資産税が上がり、解体から1年を過ぎると3,000万円控除が使えなくなります。順番さえ間違えなければ防げる損です。

①住宅用地特例が外れる——1月1日が分かれ目

住宅が建っている土地には、固定資産税の課税標準を下げる「住宅用地の特例」があります。名古屋市の説明によると、1戸あたり200㎡までの小規模住宅用地は課税標準が評価額の6分の1、200㎡を超える部分は3分の1になります。

この判定は1月1日時点の土地の状況で行われます。広島市は、住宅を取り壊すと翌年度から家屋の税はかからなくなる一方で、土地については住宅用地の特例の適用がなくなり税額が上がる場合があると案内しています。つまり12月に解体して年明けに売れ残っていると、その年度の固定資産税が跳ね上がるわけです。

具体例

150㎡・評価額1,200万円の土地で特例が外れると

  • 特例あり:課税標準 1,200万円 × 1/6 = 200万円 → 税額 200万円 × 1.4% = 年28,000円
  • 特例なし:課税標準 1,200万円 → 税額 1,200万円 × 1.4% = 年168,000円
  • → 差額は 年14万円

税率は標準税率1.4%で計算した単純な比較です。実際には負担調整措置があるため上がり方は物件ごとに異なりますが、売れ残る期間が長いほど負担が重くなる点は変わりません。

POINT

解体のタイミングで迷ったら

  • 売りに出す前に先回りして解体しない。買主が決まってから解体する
  • 年末の解体は避ける。どうしても必要なら年明け以降に着工をずらせないか相談する
  • 更地渡しの特約は「引渡し日までに解体」と期限で書き、着工時期は調整できる形にする

なお、空き家を放置して「管理不全空き家」「特定空き家」に指定された場合も同じく特例が外れます。こちらは特定空き家・管理不全空き家の固定資産税6倍とはで解説しています。

②3,000万円控除は「解体から1年以内に契約」が条件

自分が住んでいた家を売るときに使える「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」は、家を壊して土地だけを売る場合にも使えます。ただし条件が厳しく、ここでつまずく人が少なくありません。

国税庁のマイホームを売ったときの特例(No.3302)では、家屋を取り壊した場合、取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を締結すること、かつ住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが要件とされています。さらに、取り壊してから契約の日までに、その土地を貸駐車場などほかの用途に使っていないことも条件です。

  1. 住まなくなった日ここから3年を経過する日の属する年の12月31日までが売却期限
  2. 建物を取り壊した日ここから1年以内に売買契約を結ぶ必要がある
  3. 解体から1年後この日を過ぎて契約すると3,000万円控除が使えなくなる
図:自宅を解体して土地を売るときの2つの期限
注意

「更地にしたほうが売れるだろう」と先に壊し、買い手が見つからないまま1年が過ぎると、3,000万円の控除がまるごと使えなくなります。空いた土地を近所の人に月極駐車場として貸した時点でもアウトです。買主が決まってから解体する順番を守ってください。

相続した空き家の場合は別の制度(相続空き家の3,000万円特別控除)があり、要件も期限も異なります。相続空き家の3,000万円特別控除とはで確認してください。

③解体費用は譲渡費用として差し引ける

ここは売主に有利な話です。国税庁の譲渡費用となるもの(No.3255)では、土地を売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用と、建物の損失額は譲渡費用になるとされています。つまり解体費用は、売却益を計算するときに差し引けます。

具体例

解体費用120万円を譲渡費用に入れた場合の節税額

  • 所有期間5年超(長期譲渡所得)の税率:所得税15%+住民税5%+復興特別所得税で合計20.315%
  • 譲渡所得が120万円減る → 税額は 120万円 × 20.315% = 約24万3,000円減る

領収書や契約書は確定申告まで必ず保管してください。なお、修繕費や固定資産税は譲渡費用には含まれません。

結論

更地渡しで損をするかどうかは、解体費用の金額ではなく解体する順番とタイミングで決まります。「買主を決めてから、引渡し日に間に合うように壊す」が基本の形です。

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更地渡しの手続きと期限|引渡し日から逆算する

結論

解体はすぐには始められません。着工の7日前までに届出が必要で、補助金を使うなら着工前に申請が要るため、引渡し日から逆算して1〜2か月の余裕を見てください。

解体に着手する前に必要な届出は2つ

一定規模以上の解体工事には、法律で定められた事前の届出があります。売主本人が出すものではありませんが、期限があるために工事がすぐ始められないことは知っておく必要があります。

ひとつは建設リサイクル法の届出です。大阪府の案内によると、建築物の解体工事は床面積の合計80㎡以上が対象で、工事着手の7日前までに届け出る必要があります。もうひとつは石綿(アスベスト)の事前調査結果の報告で、港区の案内では解体部分の床面積の合計が80㎡以上であれば、石綿含有建材の有無にかかわらず報告が必要とされています。

  1. 解体業者の選定・見積もり2〜3社から相見積もり。2週間程度
  2. 事前調査・届出石綿事前調査と建設リサイクル法の届出。着工7日前まで
  3. 解体工事木造30坪で2週間前後。天候で前後する
  4. 整地・引渡しここが契約の引渡し日。遅れると債務不履行になる
図:更地渡しで引渡し日までに踏む4つの段階

解体したら1か月以内に建物滅失登記

建物を壊したら、登記簿からその建物を消す手続きが必要です。これを建物滅失登記といいます。法務局の資料によると、不動産登記法第57条では、建物が滅失したときは表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定められています。

この申請を正当な理由なく怠った場合、同法第164条第1項により10万円以下の過料の対象となります。登記が残ったままだと買主への所有権移転にも支障が出るため、解体業者から取壊し証明書を受け取ったら速やかに手続きしてください。

用語の補足:過料(かりょう)

刑事罰ではなく、行政上の秩序を守らせるための制裁金です。前科にはなりませんが、裁判所から通知が届き、支払義務が生じます。

登記まわりで放置されがちな問題としては、増築部分が未登記のままというケースもあります。詳しくは未登記建物(増築未登記)の家は売れる?を参照してください。

補助金は着工前申請。契約を急ぐと使えなくなる

老朽化した空き家の解体には、自治体の補助金を使える場合があります。ただしほぼすべての自治体で「工事着手前の申請」が条件です。

静岡市は、必ず工事着手前に申請すること、交付決定前に着工した工事は補助対象外になることを明示しています。北九州市でも、補助金交付申請を行うには解体工事に着手する前にあらかじめ判定依頼申出書を提出する必要があるとしています。

  • 売買契約を結ぶ前に、物件所在地の自治体に補助制度があるか確認する
  • 申請から交付決定までの期間を確認し、引渡し日に間に合うか逆算する
  • 間に合わないなら、引渡し日を後ろにずらせないか買主と相談する
  • 予算枠に達すると受付が終了する自治体が多いため、早めに窓口に問い合わせる
注意

更地渡しの特約で引渡し日が先に決まってしまうと、補助金の申請期間が取れず数十万円の補助を取り逃がすことがあります。契約前に調べておけば防げる損です。

この項目のまとめ
  • 80㎡以上の解体は着工7日前までの届出が必要で、すぐには始められない
  • 解体後1か月以内に建物滅失登記。怠ると10万円以下の過料の対象
  • 補助金は着工前申請が原則。引渡し日を決める前に自治体に確認する

更地渡しでよくあるトラブルと契約書の確認ポイント

結論

更地渡しのトラブルは「どこまで撤去すれば更地なのか」が契約書に書かれていないことから起きます。地中埋設物・庭木・塀の扱いと、間に合わなかった場合の取り決めを先に決めてください。

引渡し日に解体が終わらない=売主の債務不履行

更地渡しと契約で定めた場合、引渡し日までに更地にすることは売主の契約上の債務です。天候不良や近隣からの苦情で工期が延びても、「間に合いませんでした」では済みません。買主から契約解除や損害賠償を求められる可能性があります。

対策はシンプルで、引渡し日を解体工期より十分に後ろに設定しておくことです。木造30坪で工事自体は2週間前後ですが、届出期間と天候の余裕を含めて、契約から引渡しまで2か月程度は見ておくと安全です。

地中埋設物が出たときの費用負担を先に決める

解体して掘り返すと、古い建物の基礎、使われなくなった浄化槽、埋められた井戸、以前の工事で残されたコンクリートガラなどが出てくることがあります。これが更地渡しで最も揉める論点です。

「更地にして引き渡す」という文言は、埋設物の撤去まで含むと解釈されることがあります。実際、古い建物・工作物・樹木を撤去して引き渡すと定めた事案で、埋設されていた廃棄物の撤去費用まで売主の負担とされた裁判例があります。想定外の数十万円を請求されないためには、契約書で範囲と上限を決めておくことが重要です。

  • 撤去する対象を列挙する(建物本体/基礎/塀・門扉/庭木/物置・カーポート)
  • 地中埋設物が出た場合の費用負担者と、負担の上限額を定める
  • 上限を超えたときは契約を白紙解除できる条項を入れるか検討する
  • 整地のレベル(ガラの除去・転圧・砕石敷きまで行うか)を具体的に書く
  • 解体前の写真と、解体業者の報告書を残しておく

更地にしても契約不適合責任は消えない

建物を壊せば建物の不具合をめぐる責任はなくなりますが、土地についての責任は残ります。地中埋設物や土壌汚染が引渡し後に見つかれば、買主から修補や損害賠償、代金減額を求められることがあります。

用語の補足:契約不適合責任

引き渡したものが契約の内容に合っていないときに、売主が負う責任のこと。2020年の民法改正で、それまでの「瑕疵担保責任」に代わって導入されました。土地の売買では、地中埋設物や土壌汚染などがこの対象になります。

個人が売主の場合、契約不適合責任を免責とする特約を結ぶことは可能です。宅地建物取引業法40条は売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合に限って免責を制限する規定であり、個人同士の売買や、個人が宅建業者に売る場合には適用されません。ただし、売主が知っていながら告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れません。井戸や浄化槽の存在を知っているなら必ず伝えてください。

告知と免責の考え方は建物でも同じ構造です。雨漏りする家は売れる?直さず売る判断と契約不適合責任も参考になります。

この項目のまとめ
  • 引渡し日に間に合わないと債務不履行。工期に2か月程度の余裕を見る
  • 「更地」の範囲(埋設物・庭木・塀・整地レベル)を契約書で具体的に決める
  • 更地にしても土地の契約不適合責任は残る。知っている問題は必ず告知する

更地渡し・現況渡し・買取のどれを選ぶ?判断の分かれ目

結論

立地がよく、解体費用を立て替えられ、引渡しまで余裕があるなら更地渡しが有利です。どれか1つでも欠けるなら、現況のまま買い取ってもらうほうが手取りも確実性も上回ることがあります。

更地渡しを選んだほうがよいケース

更地渡しが向いているのは、解体費用以上に価格が上がることが見込める土地です。住宅需要のある地域で、整形地で、接道も問題ない——そうした土地なら、更地にすることで買い手の幅が一気に広がります。

メリット

  • 買い手の対象が広がり、売れるまでの期間が短くなりやすい
  • 更地価格で売れるため、総額が上がりやすい
  • 解体費用を譲渡費用に計上でき、税負担が軽くなる
  • 老朽建物の倒壊・不法投棄などの管理リスクから解放される

デメリット

  • 解体費用を売買代金の入金前に立て替える必要がある
  • 年をまたぐと住宅用地特例が外れ、固定資産税が上がる
  • 地中埋設物が出ると数十万円単位で費用が膨らむ
  • 引渡し日に間に合わないと債務不履行になる

現況のまま買取に出したほうがよいケース

次のどれかに当てはまるなら、更地渡しにこだわらず、建物を残したまま不動産会社に買い取ってもらうほうが現実的です。

  • 解体費用100万円以上を立て替える資金が手元にない
  • 相続人が複数いて、誰が費用を出すかで話がまとまらない
  • 遠方に住んでいて、業者選定や近隣対応に動けない
  • アスベストや地中埋設物の懸念があり、費用が読めない
  • 再建築不可などの事情があり、更地にしても買い手が限られる

買取では相場より価格が下がる傾向がありますが、解体費用・固定資産税の増加・売れ残る期間のコストを差し引いて比べると、逆転することがあります。土地が売れにくい地域での判断については田舎の家が売れない理由と手放し方も合わせてご覧ください。

よくある質問

更地渡しの解体費用は値引き交渉できますか?

解体費用そのものより、売買価格との合計で考えるのが現実的です。更地渡しを求められたら、現況渡しの場合の価格と、更地渡しの価格から解体費用を引いた手取りを並べて比較してください。差がほとんどないなら、手間とリスクを負わない現況渡しのほうが有利です。

解体してから売りに出すのと、買主が決まってから解体するのはどちらが得ですか?

買主が決まってから解体するほうが安全です。先に解体すると、売れないまま年を越した場合に住宅用地特例が外れて固定資産税が上がり、建物という値引きの余地も失います。

契約時に更地渡しの特約を入れ、引渡しまでに解体する進め方が一般的です。

更地渡しにすると契約不適合責任はなくなりますか?

なくなりません。建物の不具合についての責任は消えますが、土地の地中埋設物や土壌汚染については責任が残ります。更地にしたから安心、とはいきません。

売主が知っている問題は必ず告知したうえで、契約書で責任の範囲と期間を決めておいてください。

解体費用が用意できない場合はどうすればよいですか?

現況のまま買い取ってもらう方法があります。不動産会社が買主になる買取なら、建物を残したままの引渡しに応じてもらえるケースが多く、解体費用を立て替える必要がありません。

手元資金が無い場合は、更地渡しの前にこの選択肢と価格を比べてください。

この記事のまとめ

  • 更地渡しは契約で決める条件。解体費用は売主負担が原則で、その分は売買価格に乗る
  • 木造30坪の解体費用の目安は約110万〜120万円。残置物・外構・地中埋設物は別途かかる
  • 住宅用地特例は1月1日時点で判定。年末の解体と売れ残りが最悪の組み合わせ
  • 自宅を壊して土地を売るなら、解体から1年以内の契約が3,000万円控除の条件
  • 解体費用は譲渡費用になる。長期譲渡なら120万円で約24万円の節税効果
  • 資金・期限・遠方などの事情があるなら、現況のまま買取に出す選択肢を先に比べる

更地渡しを受けるかどうかは、解体費用を引いた手取りが現況のまま売った場合を上回るかで決まります。まずは建物を残したままでいくらになるかを知ることから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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