負動産を手放す5つの方法と費用|国庫帰属・相続放棄・買取の比較

売れない負動産を手放す5つの方法と、国庫帰属・相続放棄・買取にかかる費用を比較して解説する記事のイメージ

使っていない土地や家が、毎年お金だけ持っていく。売ろうとしても買い手がつかない。こういう不動産は「負動産(ふどうさん)」と呼ばれます。

結論から書きます。手放す方法は5つあり、どれが使えるかは「建物が建っているか」でほぼ決まります。国に引き取ってもらう制度は、建物があると申請の段階で却下されます。

この記事では、5つの方法にいくらかかるかを、国税庁・法務省・総務省が公表している金額だけで並べました。持ち続けた場合の費用とも比べられるようにしています。

この記事を読むとわかること

  • 負動産を持ち続けると、1年でいくら出ていくのか
  • 手放す5つの方法と、それぞれにかかる費用
  • 国に引き取ってもらえる土地の条件と、建物があるとどうなるか
  • 相続放棄の期限と、放棄しても残る責任

この記事の結論

  1. 固定資産税(土地や建物に毎年かかる税金)は、市町村が決める評価額の1.4%が目安です。使っていなくてもかかります。
  2. 役所から勧告を受けると、人が住む土地の割引(住宅用地の特例)が外れます。土地の税金は最大6倍になります。
  3. 手放す方法は5つあります。建物が建っている土地は、国に引き取ってもらう制度を申請できません。
  4. 国に引き取ってもらう費用は、審査手数料が土地1筆(登記簿で数える1区画)あたり14,000円、負担金(国が10年分の管理費として受け取るお金)が原則20万円です。合計21万4,000円からになります。
  5. 相続放棄の期限は、相続があったことを知った時から3か月です。プラスの財産もまとめて手放すことになります。

負動産とは?持っているだけでお金が出ていく不動産のこと

結論

自分の土地や家は負動産なのか、気になりますよね。使い道がなく、売っても買い手がつかず、税金と管理の費用だけが出ていく状態なら、負動産と考えてよいです。

不動産は本来、「住む」「貸す」「売る」のどれかで役に立ちます。その3つがどれも成り立たないと、入ってくるお金は0円のまま、支出だけが残ります。親から引き継いだ遠くの土地や、何年も空き家のままの実家がこれに当たります。

用語の補足:負動産

使い道がなく、売ってもお金に変わらない不動産を指す言葉です。毎月の会費だけ払って一度も行かないジムのように、持っているだけで出費が続きます。資産ではなく負担になっているので、「負」の字を当てて負動産と呼びます。法律で決まった言葉ではありません。

負動産は入ってくるお金がなく、税金や管理の費用だけが毎年出ていくことを示した図 負動産はお金が出ていくだけ 入ってくるお金 0円 使っていない 土地・家 毎年出ていくお金 固定資産税 草刈りなどの管理費 火災保険料 使い道がないままでは、支出だけが毎年続きます
図:負動産は収入がゼロのまま、税金・管理費・保険料だけが毎年出ていく

負動産になりやすい3つのパターン

負動産になりやすい不動産には、はっきりした傾向があります。国が土地を引き取る制度(相続土地国庫帰属制度)の申請内容を見ると、その傾向がよく分かります。

法務省の公表によると、令和8年6月30日までの申請5,698件の内訳は、田や畑が2,226件、宅地が1,973件、山林が868件でした。農地と山林が半分以上を占めています。自分では使えず、買い手も見つけにくい土地が集まっている形です。

POINT

負動産になりやすい3つのパターン

  • 遠くにある実家:住む予定がなく、見回りにも交通費がかかる
  • 相続した農地や山林:自分で耕せず、買い手もほとんどいない
  • 古いワンルームや別荘:家賃が下がり、管理費や修繕積立金だけが残る

自分の不動産が負動産かを確かめるチェックリスト

気分ではなく、事実で判断したほうが決めやすくなります。次の5つのうち3つ以上当てはまるなら、手放す方向で考える価値があります。

  • この1年、自分や家族が一度も使っていない
  • 貸す予定がなく、貸せそうな相手も思い当たらない
  • 不動産会社に相談したが、買い手が見つかっていない
  • 固定資産税や管理の費用を、毎年自分の生活費から出している
  • 自分が亡くなったあと、引き継ぎたいと言う家族がいない

5つ目は見落とされがちですが、とても大事です。今の自分が持ちこたえられても、同じ負担が子どもに移るだけなら、問題は先送りになります。

負動産を持ち続けると年間いくらかかる?

結論

放っておくだけならお金はかからない、と思いたいところですが違います。使っていなくても固定資産税は毎年かかり、役所から勧告を受けると土地の税金は最大6倍になります。

固定資産税は評価額の1.4%が目安

固定資産税は、1月1日時点でその不動産を持っている人にかかる税金です。住んでいるかどうかは関係ありません。総務省の資料では、標準税率は評価額の1.4%とされています。

街づくりを進める区域として市町村が指定した区域(市街化区域)の中にある不動産なら、都市計画税も加わります。総務省の資料によると、こちらは上限が0.3%で、課税するかどうかは市町村が条例で決めます。詳しくは総務省の都市計画税の解説ページで確認できます。

ここで、税金を安くしてくれる仕組みが1つあります。人が住む家が建っている土地の税金を軽くする割引です。

用語の補足:住宅用地の特例

人が住む家が建っている土地は、税金の計算のもとになる金額が小さくなります。買い物のレジで会員割引が引かれるのと同じイメージです。国土交通省の資料では、200㎡以下の部分は6分の1、200㎡を超える部分は3分の1になります。この割引を住宅用地の特例といいます。

具体例

土地の評価額600万円・150㎡の空き家だといくら?

  • 前提:土地の固定資産税評価額600万円、面積150㎡、税率1.4%
  • → 割引あり:600万円÷6=100万円が計算のもと。税額は年1万4,000円
  • → 割引なし:600万円がそのまま計算のもと。税額は年8万4,000円

差は年7万円です。10年持ち続ければ70万円の差になります。

区分 計算のもとになる金額 年間の税額
割引あり 100万円(600万円÷6) 1万4,000円
割引なし 600万円 8万4,000円

※土地の評価額600万円・150㎡・税率1.4%で計算した場合。評価額は市町村が決めるため、実際の金額は納税通知書で確認してください

役所から勧告を受けると土地の税金が最大6倍に

この割引は、ずっと続くとは限りません。空き家を放っておくと、役所から名指しで指導され、最後に割引を外されます。

2023年に空家法が改正され、「管理不全空家等」という区分ができました。放っておけば危ない状態になりそうな空き家が対象です。空家法13条をもとに、市町村長が助言・指導をし、それに従わないと勧告に進みます。

国土交通省の空き家対策の解説ページでは、勧告を受けた管理不全空家は住宅用地の特例が解除されると明記されています。割引が外れると、計算のもとが6倍になります。

  1. 助言役所が所有者に連絡する
  2. 指導直すべき点を具体的に示される
  3. 勧告住宅用地の特例が外れる
図:管理不全空家等が勧告を受けて税金の割引を失うまでの流れ
住宅用地の割引が外れると土地の固定資産税が6倍になることを棒で比べた図 割引が外れると税金は6倍 年1万4,000円 割引あり 年8万4,000円 勧告を受けて割引なし 土地の評価額600万円・150㎡で計算した場合
図:住宅用地の特例が外れると、同じ土地でも税額が6倍になる
注意

勧告はある日いきなり来るものではなく、助言・指導の段階があります。役所から連絡が来た時点が、手放すかどうかを決める最後のタイミングです。指定される条件や流れは特定空き家・管理不全空き家の固定資産税6倍とはで詳しく説明しています。

税金のほかに毎年かかるお金

出ていくお金は税金だけではありません。草刈り、見回り、水道や電気の基本料金、火災保険料が積み上がります。遠方なら、行くだけで交通費と時間がかかります。

建物が傷んだまま放置すると、別の心配も出てきます。瓦が落ちて通行人がけがをしたり、塀が崩れて隣の家を傷つけたりすれば、責任は所有者が負います。使っていない不動産でも、管理の責任は持ち主から離れません。

この項目のまとめ
  • 固定資産税は評価額の1.4%が目安。市街化区域なら都市計画税が最高0.3%加わる
  • 勧告を受けると住宅用地の特例が外れ、土地の税金は最大6倍になる
  • 税金以外に管理費・保険料・交通費がかかり、事故が起きれば責任も負う

負動産を手放す5つの方法と費用の比較

結論

どの方法が自分に向いているのか、迷うところです。選べるのは隣地への譲渡・仲介・買取・国への引き取り・相続放棄の5つで、費用も条件もまったく違います。

5つの方法を一覧で比べる

まず全体を並べます。費用の欄は、国や裁判所が公表している金額だけを書きました。

横にスクロールできます

方法 向いているケース かかる費用 注意点
隣の人や親族に売る・譲る 隣地の持ち主が土地を広げたいと考えている 名義を変える登記の費用など 安く譲ると相手に贈与税がかかることがある
不動産会社に仲介してもらう 相場より安くすれば買い手が見つかりそう 売れたときの仲介手数料 売れるまで税金と管理費は出続ける
買取業者に買い取ってもらう 建物が古い、早く手放したい 仲介手数料がかからない場合がある 価格は仲介で売れる場合より低くなりやすい
国に引き取ってもらう 更地の土地で、買い手がまったくつかない 審査手数料1筆14,000円+負担金原則20万円 建物があると申請できない
相続放棄する まだ相続しておらず、ほかの財産も少ない 収入印紙800円+連絡用の郵便切手 期限は3か月。プラスの財産も放棄になる

※審査手数料・負担金は法務省、相続放棄の費用は裁判所の公表情報によります。郵便切手の額は提出先の家庭裁判所によって違います

費用で比べるとどれが現実的か

表を見ると、お金の出方が3つに分かれます。売れればお金が入る方法、お金を払って引き取ってもらう方法、ほとんど費用をかけずに権利を手放す方法です。

負動産を手放すとき、多くの人が最初に驚くのがここです。国に引き取ってもらう方法は、こちらがお金を払う側になります。負担金20万円は、国が10年間その土地を管理する費用に相当する金額として決められています。

結論

どの方法でも、タダで手放せるとは考えないほうがよいです。そのうえで、売れる見込みが少しでもあるなら、お金を払って引き取ってもらうより先に売却を試す価値があります。

分かれ道は「建物があるかどうか」

5つのうちどれを選べるかは、建物が建っているかで大きく変わります。国に引き取ってもらう制度は土地だけが対象で、建物があると申請そのものができません。

建物が建っている場合と更地の場合で、選べる手放し方が分かれることを示した図 建物の有無で選べる方法が変わる 手放したい不動産 建物が建っている 更地(建物がない) ・仲介で売る ・買取で売る ・解体してから国へ ・仲介や買取で売る ・隣の人に売る ・国に引き取ってもらう
図:建物があるかどうかで、選べる手放し方が分かれる
POINT

建物があるときの考え方

  • 解体して国に引き取ってもらうなら、解体費用+21万4,000円が自分の負担になる
  • 建物ごと買い取ってもらえれば、解体の費用はかからない
  • どちらが有利かは、解体費用と買取価格を並べて初めて分かる

解体費用は建物の構造や道路の広さで大きく変わります。金額の目安と、費用が用意できないときの進め方は空き家の解体費用が払えない場合の売却方法にまとめています。

ちょっと一息

その土地や家、今いくらで売れるか知っていますか?

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国に引き取ってもらう制度は本当に使える?

結論

国が引き取ってくれるなら一番楽そうに見えますよね。ただし条件は厳しく、建物が建っている土地は申請の段階で却下されます。

2023年に始まった相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらえる制度です。相続でもらった土地が対象で、自分で買った土地は使えません。

建物が建っていると申請の段階で却下される

法務省の制度の要件のページでは、申請できないケースの最初に「建物がある土地」が挙げられています。あわせて次のような土地も対象外です。

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 他人の利用が予定されている土地
  • 土壌が汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地、所有権に争いがある土地

つまり、建物が残っているうちは申請そのものができません。先に解体して更地にしないと、国は引き取ってくれません。その解体の費用は所有者の負担になります。

注意

境界が決まっていない土地も申請できません。隣の人と境界の話がついていない状態では、国も買主も引き取ってくれないと考えてください。申請の前には、土地のある場所を管轄する法務局の本局への事前相談(予約制)が案内されています。

建物があるまま進める方法と、解体して申請する方法の比べ方は相続土地国庫帰属制度は使えない?建物がある土地の条件と費用・買取で詳しく扱っています。

費用は審査手数料14,000円+負担金20万円から

引き取ってもらうには、2種類のお金を払います。申請のときの審査手数料と、承認されたあとの負担金です。

法務省の資料では、審査手数料は土地1筆(登記簿で数える1区画)につき14,000円です。負担金は10年分の土地管理費相当額として決められています。宅地・農地・森林以外の土地は、面積にかかわらず20万円とされています。

具体例

市街化区域の外にある宅地1筆(更地)の場合

  • 前提:相続した更地1筆、市街化区域や用途地域の外にある
  • → 審査手数料 14,000円+負担金 20万円
  • → 合計は21万4,000円

市街化区域や用途地域(建てられる建物の種類が決められた区域)の中にある宅地は、面積に応じた計算になります。法務省の資料では100㎡で約55万円、1,000㎡で約110万円が例として示されています。

国に土地を引き取ってもらうときの審査手数料と負担金の足し算を示した図 国に引き取ってもらうお金 審査手数料 1筆14,000円 + 負担金(原則) 20万円 = 合計 21万4,000円 市街化区域や用途地域の中にある宅地は、面積に応じた計算になります 建物があるときは、先に解体する費用も別にかかります
図:審査手数料と負担金を合わせた、国に引き取ってもらう最低限の費用

納付の期限も決まっています。法務省の案内では、負担金の通知が届いた翌日から30日以内に日本銀行へ納めます。通知が届いてから1か月弱で用意する必要があるため、金額は申請の前に確かめておいてください。

実際にどれくらい使われているのか

制度の利用状況は法務省が公表しています。令和8年6月30日現在の速報値では、申請が5,698件、国に引き取られたのが2,885件、却下が83件でした。

申請して国に引き取られたのは、件数で見ると半分ほどです。残りは審査中か、途中で取り下げられたものです。申し込めば必ず引き取ってもらえる制度ではない、という前提で考えてください。

  1. 法務局の本局に事前相談する土地のある場所を管轄する本局へ。予約制です
  2. 申請して審査手数料を納める土地1筆につき14,000円を申請時に納付します
  3. 審査を受ける書類の確認に加え、現地の調査も行われます
  4. 承認の通知を受けて負担金を納める通知が届いた翌日から30日以内に日本銀行へ納付します
この項目のまとめ
  • 建物がある土地・境界が決まっていない土地は申請できない
  • 費用は審査手数料1筆14,000円+負担金原則20万円で、合計21万4,000円から
  • 令和8年6月30日現在、申請5,698件に対し国に引き取られたのは2,885件

相続放棄すれば負動産から解放される?

結論

相続放棄をすれば、その不動産を引き継がずに済みます。ただし期限は3か月で、預貯金などプラスの財産もまとめて手放すことになります。

期限は3か月、しかも全部まとめて手放すことになる

相続放棄は、家庭裁判所に申し出て行います。この申し出を「申述」といいます。裁判所の案内では、相続があったことを知った時から3か月以内に手続きをします。

この3か月は「熟慮期間」と呼ばれます。財産を調べても決められないときは、家庭裁判所に申し立てて期間を延ばしてもらえます。くわしくは裁判所の相続の承認又は放棄の期間の伸長のページに載っています。

費用自体は高くありません。裁判所の案内では、申述人1人につき収入印紙800円と、連絡用の郵便切手が必要です。提出先は、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所です。

  1. 相続があったことを知った日ここから3か月を数え始める
  2. 財産を調べる借金・不動産・預貯金をすべて確認する
  3. 3か月の期限放棄するなら家庭裁判所へ申述。間に合わないなら期間の伸長を申し立てる
図:相続放棄の期限と、その前にやるべきこと
注意

いらない土地だけを選んで放棄することはできません。放棄すると、預貯金や自宅などプラスの財産も受け取れなくなります。負動産の負担と、ほかの財産の価値を並べてから決めてください。

放棄しても管理の責任が残る場合がある

放棄すれば終わり、とは言い切れません。民法940条では、放棄した時点でその家を実際に使っていた人には、財産を壊さないように保つ義務が残ります。これを保存義務といい、2023年4月1日からこの形になりました。

どういう状態が「占有」に当たるかは、ケースごとの判断です。国土交通省の資料では、家財や荷物を置いている場合や、家の鍵を持っている場合は占有者に当たる可能性があるとされています。

メリット

  • 費用がほとんどかからない(収入印紙800円+郵便切手)
  • 借金も引き継がずに済む
  • 負動産を相続せずに手を切れる

デメリット

  • 期限が3か月と短い
  • プラスの財産もすべて放棄になる
  • 現に占有していた場合は保存義務が残る

義務から完全に離れるには、相続財産清算人を選んでもらう手続きが必要になることがあります。その費用の目安や、相続して買取で手放す場合との比べ方は相続放棄した空き家の管理義務と費用で説明しています。

売って手放す場合:仲介と買取の違いと売れたときの税金

結論

結局いくらで売れて、税金はいくら引かれるのか。気になるのはそこですよね。売り方は仲介と買取の2つ、税金は所有期間で20.315%か39.63%に分かれます。

仲介と買取はどこが違う?

仲介は、不動産会社に買い手を探してもらう方法です。買取は、不動産会社自身が買い主になる方法です。買い手が誰なのかが、いちばん大きな違いです。

項目 仲介 買取
買い主 一般の個人や法人 不動産会社そのもの
価格 買い手がつけば高くなりやすい 仲介で売れる場合より低くなりやすい
古い建物の扱い 解体や修繕を求められることがある 現況のまま引き取れる場合がある
手数料 売れたときに仲介手数料がかかる 仲介手数料がかからない場合がある

負動産の場合、仲介で何年も売れないままというケースが珍しくありません。その間も税金と管理費は出続けるので、価格の高さより「いつ止まるか」で選ぶ考え方もあります。売れない原因の切り分け方は家が売れない原因と対策にまとめています。

売れて利益が出たときの税金

売れた金額がそのまま手元に残るわけではありません。買ったときより高く売れた場合、その差額に税金がかかります。

用語の補足:譲渡所得

売った値段から、買ったときの値段と売るためにかかった費用を引いた残りのことです。中古車を買った値段より高く売れたときの差額と同じ考え方です。これを税金の世界では譲渡所得といいます。

税率は、持っていた期間で変わります。国税庁の長期譲渡所得の税額の計算のページでは、5年を超えて持っていた場合は所得税15%・住民税5%です。震災の復興のために上乗せされている税金(復興特別所得税)を合わせると、20.315%になります。

5年以下で売った場合は税率が上がります。所得税・復興特別所得税30.63%と住民税9%で、合計39.63%です。期間は売った年の1月1日時点で数えるため、カレンダー上の年数とずれることがあります。

具体例

買った値段がわからない土地を300万円で売った場合

  • 前提:売却価格300万円、買ったときの契約書なし、売るための費用20万円、所有期間は5年超
  • → 買った値段は売却価格の5%=15万円として計算
  • → 利益は300万円−15万円−20万円=265万円
  • → 税額は265万円×20.315%=約53万円

国税庁は、買ったときの値段がわからない場合、売った値段の5%を使えるとしています。書類が残っていないと税金が重くなりやすい点に注意してください。

相続した空き家なら3,000万円の控除が使えることも

相続した空き家を売る場合、税金が安くなる制度があります。条件に合えば、利益から最高3,000万円を引けます。

国税庁の被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例のページでは、おもに次の条件が示されています。

  • 家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
  • 区分所有建物(マンションのように1棟を部屋ごとに登記したもの)でないこと
  • 相続の直前に、亡くなった人以外に住んでいた人がいないこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
POINT

期限は2つある

  • 相続した日から数える期限:3年を経過する日の属する年の12月31日まで
  • 制度自体の期限:国税庁の手引では令和9年12月31日までの譲渡が対象

条件は細かく、建物の状態によって追加の手続きが必要になります。要件の詳細は相続空き家の3,000万円特別控除とはで確認してください。実際に使えるかどうかは、税理士か税務署に確認するのが確実です。

手放す前に確認したい3つの落とし穴

結論

知らないまま進めると、手続きが止まったり余計な税金がかかったりします。名義・贈与税・境界の3つは、動き出す前に確かめてください。

名義が亡くなった人のままだと売れない

亡くなった人の名義のままでは、売る手続きに進めません。名義を相続人に移す手続きを相続登記といいます。これは2024年4月1日から義務になりました。

法務省の相続登記の申請義務化の案内では、相続したことを知った日から3年以内に登記するよう求めています。正当な理由なく放置すると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

施行の前に相続した不動産にも期限があります。令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。期限と手続きの流れは相続登記の義務化とはで解説しています。

タダであげると相手に贈与税がかかることがある

「もらってくれるなら無料でいい」と考える人は多いです。ただ、そこに税金の問題が生まれます。安く譲ると、その差額をもらったものとして扱われる仕組みがあります。

国税庁の低額譲受けの解説ページでは、個人から著しく低い値段で財産を譲り受けた場合、時価との差額が贈与とみなされると説明されています。税金を払うのは、譲り受けた側です。

注意

「著しく低い値段」かどうかは、個々の事案ごとの判定になります。隣の人や親族に安く譲る場合は、先に税務署か税理士に相談してください。好意で渡したのに相手に税金がかかると、関係まで壊れてしまいます。

境界が決まっていないと誰も引き取らない

境界があいまいな土地は、手放すときに必ず引っかかります。国に引き取ってもらう制度では、境界が明らかでない土地は申請できないと定められています。

買主の側も同じ見方をします。どこまでが自分の土地か分からなければ、買ったあとに隣とトラブルになるからです。測量と境界の確認は、売る前に済ませておくほうが話が早く進みます。

この項目のまとめ
  • 相続登記は3年以内が義務。放置すると10万円以下の過料の可能性がある
  • 安く譲ると、譲り受けた相手に贈与税がかかることがある
  • 境界が決まっていない土地は、国にも買主にも引き取ってもらえない

よくある質問

使っていない土地でも固定資産税は払い続けるのですか?

はい。使っているかどうかに関係なく、1月1日時点の所有者に毎年かかります。総務省の資料では標準税率は評価額の1.4%です。

市街化区域の中にあれば、都市計画税が最高0.3%加わることもあります。手放すまで止まらない出費だと考えてください。

建物が建っている土地は国に引き取ってもらえませんか?

引き取ってもらえません。法務省は申請できないケースの最初に「建物がある土地」を挙げています。先に解体して更地にすれば申請はできますが、解体の費用は所有者の負担です。

解体費用と負担金の合計が、買取で手放す場合の手残りと比べてどうかを先に確かめてください。

相続放棄をすれば空き家の管理から完全に解放されますか?

必ずそうなるとは言えません。民法940条では、放棄した時点でその不動産を現に占有していた人に保存義務が残ります。国土交通省の資料では、家財を置いている場合や家の鍵を持っている場合は占有者に当たる可能性があるとされています。

山林や農地も国に引き取ってもらえますか?

引き取ってもらえる場合があります。法務省の公表では、令和8年6月30日現在で国に引き取られた2,885件のうち、農用地が925件、森林が193件ありました。

ただし森林は、面積に応じて負担金が計算されます。宅地より負担金が高くなることもあります。

買った値段がわからない土地を売ると税金はどうなりますか?

国税庁は、買ったときの値段がわからない場合、売った値段の5%を買った値段として計算できるとしています。300万円で売れたなら15万円です。

残りがほぼ利益として扱われるため、税金は高くなりやすい点に注意してください。

この記事のまとめ

  • 負動産とは、使い道がなく売れず、税金と管理費だけが出ていく不動産のこと
  • 固定資産税は評価額の1.4%が目安。勧告を受けると土地の税金は最大6倍になる
  • 手放す方法は5つ。選べるかどうかは建物が建っているかで大きく変わる
  • 国に引き取ってもらう費用は、審査手数料1筆14,000円+負担金原則20万円から
  • 相続放棄は3か月が期限で、プラスの財産もまとめて手放すことになる
  • 手放す前に、名義・贈与税・境界の3つを確認しておく

どの方法を選ぶとしても、判断の出発点は「今いくらで売れるか」です。売れる金額が分かれば、お金を払って引き取ってもらうべきかどうかも見えてきます。まずは現在の価格を確認することから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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