買主が見つかり、不動産会社から「来週、売買契約をしましょう」と連絡が来た。けれど手付金、重要事項説明、契約不適合責任、ローン特約と聞き慣れない言葉が並び、何に気をつければよいのか分からない——初めて家や土地を売る方の多くがこの状態です。
結論から言うと、売主が押さえるべきなのは「いつまでなら解除できるか」「引渡し後に何の責任を負うか」の2点です。手付解除の期限、ローン特約の期日、契約不適合責任の範囲と期間の3つを契約書で確認すれば、契約後のトラブルの大半は防げます。
この記事では、売買契約の流れから必要書類・印紙代まで、法令の条文に沿って売主目線で整理します。
この記事を読むとわかること
- 購入申込みから決済・引渡しまでの売買契約の流れ
- 重要事項説明と売買契約書で売主が確認すべき項目
- 手付金の倍返し・放棄のルールと、解除できなくなるタイミング
- 契約不適合責任の中身と、免責特約でも逃れられないもの
- ローン特約・違約金の仕組みと、契約当日・決済日の必要書類
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 売買契約は購入申込み→重要事項説明→契約締結(手付金の授受)→決済・引渡しの順に進みます。契約内容は宅建業法37条の書面(売買契約書)に残ります。
- 手付解除は、相手方が履行に着手するまでが原則です。売主から解除するには受け取った手付金の倍額を現実に提供する必要があり、手付金300万円なら600万円です。
- 契約不適合責任は、買主が不適合を知ってから1年以内に通知すれば追及できるのが民法の原則です。免責特約を結んでも、知りながら告げなかった事実の責任は免れません。
- ローン特約は、買主の融資が通らなかったときに契約を白紙に戻す条項です。融資承認の期日と金額を必ず確認してください。
- 契約書の印紙代は軽減措置により、契約金額1,000万円超5,000万円以下で1万円です(2027年3月31日までに作成された契約書)。
不動産売買契約の流れ|申込みから引渡しまで
売買契約は、購入申込み、重要事項説明、契約締結、決済・引渡しの4段階で進みます。お金と権利が動くのは「契約締結」と「決済・引渡し」の2回です。
不動産の売買では、契約を結んだ日に代金全額を受け取るわけではありません。契約日に手付金を受け取り、残代金は後日の決済日に受け取って、同じ日に鍵を渡し所有権移転登記を申請するのが通常の進め方です。
売買契約は4つの段階で進む
買主が見つかると、まず購入申込書(買付証明書)が出され、価格や引渡し時期の条件を調整します。条件がまとまると、仲介会社の宅地建物取引士が買主に重要事項説明を行い、そのうえで売買契約を結びます。
- 購入申込み価格・引渡し時期などの条件を調整
- 重要事項説明契約前に宅建士が買主へ書面で説明
- 売買契約の締結署名・押印、手付金の受領。ここから解除にお金がかかる
- 決済・引渡し残代金の受領、鍵の引渡し、登記申請
購入申込みの段階では、まだ契約は成立していません。契約締結の後は、解除に手付金や違約金がかかるため、条件の見直しは契約前に済ませておくのが鉄則です。
契約当日に行うこと
契約当日は、売主・買主・仲介会社が集まり、契約書の読み合わせ、署名・押印、収入印紙の貼付、手付金の授受を行います。重要事項説明を同じ日の契約直前に行うケースもあります。
- 契約書の売買代金・手付金額・残代金の支払日が合意どおりか
- 引渡し日と所有権移転登記の申請時期が書かれているか
- 手付解除の期限、ローン特約の期日、違約金の額
- 契約不適合責任の範囲と期間(免責の有無)
- 付帯設備表・物件状況報告書(告知書)の記載に漏れがないか
売買契約書に書かれる主な項目
仲介会社は、契約が成立したら遅滞なく、宅建業法37条が定める事項を記載した書面を当事者に交付する義務があります。この書面が実務上の売買契約書で、相手方の承諾があれば電磁的方法(電子契約)でも提供できます(e-Gov法令検索 宅地建物取引業法)。
| 37条書面の記載事項 | 売主が見るポイント |
|---|---|
| 代金の額・支払時期・方法 | 手付金・中間金・残代金の内訳と日付 |
| 引渡しの時期・移転登記の申請時期 | 住み替え先や残債完済の段取りと合うか |
| 契約の解除に関する定め | 手付解除の期限、ローン特約 |
| 損害賠償額の予定・違約金 | 違約金の額(代金の何%か) |
| 契約不適合責任に関する定め | 責任を負う範囲・期間、免責の有無 |
| 租税その他の公課の負担 | 固定資産税などの精算方法 |
※宅地建物取引業法37条1項の記載事項から、売主に関係の深いものを抜粋
引渡し前の災害に備える「危険負担」の定め
契約から引渡しまでの間に、地震や台風、もらい火など、売主にも買主にも責任のない事情で建物が壊れることがあります。民法では、このように双方の責任でない理由で引き渡せなくなったとき、買主は代金の支払いを拒むことができます(民法536条1項)。反対に、引渡しを受けた後に同じ理由で壊れた場合は、買主は修補や代金減額、解除を求められず、代金の支払いも拒めません(民法567条1項、e-Gov法令検索 民法)。
つまり、引渡しまでの災害のリスクは基本的に売主側にあるということです。37条書面には「天災その他不可抗力による損害の負担」の定めがあればその内容も記載されるため、契約書の該当条項(修復して引き渡すのか、解除できるのか、手付金をどう扱うのか)を確認しておきましょう。契約から引渡しまで期間が空く場合は、引渡し日まで火災保険を続けておくと安心です。
重要事項説明|売主も中身を確認しておく
重要事項説明は、契約成立前に宅建士が買主に書面で行う説明です。説明の材料は売主の情報なので、売主も事前に案を見て、伝えた内容と食い違いがないか確認しておきましょう。
重要事項説明は「重説(じゅうせつ)」とも呼ばれます。買主が物件の権利関係や法令上の制限、契約条件を理解したうえで契約するための手続きで、宅建業法35条に定められています。
契約前に宅建士が書面で説明する
宅建業法35条は、宅建業者に対し、物件を取得しようとする相手方に契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして書面を交付して説明させることを義務づけています。説明の時期は「契約前」であり、契約後に説明しても義務を果たしたことになりません。
宅建業法に基づく資格で、重要事項説明や契約書面への記名を担当します。重要事項説明は、宅建士でない社員が代わりに行うことはできません。
説明される主な項目
説明される項目は、登記された権利の種類や内容、都市計画法・建築基準法などの制限、私道の負担、上下水道・電気・ガスの整備状況などです。マンションなら敷地の権利や管理規約の内容も含まれます。
中古住宅では、建物状況調査(インスペクション)を実施したかどうかとその結果の概要、設計図書や点検記録の保存状況も説明事項です。さらに契約の解除、違約金、ローン(金銭の貸借のあっせん)が成立しないときの措置など、契約条件そのものも説明されます。
売主が伝えた情報との食い違いを防ぐ
重要事項説明書は、仲介会社が登記記録や役所調査に加え、売主から聞き取った情報をもとに作ります。雨漏りの履歴、境界のあいまいさ、近隣とのトラブルなどを売主が伝えていなければ、説明書にも契約書にも載りません。
重要事項説明の前に売主がやること
- 物件状況報告書(告知書)に、知っている不具合をすべて書く
- 重要事項説明書の案を事前にもらい、告知した内容が反映されているか確認する
- 増築部分の未登記や検査済証の有無など、権利・法令の論点を仲介会社と共有しておく
ここで伝えた内容は、後で触れる契約不適合責任の範囲を左右します。知っている不具合を書いておくことが、そのまま売主を守ることにつながります。
手付金と手付解除|放棄と倍返しのルール
買主は手付金を放棄すれば、売主は手付金の倍額を現実に提供すれば、契約を解除できます。ただし相手方が履行に着手した後は、手付による解除はできません。
手付金は、契約締結時に買主から売主へ支払われるお金で、決済時には売買代金の一部に充てるのが一般的です。その最大の役割は「一定の金額を負担すれば契約をやめられる」という解約手付としての機能です。
手付解除の基本は民法557条
民法557条は、買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して契約を解除できると定めています(e-Gov法令検索 民法)。手付による解除では、同条2項により別途の損害賠償は請求できません。
売主側から見ると、受け取った手付金を返すだけでは足りず、同じ額を上乗せして支払う必要があります。「倍返し」は口頭の申し出ではなく、現実に提供することが要件です。
3,000万円の売買で、手付金を代金の1割(300万円)とした場合
- 買主が手付解除する → 支払った300万円を放棄(売主は300万円を受け取ったまま)
- 売主が手付解除する → 受領済みの300万円に300万円を上乗せし、合計600万円を買主に提供
- → どちらから解除しても、解除する側の実質的な負担は300万円
「もっと高く買いたい人が現れた」という理由で売主が解除する場合も、この負担を差し引いて得になるかを考える必要があります。
解除できるのは相手方が履行に着手するまで
民法557条のただし書は、相手方が契約の履行に着手した後は手付解除ができないとしています。判例では、履行の着手とは、客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部をしたり、履行の提供に欠かせない前提行為をしたりした場合とされています。
制限されるのは「相手方」の着手です。自分だけが準備を進めていても、相手方が着手していなければ手付解除の余地は残ります。売主による抵当権の抹消や、買主による中間金の支払いが着手と判断されることがあり、境目は個別の事情で変わります。
実務の売買契約書では、「契約締結日から○日まで」のように手付解除の期限を別に定めることが多くあります。期限の書き方と、相手方の着手との関係は契約書の条文で確認してください。
売主が宅建業者のときの2割の上限
宅建業法39条は、宅建業者が自ら売主となる売買で、代金の10分の2を超える手付を受け取ることを禁じています。手付の性質にかかわらず解約手付として扱われ、買主に不利な特約は無効です。
この規制は、プロである業者から一般の人が買う場面を守るものです。個人が売主の場合や、個人が業者に売る買取の場合には、この2割の上限は直接は適用されません。また同法78条2項により、宅建業者どうしの取引にも適用されません。
- 買主は手付を放棄、売主は倍額を現実に提供すれば解除できる
- 相手方が履行に着手した後や、契約書の手付解除期限を過ぎた後はできない
- 2割上限は「宅建業者が売主」の取引だけの規制
契約不適合責任と免責特約
引き渡した物件が契約の内容に合わないとき、売主は修補や代金減額などの責任を負います。免責特約を結んでも、知りながら告げなかった不具合の責任は残ります。
契約不適合責任は、2020年4月1日施行の改正民法で、従来の「瑕疵担保責任」に代わって整理された売主の責任です(法務省 民法改正のパンフレット)。「隠れた瑕疵」かどうかではなく、契約で約束した内容に合っているかで判断されます。
買主ができる4つの請求
引き渡した物件が種類・品質・数量について契約の内容に適合しない場合、買主は民法562条〜564条に基づいて次の請求ができます。たとえば「雨漏りなし」として売った家で雨漏りが見つかれば、修補を求められる可能性があります。
| 買主の請求 | 内容 |
|---|---|
| 追完請求(562条) | 修補など、契約どおりの状態にするよう求める |
| 代金減額請求(563条) | 相当の期間を定めて催告しても追完されないとき、不適合の程度に応じて減額を求める |
| 損害賠償請求(564条・415条) | 不適合によって生じた損害の賠償を求める |
| 契約解除(564条・541条・542条) | 催告しても履行されないときなどに契約を解除する |
代金減額は、追完が不能なときや売主が追完を明確に拒んだときは、催告なしで請求できます。雨漏りがある家の告知の範囲については、雨漏りする家の売却と契約不適合責任の記事で詳しく解説しています。
通知の期間は「知った時から1年」
民法566条により、種類・品質の不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、追完・減額・損害賠償・解除のいずれも請求できなくなります。ただし売主が引渡し時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかったときは、この制限はかかりません。
この1年は「引渡しから1年」ではない点に注意が必要です。引渡しから何年も経ってから不具合を知った買主も、そこから1年以内に通知すれば請求できる余地があります。そのため個人間の売買では、契約書で責任を負う期間を「引渡しから○か月」などに区切ることが一般的に行われています。
免責特約でも免れない責任
個人が売主の場合、契約不適合責任を負わないとする免責特約や、期間を短くする特約を結ぶことができます。ただし民法572条は、免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。
一方、宅建業者が売主の場合は宅建業法40条により、通知期間を引渡しから2年以上とする特約を除き、民法より買主に不利な特約はできません。業者から買う場面の規制なので、個人が売主となる仲介や買取には直接は関係しません。
契約不適合責任から売主を守る一番の方法は、知っている不具合をすべて告知し、契約書に書き込むことです。告知した内容は「契約の内容」になり、後から不適合を主張されにくくなります。
契約の前に、その不動産がいくらで売れるか知っていますか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
売却するか決めていなくても大丈夫です。
簡単入力60秒・無料。売却ナビットが代わって相談・交渉を行うので、沢山の営業電話の心配はありません。
ローン特約|買主の融資が通らなかったとき
ローン特約は、買主の住宅ローンが承認されなかったときに契約を白紙に戻す条項です。解除されると売主は手付金を返し、違約金も受け取れません。
買主の多くは住宅ローンを使うため、契約時点ではまだ融資が確定していません。ローン特約(融資特約)は、融資が下りないまま残代金を払えずに違約となる事態から買主を守るための条項です。宅建業法も、ローンのあっせんがある場合に「金銭の貸借が成立しないときの措置」を重要事項説明と契約書面に記載するよう求めています。
ローン特約による解除は手付金も返す
ローン特約で契約が解除されると、契約は最初からなかった状態に戻るのが通常の定め方です。売主は受け取った手付金を買主に返還し、違約金も請求できません。民法545条の原状回復と同じく、受け取ったものを相手に戻すことになります。
売主にとっては、契約から数週間たってから振り出しに戻るリスクがあるということです。次の買主探しに使える時間が減るため、住み替えや資金計画の日程に余裕を持たせておく必要があります。
- 契約締結・手付金の受領買主が金融機関に本審査を申し込む
- 手付解除の期限この日以降は手付放棄・倍返しによる解除ができない定めが多い
- 融資承認の取得期日承認が出なければローン特約で白紙解除
- 決済・引渡し融資実行と同時に残代金を受領
売主が確認すべき期日と条件
ローン特約の条文があいまいだと、「どこまで融資が下りなければ解除できるのか」で揉めます。契約書では、融資を申し込む金融機関、借入予定額、融資承認の取得期日、解除の方法が具体的に書かれているかを確認してください。
- 融資承認の取得期日が、手付解除の期限や引渡し日と矛盾していないか
- 借入予定額と申込先の金融機関が特定されているか
- 買主が審査に必要な書類を出さないなど、買主側の事情で否決された場合の扱い
- 期日までに承認が出ない場合、自動で解除になるのか、買主の申し出が必要なのか
検査済証がない家や旧耐震基準の家は、買主のローン審査が通りにくいことがあります。物件の事情でローン特約による解除が心配な場合は、検査済証がない家の売却の記事も参考にしてください。
契約解除と違約金
解除には手付解除、ローン特約による解除、契約違反による解除などがあり、お金の動きがまったく違います。違約金は契約書で決めた額が損害賠償額の予定として扱われるのが原則です。
「契約をやめる」といっても、どの条項に基づく解除かで、手付金が戻るのか、違約金を払うのかが決まります。契約書を読むときは、解除の種類ごとにお金がどう動くかを整理しておくと迷いません。
解除の種類とお金の動き
横にスクロールできます
| 解除の種類 | できる時期 | 売主から見たお金の動き | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 手付解除 | 相手方の履行の着手前・手付解除期限まで | 買主解除なら手付金を受け取ったまま、売主解除なら倍額を提供 | 民法557条・契約書 |
| ローン特約による解除 | 融資承認の取得期日まで | 手付金を返還、違約金はなし | 契約書の特約 |
| 契約違反(債務不履行)による解除 | 催告しても履行されないとき | 違反した側が違約金を支払う | 民法541条・420条・契約書 |
| 合意解除 | 双方が合意したとき | 合意した内容による | 当事者の合意 |
※実際の扱いは売買契約書の条文で決まります。上の表は一般的な整理です。
違約金は「賠償額の予定」と推定される
民法420条は、当事者が債務不履行による損害賠償の額をあらかじめ決めておけること、そして違約金は賠償額の予定と推定することを定めています。実際の損害額を一つずつ証明しなくても、契約書で決めた違約金を請求できるということです。
宅建業者が売主の場合は、宅建業法38条により、損害賠償額の予定と違約金の合計が代金の10分の2を超える定めはできず、超えた部分は無効です。個人が売主の売買では法律上の上限はないため、契約書の金額をそのまま確認する必要があります。
3,000万円の売買で、違約金を「代金の10%」と定めた場合
- 売主が引渡し日に引き渡せず、催告後も履行しないまま契約を解除された
- → 売主は違約金として300万円を支払い、受け取っていた手付金も返還する
- 参考:宅建業者が売主なら、違約金等の上限は代金の2割=600万円
違約金の割合は契約ごとに決めるものです。自分の契約書に何%と書かれているかを確認してください。
契約違反で解除するときの手順
相手方が残代金を払わない、期日に引き渡さないといった場合、いきなり解除するのではなく、民法541条に沿って相当の期間を定めて履行を催告し、それでも履行されないときに解除するのが原則です。不履行が軽微な場合は解除できないこともあります。
- 契約書の条文を確認する違約解除の条件、催告期間、違約金の額を確認します。
- 期間を定めて履行を催告する証拠が残るよう、内容証明郵便などの書面で行うのが一般的です。
- 期間内に履行がなければ解除を通知する解除の意思表示を相手方に伝え、違約金の精算に進みます。
違約金の請求が争いになりそうなときは、仲介会社だけで抱え込まず、早めに弁護士へ相談してください。
売主の必要書類と費用|契約日と決済日
契約日には本人確認書類と印鑑、決済日には登記識別情報(権利証)と印鑑証明書が中心です。登記に使う印鑑証明書は作成後3か月以内のものが必要です。
必要書類は「契約日」と「決済・引渡し日」で分かれます。直前になって登記識別情報が見つからない、住所が登記簿と違うといった問題が出ると決済が遅れるため、契約前に一度そろっているか確認しておきましょう。
契約当日に用意するもの
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 実印または認印(仲介会社の指示に従う)
- 契約書に貼る収入印紙(売主保管分)
- 物件状況報告書(告知書)・付帯設備表
- 建築確認済証・検査済証、管理規約など物件の資料(あれば)
物件が共有名義の場合は、共有者全員が契約当事者になります。共有者が当日来られないときは委任状などが必要になるので、早めに仲介会社に伝えてください。
決済・引渡し日に必要な登記書類
決済日には、売主から買主への所有権移転登記を申請します。不動産登記法22条により、売主(登記義務者)の登記識別情報を提供するのが原則です。登記識別情報が導入される前に取得した物件では、登記済証(権利証)がこれに当たります。
登記名義人になったときに法務局から通知される、英数字を組み合わせた符号です。売却の登記で「本当の所有者が申請している」ことを確認するために使います。
登記を司法書士に依頼するときは委任状に実印を押し、印鑑証明書を添付します。不動産登記令18条3項により、この印鑑証明書は作成後3か月以内のものに限られます。登記識別情報を紛失した場合は、登記官からの事前通知(不動産登記法23条)や資格者による本人確認情報で代える方法があります。
登記簿上の住所と今の住所が違う場合は、所有権移転の前に住所変更登記が必要です。2026年4月1日からは、住所変更の登記が変更から2年以内の義務になっています(法務省 住所等変更登記の義務化)。
住宅ローンが残っている物件は、決済日に抵当権の抹消登記も同時に行います。残債が売却額を上回る場合の進め方はオーバーローン売却の記事を参照してください。
印紙代と固定資産税の精算
不動産の売買契約書は印紙税の課税文書です。平成26年4月1日から令和9年(2027年)3月31日までに作成される契約書には、税額の軽減措置があります(国税庁 No.7108 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置)。
| 契約書に記載された契約金額 | 軽減後の印紙税額 |
|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5千円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 3万円 |
※国税庁 No.7108 から主な金額帯を抜粋。2027年3月31日までに作成される契約書が対象
3,000万円の家の売買契約書の場合
- 契約金額3,000万円は「1,000万円超〜5,000万円以下」に当たる
- → 軽減後の印紙税額は1万円
売主用・買主用に契約書を2通作る場合は、それぞれの契約書に印紙を貼る必要があります(1通1万円×2通)。誰がどの分を負担するかを事前に決めておきます。
固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者に1年分が課税されます(地方税法359条)。年の途中で売っても納税義務者は売主のままなので、引渡し日以降の分を買主と精算する方法を、契約書の「公租公課の負担」の条項で決めておきます。売却益が出た場合の税金は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の記事で確認できます。
買取で売る場合、契約の何が変わるか
不動産会社に直接売る「買取」では、買主のローン審査を待つ必要がないことが多く、契約不適合責任の免責を条件に交渉しやすいのが特徴です。その代わり、売却価格は仲介より低くなる傾向があります。
ここまでの論点は、主に個人の買主が住宅ローンを使って買う「仲介」を前提にしています。買主が不動産会社になる買取では、同じ売買契約でも気をつけるポイントの重みが変わります。
ローン特約や手付解除の不安が小さくなる
買取業者が自己資金などで購入する場合、ローン特約を付けないことが多く、融資が下りずに白紙解除になる心配がありません。引渡し時期も売主の都合に合わせて調整しやすく、住み替えや相続税の納付など期限がある売却で計画を立てやすくなります。
また、業者は物件の状態を前提に価格を決めるため、現況のまま・契約不適合責任を負わない条件で契約できるかを交渉する余地があります。古い家や雨漏り、未登記部分がある家など、引渡し後の責任が心配な物件では大きな違いです。
仲介と買取のメリット・デメリット
買取のメリット
- 買主のローン審査を待たないため、白紙解除のリスクが小さい
- 契約不適合責任の免責を条件に交渉しやすい
- 引渡し時期を売主の都合に合わせやすい
買取のデメリット
- 売却価格は仲介で売るより低くなる傾向がある
- 業者ごとに価格や条件の差が大きく、比較しないと判断できない
- 免責などの条件は業者との交渉次第で、必ず付くとは限らない
どちらが向いているかは、物件の状態と、いつまでに売りたいかで決まります。仲介での相場と買取での価格・条件を並べて比べてから、契約の形を選ぶのが確実です。
よくある質問
売買契約の後に、売主の都合でキャンセルできますか?
買主が履行に着手する前で、契約書の手付解除期限内であれば、受け取った手付金の倍額を現実に提供して解除できます。手付金300万円なら600万円の提供が必要です。期限を過ぎた後や買主が着手した後は手付解除ができず、契約違反として違約金の対象になるのが通常です。
契約不適合責任はいつまで負うのですか?
民法では、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、原則として責任を追及できなくなります。ただし売主が引渡し時に不適合を知っていた場合などは除かれます。
個人が売主の売買では、特約で期間を短くしたり免責にしたりできますが、知りながら告げなかった事実は免責されません。
重要事項説明は売主も受けるのですか?
宅建業法35条で説明を受けるのは、物件を取得しようとする買主側です。ただし説明の中身は売主が伝えた物件情報をもとに作られるため、売主も事前に重要事項説明書の案を見て、告知した内容と食い違いがないか確認しておくと安心です。
売買契約書に貼る印紙代はいくらですか?
2027年3月31日までに作成される不動産の売買契約書には軽減措置があり、契約金額500万円超1,000万円以下で5千円、1,000万円超5,000万円以下で1万円、5,000万円超1億円以下で3万円です。
この記事のまとめ
- 売買契約は購入申込み→重要事項説明→契約締結→決済・引渡しの順に進む
- 手付解除は、買主は放棄・売主は倍額の提供で可能。相手方の履行の着手後はできない
- 契約不適合責任は「知った時から1年以内の通知」が原則。知りながら告げない不具合は免責されない
- ローン特約で解除されたら手付金は返還。期日・金額・金融機関を確認する
- 違約金は賠償額の予定と推定される。契約書の割合を必ず確認する
- 決済には登記識別情報と作成後3か月以内の印鑑証明書が必要
売買契約の条件は、売却価格と同じくらい手残りと安心を左右します。仲介か買取かを決める前に、まずは複数社の査定で現在の価格と条件を比べてみてください。