家や土地を売ろうと考えたとき、最初に浮かぶのは「何から始めればいいのか」「いつまでにお金が入るのか」という疑問ではないでしょうか。住み替えの時期、ローンの返済、相続した実家の維持費など、売却の期限が決まっている方ほど全体のスケジュールが気になるはずです。
結論から言うと、不動産売却は査定→媒介契約→販売活動→売買契約→決済・引渡し→確定申告の6ステップで進みます。このうち最も長いのが販売活動で、首都圏の統計では売り出しから成約まで平均83〜100日かかっています。
逆に言えば、販売期間を短くする手を打てば全体も短くなります。各ステップで「何をするか」「どれくらいかかるか」「どこでつまずきやすいか」を順に見ていきましょう。
この記事を読むとわかること
- 不動産売却の6ステップと、ステップごとにやること
- 販売期間の平均日数(中古マンション・戸建て・土地)
- 3種類の媒介契約の違いと、期間3か月の意味
- 仲介手数料・印紙税・譲渡所得税の計算例
- 売却期間を短くする方法と、買取という選択肢
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 流れは査定・媒介契約・販売活動・売買契約・決済引渡し・確定申告の6ステップ。お金が入るのは売買契約時の手付金と、決済日の残代金です。
- 販売活動の期間は、2025年度の首都圏で中古マンション平均82.6日、中古戸建て100.1日、土地89.7日(レインズ登録から成約まで)。
- 専任媒介・専属専任媒介の有効期間は最長3か月。更新は売主の申出があるときに限られ、3か月ごとに売り方を見直せます。
- 利益が出たら、引き渡した年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告。マイホームの3,000万円控除は、税金がゼロでも申告が必要です。
- 早く売る鍵は「相場に合った価格」「書類の事前準備」「不具合の正直な告知」。期限が迫っているなら、買主探しが不要な買取も比べておきましょう。
不動産売却の流れは6ステップ|全体像と期間
不動産売却は査定から確定申告までの6ステップで進みます。期間を大きく左右するのは販売活動で、それ以外は手続きの段取り次第で短くできます。
不動産の売却は、多くの場合、不動産会社に仲介(媒介)を頼んで買主を探してもらう形で進みます。売主がやることは意外と多く、査定の比較、契約の種類選び、内覧対応、契約条件の交渉、引越し、税金の申告まで続きます。
まずは全体の地図を頭に入れておくと、「今どこにいて、あと何が残っているか」が分かり、焦って不利な判断をすることを防げます。
国土交通省が示す売却の手順
国土交通省が媒介契約の際に売主へ渡す説明資料では、売却の手順を物件調査→価格査定→媒介契約の締結→売買の相手方の探索→相手方との交渉→売買契約の締結→決済・引渡しの順に示しています。不動産会社に任せるのは、通常この範囲です。
この記事では、売主の目線でこれを6つにまとめ、売却後に必要な確定申告までを含めて解説します。
- 査定・媒介契約STEP1〜2:売り出し価格と依頼先を決める
- 販売活動STEP3:平均83〜100日。最も長い
- 売買契約STEP4:手付金を受け取る
- 決済・引渡しSTEP5:残代金を受け取り鍵を渡す
- 確定申告STEP6:翌年2月16日〜3月15日
ステップごとの期間の目安
各ステップにかかる期間は、法律で上限が決まっているもの、統計で平均が分かるもの、当事者の合意で決めるものに分かれます。下の表で、それぞれの期間がどう決まるかを確認してください。
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| ステップ | 主にやること | 期間の目安・決まり方 |
|---|---|---|
| STEP1 査定 | 相場の把握、複数社の査定額と根拠の比較 | 依頼先を決めるまで。比較する社数と訪問査定の日程次第 |
| STEP2 媒介契約 | 契約の種類と売り出し価格を決める | 専任・専属専任は有効期間が最長3か月 |
| STEP3 販売活動 | レインズ登録、広告、内覧、購入申込み | 首都圏の平均で83〜100日(2025年度) |
| STEP4 売買契約 | 条件交渉、契約書の締結、手付金の受領 | 購入申込み後、条件がまとまり次第 |
| STEP5 決済・引渡し | 残代金の受領、ローン完済と抵当権抹消、鍵の引渡し | 決済日は売買契約で決める。買主が住宅ローンを使う場合は審査や融資手続きの期間を見込む |
| STEP6 確定申告 | 譲渡所得の計算、特例の適用 | 売った年の翌年2月16日〜3月15日 |
※販売期間は東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年度)」の、登録から成約に至る日数(中古マンション・中古戸建住宅・土地)。地域や物件で大きく変わります。
- 売却は査定から確定申告まで6ステップで進む
- 最も長いのは販売活動で、首都圏平均は約3か月
- 決済日は契約で決めるため、引越し時期と合わせて交渉できる
STEP1〜2 査定と媒介契約|3種類の契約の違い
査定は複数社に依頼し、金額よりも「根拠」を比べます。媒介契約は3種類あり、専任・専属専任は有効期間が最長3か月で、報告義務やレインズ登録義務があるのが特徴です。
査定額はあくまで「このくらいで売れそう」という不動産会社の意見で、その金額で売れる保証ではありません。高い査定額を出した会社を選んだ結果、売れ残って値下げを重ね、かえって売却期間が延びることもあります。
査定は複数社に依頼し、根拠を聞く
査定には、所在地や面積などのデータから概算を出す机上査定と、担当者が現地で建物の状態や周辺環境を確認する訪問査定があります。売却を本格的に考えているなら、最終的には訪問査定を受けて比べるのが確実です。
宅地建物取引業法では、不動産会社が売り出し価格について意見を述べるときはその根拠を明らかにしなければならないと定めています(宅地建物取引業法第34条の2第2項)。周辺の成約事例や、価格に影響した物件の長所・短所を具体的に説明してもらいましょう。
- 査定額の根拠になった成約事例(時期・広さ・価格)
- 想定している販売期間と、売れなかった場合の価格見直しの考え方
- どの媒介契約を勧めるか、その理由
- 建物の不具合や書類の不足など、売却で問題になりそうな点
一般・専任・専属専任の違い
売却を任せる会社が決まったら、媒介契約を結びます。契約は一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3種類で、複数社に頼めるか、自分で見つけた買主と直接契約できるか、不動産会社の義務がどこまであるかが違います。
国土交通大臣が指定した不動産の情報ネットワークです。ここに登録された物件は全国の不動産会社が検索できるため、買主を広く探せます。
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| 項目 | 一般媒介 | 専任媒介 | 専属専任媒介 |
|---|---|---|---|
| 複数社への依頼 | できる | できない | できない |
| 自分で見つけた買主との契約 | できる | できる | できない |
| 有効期間 | 法律上の上限なし | 3か月以内 | 3か月以内 |
| レインズへの登録 | 義務なし | 契約から7日以内(休業日を除く) | 契約から5日以内(休業日を除く) |
| 売主への業務報告 | 申込みがあれば遅滞なく | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
※宅地建物取引業法第34条の2、同法施行規則第15条の10、国土交通省の標準専任媒介契約約款による。購入申込みがあったときの報告は、どの契約でも義務です。
有効期間3か月と更新のルール
専任媒介と専属専任媒介の有効期間は3か月を超えられず、長い期間を定めても3か月に短縮されます。更新できるのは売主から申し出たときだけで、これに反する特約(自動更新など)は無効です。
つまり3か月ごとに「この会社に任せ続けるか」「価格や契約の種類を変えるか」を判断する区切りがあります。前の章で見た平均販売期間とほぼ重なるため、最初の3か月で成約しなければ売り方を見直すという計画が立てやすくなります。
契約の選び方の目安
- 報告をこまめに受けて二人三脚で進めたいなら、専任媒介か専属専任媒介
- 人気エリアで複数社に競わせたいなら一般媒介。ただし窓口が増える分、管理の手間がかかる
- 親族や知人が買う可能性があるなら、自己発見取引ができない専属専任媒介は避ける
STEP3 販売活動|成約までの平均日数
販売活動は売却の中で最も長いステップです。2025年度の首都圏では、レインズ登録から成約まで中古マンション82.6日、中古戸建て100.1日でした。
媒介契約を結ぶと、不動産会社はレインズへの登録、ポータルサイトへの掲載、チラシなどで買主を探します。売主は内覧への対応と、届いた購入申込みの条件を検討する役割を担います。
レインズ登録から成約まで平均83〜100日
東日本不動産流通機構の「首都圏不動産流通市場の動向(2025年度)」によると、登録から成約に至るまでの平均日数は次のとおりです。2025年度は中古戸建てが中古マンションより約17日長くなっています。
| 種類 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 中古マンション | 84.3日 | 82.6日 |
| 中古戸建住宅 | 99.4日 | 100.1日 |
| 土地(100〜200㎡) | 90.0日 | 89.7日 |
※公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年度)」より。成約した物件の平均で、売れ残っている物件は含まれません。
4月1日に中古戸建てを売り出した場合のスケジュール
- 4月1日にレインズへ登録して販売開始
- 平均の100.1日で成約すると、売買契約は7月上旬ごろ
- 専任媒介の3か月の期限(6月末)は成約前に来るため、更新するかをその前に判断する
平均どおりに進んでも、最初の媒介契約の期間内に売れないことは珍しくありません。3か月目に入る前に、反響の数と価格を担当者と確認しておきましょう。
内覧と購入申込みへの対応
内覧は買主が購入を決める最大の場面です。住みながら売る場合は、日程の調整に柔軟に応じられるかどうかで成約までの日数が変わります。売り出し直後は問い合わせが入りやすいので、その時期は予定を空けておくと機会を逃しません。
購入希望者が決まると、価格や引渡し時期を書いた購入申込書が届きます。不動産会社は、申込みがあれば遅滞なく売主に報告する義務があります(宅地建物取引業法第34条の2第8項)。値引き交渉が入ることも多いので、最低限ゆずれない金額を事前に決めておくと判断が早くなります。
売れないときの価格見直し
国土交通省の標準専任媒介契約約款では、売り出し価格が地価の変動などで不適当になったとき、不動産会社が根拠を示して価格変更を助言することになっています。反響が少ないまま時間がたつ場合は、その助言を求めましょう。
見直しの判断材料になるのは、ポータルサイトの閲覧数、問い合わせ件数、内覧件数の推移です。内覧はあるのに申込みがない場合は価格以外の原因(室内の印象、設備の不具合、周辺環境)を疑い、閲覧すら少ない場合は価格や写真を見直すのが基本です。
売り出す前に、今の相場を知っていますか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
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STEP4〜5 売買契約と決済・引渡し
売買契約では価格・決済日・手付金・契約不適合責任の範囲を決め、決済日に残代金を受け取って引き渡します。手付解除の期限と決済日は、引越しやローン完済の段取りと合わせて決めるのが重要です。
購入申込みの条件で合意すると、売買契約に進みます。契約の前には、宅地建物取引士が買主に対して重要事項説明を行い、契約が成立すると不動産会社が契約内容を記載した書面を売主・買主の双方に交付します。
売買契約で決めることと手付金
契約書には、売買代金、手付金の額、決済・引渡しの日、固定資産税などの精算方法、設備の引継ぎ、契約不適合責任の範囲などを書きます。売主は契約時に手付金を受け取るのが一般的です。
民法では、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄して、売主は手付金の倍額を払って契約を解除できます(民法第557条)。契約書で手付解除の期日を定めている場合もあるので、内容を確認しておきましょう。
引き渡した物件が、種類や品質の面で契約の内容に合っていなかった場合に売主が負う責任です。買主は修補や代金の減額、損害賠償、解除を求めることができます。
品質に関する不適合は、原則として買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知する必要があります(民法第566条)。ただし売主が引渡しの時に知っていた不具合は、この期間制限が働きません。雨漏りやシロアリ被害など知っている不具合は、契約前に必ず告知してください。告知の範囲は雨漏りする家の売却と契約不適合責任の記事でも詳しく解説しています。
決済日に行うこと
決済は、売主・買主・不動産会社・司法書士が金融機関などに集まり、残代金の支払いと登記の手続きを同時に行うのが一般的です。売主側の流れは次のとおりです。
- 本人確認と書類の確認司法書士が登記に必要な書類(権利証または登記識別情報、印鑑証明書など)がそろっているか確認します。
- 残代金の受領買主から売買代金の残り(代金から手付金を引いた額)を受け取ります。
- 住宅ローンの完済と抵当権の抹消ローンが残っている場合は受け取った代金で完済し、抵当権を消す登記を同時に申請します。
- 諸費用の精算と鍵の引渡し固定資産税などの精算金、仲介手数料を支払い、鍵や設備の説明書を買主に渡して完了です。
売却代金でローンを完済できない(残債が売却価格を上回る)場合は、抵当権を外せず通常の売却ができません。差額を自己資金で用意するか、金融機関と相談する必要があります。詳しくはオーバーローン時の売却方法を参考にしてください。
売主が用意する書類と引越しの時期
契約から決済までの間に、売主は登記や引渡しのための準備を進めます。一般的には次のようなものが必要になります。
- 登記識別情報(または権利証)、実印、印鑑証明書、本人確認書類
- 設備の有無や不具合を書く付帯設備表、物件の状態を書く告知書(契約時に作成)
- 鍵一式、設備の取扱説明書、建築時の図面や管理規約など
- ローンが残っていれば、金融機関への一括返済の申込み
司法書士に登記を頼む場合、委任状に添える印鑑証明書は作成後3か月以内のものに限られます(不動産登記令第18条)。契約が決まる前に早めに取りすぎると、決済日に期限が切れていることがあるので注意しましょう。
引渡し日には家を空にして鍵を渡すのが一般的です。住みながら売る場合は、決済日までに引越しを終えられるよう、新居の入居日や仮住まいの手配と日程を合わせて契約で決めておきます。
仲介手数料と印紙税の目安
仲介で売った場合、成約時に仲介手数料がかかります。上限は国土交通大臣の告示で決まっていて、売買価格のうち200万円以下の部分は5%、200万円超400万円以下の部分は4%、400万円超の部分は3%(いずれも税抜)を合計した額です。なお、物件価格が800万円以下の宅地建物(低廉な空家等)には、媒介に要する費用を勘案して30万円の1.1倍まで受け取れる特例があります。
また、売主が保管する売買契約書には印紙を貼ります。2027年(令和9年)3月31日までに作成する不動産売買契約書は税率が軽減されていて、国税庁の案内では契約金額1,000万円超5,000万円以下なら1万円です。
3,000万円で売れた場合の仲介手数料と印紙税
- 仲介手数料の上限:200万円×5%+200万円×4%+2,600万円×3%=96万円(税抜)
- 消費税10%を加えると105万6,000円
- 売買契約書の印紙税(軽減後):1万円
400万円を超える物件なら「売買価格×3%+6万円」でも同じ額になります。手取りを計算するときは、これにローンの残債や抵当権抹消の費用、引越し代を差し引いて考えましょう。
STEP6 確定申告|売った翌年の2月16日〜3月15日
不動産を売って利益(譲渡所得)が出たら、売った年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告をします。税率は売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで約2倍違います。
引渡しが終わっても、売却の手続きはまだ終わりではありません。土地や建物の譲渡所得は、給与などとは分けて税額を計算する分離課税で、会社員でも自分で確定申告が必要です(国税庁 No.3102 譲渡所得の申告期限)。
「売った日」は引渡し日か契約日
譲渡の日は、原則として買主に物件を引き渡した日です。ただし、売買契約の効力が発生した日(一般的には契約締結の日)を譲渡の日として申告することもできます。
たとえば12月に契約して翌年1月に引き渡した場合、どちらの年の所得として申告するかを選べます。所有期間の判定や、その年のほかの所得との兼ね合いで有利不利が変わることがあるので、年末をまたぐ取引では税理士に相談してから決めると安心です。
税額の計算と所有期間5年の境目
譲渡所得は「売却価格−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で計算します。譲渡費用には仲介手数料や売買契約書の印紙代などが入ります。
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えれば長期譲渡所得(所得税15%・住民税5%)、5年以下なら短期譲渡所得(所得税30%・住民税9%)です。さらに所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかります(国税庁 No.3208)。
3,000万円で売り、取得費2,300万円・譲渡費用100万円の場合
- 譲渡所得:3,000万円−(2,300万円+100万円)=600万円
- 長期の場合:所得税90万円+復興特別所得税1万8,900円+住民税30万円=121万8,900円
- 短期の場合:所得税180万円+復興特別所得税3万7,800円+住民税54万円=237万7,800円
同じ600万円の利益でも、所有期間で税額が100万円以上変わります。所有5年前後で売る方は、短期譲渡所得の判定と税率の記事で境目の数え方を確認してください。
税金ゼロでも申告が必要なケース
売却価格が取得費と譲渡費用の合計以下で売却益が出なかった場合、譲渡所得に対する税金はかかりません。一方、マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除は、控除によって税金がゼロになる場合でも、確定申告をしないと適用を受けられません。
また、マイホームの譲渡損失を給与などと相殺する特例を使って還付を受ける場合は、2月15日以前でも申告できます。特例を使うかどうかで「申告が要るか」が変わるため、売却が決まった段階で必要書類(購入時の契約書、仲介手数料の領収書など)をまとめておきましょう。
- 売ったときの売買契約書と、仲介手数料などの領収書
- 買ったときの売買契約書(取得費の証明。紛失すると不利になる)
- リフォームや増改築の費用が分かる書類
- マイホームの特例を使う場合は、居住を確認できる書類
不動産を早く売る方法|期間を縮める5つの手
販売期間を縮めるには、相場に合った価格、書類の事前準備、不具合の正直な告知が効きます。期限が決まっているなら、買主を探さない「買取」も並べて比べるのが確実です。
平均83〜100日という販売期間は、あくまで成約した物件の平均です。価格が相場とずれていたり、買主のローン審査で問題になる書類の不足があったりすると、これより大幅に長引きます。逆に言えば、売り出す前にできる準備で期間はかなり変えられます。
価格・書類・告知で販売期間を縮める
売り出し直後は、新着物件として買主の目に留まりやすい時期です。ここで相場より高すぎる価格を付けると、反響が少ないまま時間だけがたち、値下げしても「売れ残り」の印象が残ります。
- 成約事例に基づいた価格で出す複数社の査定根拠を比べ、売り出し価格と「ここまでなら下げられる」額を最初に決めておきます。
- 書類を先にそろえる権利証、購入時の契約書、検査済証、管理規約などを売り出し前に用意すると、契約・決済が滞りません。
- 不具合は先に告知する契約直前に不具合が分かると交渉がやり直しになります。知っていることは最初に伝えます。
- 内覧の準備と日程の柔軟さ片付けと換気をして、内覧希望の日時にできるだけ応じられるようにします。
- 3か月ごとに売り方を見直す専任媒介の更新のタイミングで、価格・依頼先・契約の種類を見直します。
特に古い戸建てで検査済証がない場合は、買主の住宅ローンが通りにくく販売が長引く原因になります。対処法は検査済証がない家の売却の記事で解説しています。
期限があるなら買取も比べる
買取は、不動産会社が買主となって物件を直接買い取る方法です。一般の買主を探す販売活動が不要なため、条件がまとまれば売買契約と決済に進めます。住み替えの期限や相続税の納付、ローンの返済などで「いつまでに現金化したいか」が決まっている方に向いています。
買取のメリット
- 買主探しの期間がなく、決済日の見通しが立てやすい
- 内覧対応や広告で近所に知られることがない
- 古い家や不具合のある家も、現況のまま相談できる
買取のデメリット
- 売却価格は仲介で一般の買主に売る場合より低くなりやすい
- 買い取る会社によって提示額の差が大きい
- 時間に余裕がある場合は、仲介のほうが手取りが多くなりやすい
売却期間を短くしたいなら、仲介の査定額と買取の提示額を同時に取り、差額と期間を見比べて決めるのが合理的です。差額が小さければ買取、大きければ仲介で3か月勝負、という判断ができます。
売却スケジュールで気をつけたい期限
不動産売却では、1月1日と特例の期限が手取りに直結します。引渡し日を年末年始のどちらに置くかで、税率や固定資産税の負担が変わることがあります。
ここまで見てきた6ステップは、どれも「いつ終わるか」が手取りに影響します。特に、販売活動が想定より長引いて年をまたいだときや、特例の期限が迫っているときは、逆算でスケジュールを組むことが大切です。
1月1日をまたぐかどうかで変わること
固定資産税は、毎年1月1日(賦課期日)時点で登記簿上の所有者に課税されます(地方税法第343条・第359条)。年内に引き渡して所有権移転登記まで済めば翌年度分は買主に課税されますが、登記が年をまたぐと売主に課税されます。売主・買主の間で税額をどう分担するかは売買契約で取り決めるので、契約書の精算方法を確認してください。
また、譲渡所得の長期・短期は売った年の1月1日時点の所有期間で判定します。所有期間が5年の境目に近い場合、引渡しを年明けにずらすだけで長期になることがあります。
- 媒介契約から3か月専任・専属専任の有効期間の上限。更新するかを判断する
- 1月1日固定資産税の賦課期日/長期・短期の判定日
- 翌年2月16日〜3月15日譲渡所得の確定申告期間
- 住まなくなって3年を経過する年の12月31日マイホームの3,000万円控除を使える売却期限
特例の期限から逆算する
マイホームの3,000万円特別控除は、住まなくなった家を売る場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。住み替えで先に新居へ移った方は、この期限から逆算して販売開始の時期を決める必要があります。
たとえば期限の年に入ってから売り出すと、平均的な販売期間(約3か月)に契約・決済の期間を加えても間に合う計算ですが、価格の見直しが重なると年末ぎりぎりになります。期限の1年前には査定を受けておくと、仲介で売るか買取にするかを落ち着いて選べます。相続した空き家にも別の3,000万円控除があり、要件と期限は相続空き家の3,000万円特別控除で確認できます。
- 1月1日をまたぐと、固定資産税の納税通知先と長期・短期の判定が変わる
- 3,000万円控除は「住まなくなって3年を経過する年の12月31日」が売却期限
- 期限がある売却は、1年前の査定から逆算して計画する
よくある質問
不動産売却にかかる期間は全部でどれくらいですか?
販売期間だけで、首都圏の平均は中古マンション82.6日、中古戸建て100.1日です(2025年度)。これに査定・媒介契約までの準備と、売買契約から決済までの期間が加わります。決済日は契約で決めるため、引越しや買主のローン手続きの都合で前後します。
住みながら家を売却することはできますか?
できます。内覧の日程調整が必要になりますが、引渡し日までに退去すれば問題ありません。引渡し日は売買契約で決めるので、新居への入居時期と合わせて買主と交渉しましょう。住み替え先の購入代金に売却代金を充てる場合は、決済日の順番も不動産会社と調整しておくと安心です。
媒介契約の3か月が過ぎても売れなかったらどうなりますか?
専任媒介・専属専任媒介は自動では更新されず、売主が申し出た場合に限り更新できます。
そのまま更新するか、別の会社に依頼するか、一般媒介に切り替えるかを選べます。価格や売り方の見直しとあわせて判断しましょう。
不動産を売却したら必ず確定申告が必要ですか?
売却益(譲渡所得)が出た場合は、売った年の翌年2月16日〜3月15日に申告が必要です。マイホームの3,000万円特別控除を使う場合は、控除で税金がゼロになっても、確定申告をしなければ適用を受けられません。
この記事のまとめ
- 不動産売却の流れは査定・媒介契約・販売活動・売買契約・決済引渡し・確定申告の6ステップ
- 専任・専属専任媒介の有効期間は最長3か月。更新は売主の申出があるときだけ
- 販売期間は首都圏平均で中古マンション82.6日、中古戸建て100.1日(2025年度)
- 決済日に残代金の受領・ローン完済・抵当権抹消・鍵の引渡しを同時に行う
- 利益が出たら翌年2月16日〜3月15日に確定申告。3,000万円控除は申告が必要
- 早く売るなら価格・書類・告知の準備を先に。期限があるなら買取とも比べる
売却の流れのうち、売主が最初にできるのは「今の価格を知ること」です。査定額とその根拠が分かれば、販売期間の見通しも、仲介と買取のどちらが合うかも判断しやすくなります。