契約不適合責任とは?古い家の売主の責任|免責特約と買取での回避法

古い家を売った売主が負う契約不適合責任と、免責特約・買取で責任を外す方法を解説する記事のイメージ

築40年の実家を売ったあと、買主から「雨漏りがする」と連絡が来たら、修理代は誰が払うのでしょうか。古い家を手放す人がいちばん不安に感じるのが、この引渡し後のトラブルです。

結論から言うと、売主は原則として責任を負います。これを契約不適合責任(=契約書で伝えた内容と違う家だったときに売主が負う責任のこと)といいます。ただし契約書に「あとから不具合が出ても売主は責任を負わない」と取り決めておけば、責任を外して売る方法もあります。

この記事では、買主から何を請求されるのか、いつまで責任が続くのかを順番に説明します。責任を負わずに手放す方法も、民法と宅地建物取引業法の条文に沿って整理します。

この記事を読むとわかること

  • 売ったあとに不具合が見つかったとき、買主が売主に請求できる4つのこと
  • 「知った時から1年」という通知の期限と、10年という上限
  • 「現状渡し」と書くだけでは責任が消えない理由
  • 不動産会社に直接売る「買取」なら責任を外しやすい仕組み
  • 売る前にやっておく4つの備えと、その費用の目安

この記事の結論

  1. 売った家が契約書で伝えた内容と違えば、売主は修理・代金の減額・損害賠償・契約の解除の4つを求められます(民法562条〜564条)。
  2. 期限の起点は引渡し日ではありません。買主が不具合を知った時から1年以内に通知があれば請求されます(民法566条)。
  3. 「責任を負わない」取り決めは原則として有効です。ただし売主が知っていて黙っていた不具合は免責されません(民法572条)。
  4. 売主が不動産会社の場合だけ、引渡しから2年以上としない不利な特約は無効です(宅地建物取引業法40条)。個人が不動産会社に売る買取では、この制限はかかりません。
  5. 売る前の備えは、建物の調査が6万円程度〜、保険が5万円程度〜。合わせて11万円程度から始められます。

契約不適合責任とは?売ったあとに不具合が見つかると売主はどうなる

結論

売った家が契約書で伝えた内容と違っていれば、売主は引渡しのあとでも修理や返金を求められます。これが契約不適合責任で、2020年4月1日からの契約に適用されるルールです。

契約不適合責任は、引き渡した家が「契約の内容に適合しない」ときに売主が負う責任です。買ったあとで雨漏りやシロアリが見つかった場合などが典型です。難しそうな名前ですが、中身はとても身近な話です。

中古車を「エアコンは問題なし」と説明されて買ったのに、夏になって冷えなかったとします。買った人は「直してほしい」と言うはずです。家の売買でも同じことが起こり、その責任を法律の言葉で契約不適合責任と呼びます。

用語の補足:契約不適合責任

売った家が、契約書や説明で伝えた内容と違っていたときに、売主が負う責任のことです。中古車を「エアコンは正常」と聞いて買ったのに効かなかった、という場面と同じ考え方です。これを専門用語で契約不適合責任といいます。

「契約の内容と違う」かどうかが分かれ目

判断の分かれ目は、家が古いかどうかではありません。契約書や説明の内容と、実際の家が合っているかです。築40年の家に相応の傷みがあっても、そのことを伝えて契約していれば問題になりにくくなります。

逆に、新しい家でも「雨漏りはありません」と伝えて売り、実際に漏っていれば責任を問われます。家の古さそのものは免責の理由になりません。ここを勘違いしている売主がとても多い部分です。

2020年4月に「瑕疵担保責任」から変わった

2017年に成立した民法の改正が、2020年4月1日から施行されました。これにより、以前の「瑕疵担保責任」が契約不適合責任に変わりました。法務省の債権法改正のページでも、この見直しの内容が公表されています。

大きな変化は2つです。1つは「隠れた瑕疵」という条件が「契約の内容に適合しない」に改められたこと。もう1つは、買主が修理の請求と代金の減額請求をできるようになったことです。

用語の補足:瑕疵(かし)

「瑕疵」は、建物の欠陥や不具合を指す古い言い方です。2020年3月31日までに結んだ契約には、この言葉を使った瑕疵担保責任のルールが適用されます。

横にスクロールできます

比べる点 2020年3月31日までの契約 2020年4月1日からの契約
呼び方 瑕疵担保責任 契約不適合責任
責任が生じる条件 「隠れた瑕疵」があること 契約の内容に適合しないこと
買主ができること 損害賠償・契約の解除 修理の請求・代金の減額・損害賠償・契約の解除

※どちらの民法が適用されるかは、売買契約を結んだ日で決まります。売主にとって不利になったのは右の列です。

古い家ほど「言った・言わない」で揉めやすい

古い家は、売主自身も不具合を把握しきれていないことが多いものです。相続した実家なら、住んだ経験すらない場合もあります。だからこそ、知っていることを書面に残すかどうかで結果が大きく変わります。

雨漏りのように発見が遅れやすい不具合は、とくに揉めやすい部分です。雨漏りする家を直さずに売る判断については、別の記事で詳しく整理しています。

この項目のまとめ
  • 責任の有無は「家の古さ」ではなく「契約の内容と合っているか」で決まる
  • 2020年4月1日からの契約では、買主は修理と代金の減額も請求できる

買主から何を請求される?契約不適合責任の4つの請求

結論

買主が求められるのは修理・代金の減額・損害賠償・契約の解除の4つです。いきなり解約になるわけではなく、まず修理の請求から始まるのが基本です。

民法は、買主が使える手段を順番に用意しています。最初は「ちゃんと直してほしい」という請求です。これで解決しなければ、次に「その分だけ代金を返してほしい」に進みます。

用語の補足:追完請求と代金減額請求

「直してほしい」と求めることを追完請求、「その分の代金を返してほしい」と求めることを代金減額請求といいます。買い物でいえば、交換してもらうか値引きしてもらうかの違いに近い考え方です。

まず「直してほしい」と求められる

民法562条は、引き渡された家が契約の内容に合わないとき、買主が修理や代替物の引渡しを求められると定めています。家の売買では、修理(修補)を求められるのが実際の形です。

どの方法で直すかは、原則として買主が選べます。ただし買主に不相当な負担をかけない範囲なら、売主が別の方法で直すこともできます。不具合が買主の責任で生じた場合は、この請求はできません。

直らなければ「代金を返して」に進む

民法563条は、買主が期間を決めて修理を求め、その期間内に直らなければ代金の減額を請求できると定めています。減額の幅は、不具合の程度に応じた割合になります。

修理そのものが不可能な場合や、売主がはっきり拒んだ場合は例外です。修理を求める手順を飛ばして、すぐに減額を請求できます。「直せないから無視する」という対応は、かえって不利になります。

損害賠償と契約の解除はどんなときか

民法564条は、修理や減額の規定があっても、損害賠償の請求と契約の解除を妨げないと定めています。つまりこの2つは、債務不履行の一般のルールに従って判断されます。

家の売買で解除まで進むのは、住めないほど重大な不具合があった場合などです。実務でより多いのは、修理費の負担か代金の減額で折り合いをつける形です。

横にスクロールできます

請求の種類 買主が求めること 売主の負担 主な条件
修理の請求(追完請求) 不具合を直すこと 修理費の負担 契約の内容に適合しない不具合があること(民法562条)
代金の減額請求 代金の一部を返すこと 受け取った代金の一部を返す 期間を決めて修理を求めても直らないこと(民法563条)
損害賠償の請求 生じた損害をお金で埋めること 損害額の支払い 債務不履行の一般のルールによる(民法564条)
契約の解除 売買をやめて代金を返すこと 代金の返還と家の引き取り 債務不履行の一般のルールによる(民法564条)

※実務では、上の2つ(修理費の負担か代金の減額)で話がつく場合が多くなります。

  1. 買主が不具合に気づく雨漏り・シロアリ・設備の故障など
  2. 1年以内に売主へ通知民法566条の期限。起点は気づいた日
  3. 修理の請求まず直すよう求められる(民法562条)
  4. 代金の減額・損害賠償・解除直らない場合はここへ進む
図:買主の請求が進む順番(民法562条〜566条)
具体例

1,800万円で売った家に、180万円の雨漏り修理が必要だった場合

  • 売却価格:1,800万円(築40年の木造戸建を、仲介で個人の買主に売却)
  • 引渡し後に雨漏りが判明し、修理の見積りは180万円
  • → 修理の請求に応じる場合、売主の負担は180万円
  • → 代金の減額に応じる場合、手元に残るのは1,620万円

どちらの形でも、売主の負担は同じ180万円分です。「責任を負わない」取り決めがなければ、この負担は売主に残ります。

注意

「古い家だから買主も分かっていたはずだ」という言い分だけでは免責されません。判断の基準は、契約書や告知の内容と実際の家が合っているかどうかです。

この項目のまとめ
  • 請求は「修理 → 代金の減額 → 損害賠償・解除」の順に進む
  • 修理できない、応じない場合は、手順を飛ばして減額を請求される

契約不適合責任はいつまで?「知った時から1年」と10年の上限

結論

期限の起点は引渡し日ではありません。買主が不具合を知った時から1年以内の通知が必要です。請求権そのものは、権利を行使できる時から10年で消えます。

売主がいちばん誤解しやすいのが、この期限です。「引渡しから1年たてば安心」と思っている方は少なくありません。実際のルールは、それとは違う数え方をします。

起点は「買主が知った時」(民法566条)

民法566条は、買主が不具合を知った時から1年以内に売主へ通知するよう求めています。この通知がないと、買主は修理・減額・損害賠償・解除のいずれも請求できなくなります。

大事なのは、1年を数え始める日が「引渡し日」ではなく「買主が気づいた日」だという点です。発見が遅ければ、引渡しから何年たってからでも通知が届きます。

  1. 2026年4月1日:引渡しこの日は1年の起点ではない
  2. 2027年6月10日:買主が雨漏りに気づくこの日が1年を数え始める日
  3. 2028年6月10日ごろ:通知の期限民法566条の1年。ここを過ぎれば請求できない
  4. 2036年4月1日ごろ:請求権の上限民法166条の10年。これで権利が消える
図:通知の期限は「買主が知った日」から数える(民法566条・166条)
具体例

2026年4月1日に引き渡し、1年2か月後に雨漏りが見つかった場合

  • 引渡し:2026年4月1日
  • 買主が雨漏りに気づいた日:2027年6月10日
  • → 民法566条の通知期限は2028年6月10日ごろまで
  • → 引渡しから約2年2か月後の通知でも、請求の対象になる

「引渡しから1年たったから安心」とはいえないのが、この条文のポイントです。日数の細かい数え方には別のルールがあるため、上の期限は目安として見てください。

請求権は5年・10年で消える(民法166条)

期限内に通知があっても、請求権が永遠に残るわけではありません。民法166条は、権利を行使できることを知った時から5年で消滅すると定めています。権利を行使できる時から10年という上限もあります。

家の売買では、引渡しの時から10年がおおよその上限になります。つまり引渡しから10年たてば、原則として請求される心配はなくなります。

用語の補足:消滅時効

権利を使わないまま時間がたつと、その権利が使えなくなる仕組みです。貸したお金を長いあいだ請求しないでいると取り戻せなくなるのと、同じ考え方です。これを専門用語で消滅時効といいます。

知っていて黙っていた場合は1年の制限が及ばない

民法566条には、ただし書きがあります。売主が引渡しの時に不具合を知っていた場合、または重大な過失で知らなかった場合は、1年の通知期限が適用されません。

つまり、知っている不具合を隠して売ると、この1年の制限に守られなくなります。隠すことは、売主にとって最も不利な選択です。

結論

期限の起点は引渡し日ではなく、買主が不具合に気づいた日です。引渡しから何年たっても通知は届きえます。安心できる時期を自分で決められないからこそ、売り方そのものを選ぶ意味があります。

この項目のまとめ
  • 通知の期限は「買主が知った時から1年」で、引渡し日は起点ではない
  • 請求権の上限は民法166条の10年
  • 知っている不具合を隠すと、1年の制限に守られなくなる
ちょっと一息

その古い家、責任を負わずに手放せるか知っていますか?

持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
売却するか決めていなくても大丈夫です。

まずは現在の価格を確認してみる

簡単入力60秒・無料。売却ナビットが代わって相談・交渉を行うので、沢山の営業電話の心配はありません。

「現状渡し」や免責特約で契約不適合責任は消える?

結論

責任を負わないという取り決めは、原則として有効です。ただし売主が知りながら告げなかった不具合は免責されません(民法572条)。売主が不動産会社の場合は、別の制限もかかります。

契約不適合責任のルールは、売主と買主の合意で変えられます。法律の世界では、こうした変更できるルールを任意規定と呼びます。だから「売主は責任を負わない」という取り決めも、基本的には効力を持ちます。

契約書でこの取り決めを書いた部分を、免責特約といいます。日常の言葉でいえば「あとから不具合が出ても売主は責任を負わない」という約束です。ただし、効かない場面が3つあります。

「現状渡し」と書くだけでは足りない

「現状渡し」は、今の状態のまま引き渡すという意味の言葉です。しかしこれだけでは、責任を負わない約束になっているとは読み取れません。責任を負わない範囲を具体的に書く必要があります。

たとえば「給排水設備の不具合については売主は責任を負わない」のように、対象をはっきりさせます。不動産売買契約の流れと注意点でも、この特約の書き方を取り上げています。

知っていて黙った不具合は免責されない(民法572条)

民法572条は、責任を負わない旨の特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。これが免責特約の最大の穴です。

「雨漏りを知っていたが黙っていた」という場合、特約は効きません。知っている不具合は、隠すより書いて渡すほうが売主を守ります。

売主が不動産会社なら「2年以上」としないと無効

宅地建物取引業法40条は、不動産会社が自ら売主になる場合の制限です。引渡しの日から2年以上とする特約を除き、民法より買主に不利な特約は結べません。そうした特約は無効になります。

注意したいのは、この制限がかかるのは売主が不動産会社のときだけだという点です。個人が売主の場合には、この40条の制限はかかりません。あとで見る買取では、この違いが大きく効いてきます。

横にスクロールできます

ケース 売主 買主 免責特約の扱い
個人が個人に売る(仲介・個人間売買) 個人 個人 合意すれば原則有効。ただし民法572条の例外あり
不動産会社が個人に売る(新築・再販物件) 不動産会社 個人 引渡しから2年以上とする場合を除き、民法より買主に不利な特約は無効(宅建業法40条)
個人が不動産会社に売る(買取) 個人 不動産会社 宅建業法40条の制限はかからず、合意すれば原則有効

※いずれの場合も、売主が知りながら告げなかった不具合は民法572条により免責されません。

POINT

免責特約が効かない3つの場面

  • 売主が不具合を知っていて、買主に伝えていなかった(民法572条)
  • 「現状渡し」とだけ書き、責任を負わない範囲が特定されていない
  • 売主が不動産会社で、引渡しから2年未満の特約になっている(宅建業法40条)

契約書に署名する前に、次の4点を自分の目で確認してください。

  • 責任を負わない範囲が、設備や部位まで具体的に書かれているか
  • 通知の期間が何か月なのか、または責任を負わない旨が書かれているか
  • 告知書(=知っている不具合を買主に伝える書面)に、知っていることをすべて書いたか
  • 売主が自分(個人)か不動産会社かで制限が変わることを理解しているか
この項目のまとめ
  • 免責特約は原則有効だが、知っていて黙った不具合には効かない
  • 「現状渡し」だけでは不十分で、責任を負わない範囲を具体的に書く

契約不適合責任を負わずに古い家を手放すなら買取

結論

では、責任を負いたくない場合はどう売ればいいのでしょうか。不動産会社に直接売る買取なら、買主がプロなので免責特約を受け入れてもらいやすくなります。

古い家を仲介で売ると、買主は多くの場合これから住む個人です。個人の買主に「不具合が出ても責任は負いません」と求めるのは、簡単ではありません。買取なら、この前提が変わります。

買主がプロだから免責を受け入れてもらいやすい

不動産会社は、建物の状態を自分で調べ、修繕してから再販します。不具合があることを前提に価格を決めるので、売主の責任を外した契約に応じやすいのです。

前の項で見たとおり、宅建業法40条の制限は売主が不動産会社のときの規制でした。個人が不動産会社に売る買取では、この制限はかかりません。立場が逆になるからです。

注意

買取でも民法572条は生きています。知っている不具合を隠せば、相手が不動産会社でも責任は残ります。告知書には正直に書いてください。

仲介と買取はここが違う

仲介と買取は、価格と責任が逆の関係になりがちです。下の表で、売主にとって何が変わるのかを並べました。

横にスクロールできます

比べる点 仲介で個人に売る 買取で不動産会社に売る
買主 これから住む個人が中心 不動産会社(プロ)
免責特約 受け入れられにくい 受け入れられやすい
仲介手数料 かかる(上限は国土交通省の告示) 不動産会社に直接売る場合はかからない
買主を探す期間 必要 不要
売却価格 市場の相場に近づきやすい 相場より低くなる傾向

※価格の傾向は物件や会社によって変わります。実際の額は査定で比べてください。

価格だけを見れば仲介が有利に見えます。ただし古い家では、買主が見つからないまま時間が過ぎることもあります。旧耐震基準の家が売れにくい理由も合わせて確認してください。

具体例

1,800万円で売ったときの仲介手数料の上限

  • 売買価格:1,800万円(消費税を含まない金額)
  • 国土交通省の告示では、400万円を超える部分の上限は3%
  • → 1,800万円×3%+6万円=60万円(税抜)
  • → 消費税10%を加えると66万円

この上限は、売主・買主それぞれの一方から受け取れる額です。国土交通省の告示どおりの上限額を当然に請求できるわけではなく、実際の額は協議で決まります。

買取のメリットとデメリット

買取は万能ではありません。責任を外せる代わりに、受け取る金額が下がりやすい方法です。

メリット

  • 免責特約を受け入れてもらいやすく、引渡し後の不安が小さい
  • 買主を探す期間が不要で、時期を決めて手放せる
  • 修繕や解体をしないまま、現況のまま売れることが多い
  • 不動産会社に直接売る場合は仲介手数料がかからない

デメリット

  • 売却価格は市場の相場より低くなる傾向がある
  • 会社によって提示額や免責の条件が大きく変わる
  • 知っている不具合を隠せば、民法572条により責任は残る
結論

価格を最優先するなら仲介、引渡し後の責任をできるだけ外したいなら買取です。どちらが得かは、売却価格の差と、将来の修理費を負うリスクを並べてはじめて判断できます。

この項目のまとめ
  • 買取では買主がプロなので、免責特約が通りやすい
  • 宅建業法40条の制限は売主が不動産会社のときの規制で、買取では立場が逆になる
  • 価格は下がる傾向があるため、責任の重さと見比べて決める

揉めないために売る前にやる4つの備え

結論

揉めないために、売る前に何をしておけばいいのでしょうか。知っている不具合を書面で伝える、専門家に家を調べてもらう、保険を使う、契約書を確認するの4つです。家の調査は6万円程度から、保険は5万円程度から始められます。

どの売り方を選んでも、売る前の準備は共通です。順番にやれば、引渡し後に揉める可能性は大きく下がります。費用の目安も国土交通省の資料で公表されています。

  1. 知っている不具合を書き出す雨漏り・シロアリ・設備の故障・境界の争いなど、思い出せるものをすべて書きます。
  2. 書き出した不具合を書面にして買主に渡す書いて渡した不具合は「告げた」ことになり、あとから責任を問われにくくなります。
  3. 建物状況調査で現況を記録する講習を修了した建築士が、構造と雨水の浸入を防ぐ部分を調べます。
  4. 保険の利用と契約書の特約を確認する引渡し後に不具合が出たとき、修理費が保険から支払われる仕組みもあります。

告知書に知っていることをすべて書く

用語の補足:告知書(物件状況等報告書)

売主が知っている不具合を書いて買主に渡す書面です。中古品を売るときに「ここに傷があります」と伝えるのと同じ役割です。これを専門用語で告知書、または物件状況等報告書といいます。

告知書の価値は、民法572条の裏返しにあります。知っている不具合は、書いて渡せば「告げた」ことになります。隠したときだけ、免責特約が効かなくなるのです。

国土交通省のQ&Aでは、調査の結果と告知書の両方がある場合の扱いが整理されています。原則として、調査結果の概要が「当事者双方が確認した事項」になるという内容です。つまり告知書は調査の代わりにはなりません。

建物状況調査で現況を記録する

建物状況調査は、国の登録を受けた講習を修了した建築士が行う調査です。構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分を目視や計測で調べます。所要時間は1〜3時間程度です。

国土交通省の手引きによれば、費用は6万円程度からが目安です。売主と買主のどちらが実施してもよく、買主が行う場合は売主の同意が必要です。

売主が調査を依頼した場合、その結果は買主に渡すことが望ましいとされています。2018年4月1日からは、仲介を頼むときに不動産会社が調査のあっせんの有無を書面に記載する扱いになっています。

既存住宅売買かし保険で修理費に備える

用語の補足:既存住宅売買かし保険

引渡し後に見つかった不具合の修理費が、保険から支払われる仕組みです。家にかける医療保険のようなもの、と考えると分かりやすいでしょう。これを専門用語で既存住宅売買かし保険といいます。

この保険は、国土交通大臣が指定した住宅瑕疵担保責任保険法人が引き受けます。個人間の売買では、保険法人に登録された検査事業者による検査が必要です。同省の資料では、保険料は戸建住宅で5万円程度からが目安とされています。

建物状況調査と合わせて実施でき、不具合がないなど一定の条件を満たせば現場検査を省略できる扱いもあります。合わせて11万円程度から、引渡し後の修理費に備えられます。

具体例

180万円の修理費リスクに、11万円程度の備えで対応する場合

  • 建物状況調査:6万円程度〜(国土交通省の手引きの目安)
  • 既存住宅売買かし保険:戸建住宅で5万円程度〜(同省資料の目安)
  • → 合計11万円程度〜
  • → 引渡し後に判明した180万円の修理費を、自己負担から保険の補償に切り替えられる

保険料や補償の範囲は保険法人ごとに異なります。利用できるかどうかは、登録された検査事業者に確認してください。

契約書の特約を最後に確認する

ここまでの準備ができたら、契約書の特約を読み返します。見るのは、責任を負わない範囲、通知の期間、告知書との関係の3点です。未登記建物の売却のように登記と現況が合っていない場合は、とくに注意が必要です。

売る前の費用全体を把握しておくと、判断がしやすくなります。不動産売却の費用一覧も参考にしてください。

最後に、引渡しまでに終わらせる項目を確認しましょう。

  • 告知書に、知っている不具合をすべて書いて買主に渡した
  • 建物状況調査を実施し、報告書を手元に残した
  • 免責の範囲と通知期間が、契約書に具体的に書かれている
  • 必要なら既存住宅売買かし保険の利用を検査事業者に相談した
この項目のまとめ
  • 知っている不具合を隠さず告知書に書くのが、いちばん確実な自衛策
  • 建物状況調査は6万円程度〜、かし保険は戸建住宅で5万円程度〜が目安

よくある質問

契約書に「現状渡し」と書けば契約不適合責任を免れますか?

「現状渡し」と書くだけでは、責任を負わない約束になっているとは読み取れません。責任を負わない部位や設備を具体的に書いた特約が必要です。

また民法572条により、売主が知りながら告げなかった不具合は特約があっても免責されません。知っている不具合は告知書に書いて渡してください。

築40年の古い家でも契約不適合責任を負いますか?

負います。家の古さそのものは免責の理由になりません。判断の基準は、契約書や告知の内容と実際の家が合っているかどうかです。

築年数に応じた劣化があることを契約書や告知書に具体的に書いて契約していれば、その劣化は「契約の内容に適合しない」とは評価されにくくなります。

引渡しから何年たてば契約不適合責任の心配はなくなりますか?

民法566条の期限は「買主が不具合を知った時から1年以内の通知」です。起点は引渡し日ではないため、引渡しから数年後に通知が届くこともあります。

請求権そのものは民法166条の消滅時効にかかり、権利を行使できる時から10年が上限です。

買主から修理代を請求されたら必ず払わなければいけませんか?

まず契約書の免責特約の内容と、通知が期限内に届いたかを確認してください。免責特約が有効で、売主が知りながら告げていなかった不具合でもなければ、支払う義務はありません。

金額や範囲で争いになりそうなときは、早めに弁護士に相談してください。

この記事のまとめ

  • 契約不適合責任は、契約の内容と実際の家が合っていないときに売主が負う責任(民法562条〜564条)
  • 買主は修理・代金の減額・損害賠償・契約の解除の4つを請求できる
  • 通知の期限は「買主が知った時から1年」で、請求権の上限は10年(民法566条・166条)
  • 免責特約は原則有効だが、知っていて黙った不具合には効かない(民法572条)
  • 売主が不動産会社なら引渡しから2年以上としない特約は無効(宅建業法40条)。買取ではこの制限はかからない
  • 売る前の備えは、建物状況調査6万円程度〜と既存住宅売買かし保険5万円程度〜

仲介と買取のどちらが得かは、売却価格の差と引渡し後の責任を並べてはじめて判断できます。まずは現在の価格を知ることから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

あわせて読みたい記事

あなたの不動産は今いくら?

売却ナビットがあなたに代わって
相談・交渉を行うので沢山の営業電話の心配無し

無料一括査定スタート
簡単入力60秒