自宅を売っても住み続けられる「リースバック」を検討し始めると、複数の会社から条件が届き、どこを見て比べればよいのか迷いがちです。買取価格が高い会社が一番良いとは限らず、家賃や契約の種類で数百万円単位の差が出ることもあります。
結論から言うと、リースバックは会社名ではなく「条件」で比較します。売却価格・家賃・契約形態・契約期間と再契約・買戻し条件・修繕負担の6点を同じ前提で並べれば、自分が住み続けたい年数で一番手元にお金が残る条件が見えてきます。この記事では、国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブック」をもとに、その比べ方を整理します。
この記事を読むとわかること
- 売却価格と家賃を「利回り」と「住む年数」で比べる計算方法
- 定期借家と普通借家の違い、再契約が約束ではない理由
- 買戻し条件で確認すべき「いつまでに・いくらで」
- 修繕負担と宅建業免許の確認方法、契約前のチェックリスト
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 比較は「売却価格−住む年数分の家賃総額」で行う。例えば2,000万円で売って家賃が月20万円なら、約8年4か月で家賃総額が売却代金を超える
- 国交省の事業者アンケートでは、締結している賃貸借の種類は定期借家契約が80%。定期借家は期間満了で終わり、再契約は貸主が拒めばできない
- 買戻しは当然の権利ではない。民法の買戻し特約は最長10年で、価格と期限が契約書に書かれているかを確認する
- 自宅を宅建業者に売る売買には宅建業法のクーリング・オフが適用されない。署名・押印の前に家族と内容を確認する
- 相手方の宅建業免許は国交省の検索システムで確認でき、免許の有効期間は5年。リースバックだけでなく通常の売却とも比べる
リースバック比較の前に押さえる仕組み
リースバックは「自宅の売買契約」と「その家を借りる賃貸借契約」の組み合わせです。だから比較も、売る条件と借りる条件の両方を並べて行います。
国土交通省の住宅のリースバックに関するガイドブック(令和4年6月発行)は、リースバックを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むというサービス」と説明しています。所有者ではなくなり、借主として住み続ける形です。
売買契約と賃貸借契約の2つがセットになる
リースバックでは、まず自宅をリースバック事業者に売る売買契約を結び、売却代金を一括で受け取ります。同時に、その家を事業者から借りる賃貸借契約を結び、毎月家賃を払って住み続けます。
国交省の検討会報告書は、持家の売買契約と賃貸借契約を組み合わせる取引の複雑さから、内容を十分理解しないまま契約してトラブルになる例があると指摘しています。片方の条件だけを見て決めるのは危険です。
自宅を買い取り、そのまま元の所有者に貸す会社や個人のことです。宅建業者や工務店が多いと考えられていますが、国交省の報告書によれば個人投資家が貸主になるケースもあります。
比べるのは会社名ではなく6つの条件
同じ会社でも物件や時期によって条件は変わり、ガイドブックも「各リースバック事業者によって、提示される契約条件は様々」としています。ランキングや知名度ではなく、目の前に出された条件を次の6点で比べるのが確実です。
- 売却価格(周辺相場と比べて妥当か)
- 月額家賃(何年住むと売却代金を食いつぶすか)
- 契約形態(定期借家か普通借家か)
- 契約期間と再契約・更新の条件
- 買戻しの可否・価格・期限
- 修繕費・原状回復などの費用負担
リースバック以外の方法とも比べる
ガイドブックは、住み続けながら一括で資金を得る方法として、リースバックのほかに金融機関からの融資(リバースモーゲージを含む)や、通常の売却を選んで決済・引渡し時期を調整する方法を挙げ、比較・検討したうえで選ぶよう勧めています。
引越し先が決まるまで住めれば十分という人なら、通常の売却で引渡しを先に延ばす方法でも目的を果たせる場合があります。住宅ローンの返済が苦しい場合は、任意売却の流れと期限もあわせて確認しておくと選択肢が広がります。
「住み続けたい理由」と「必要な年数」を先に決める
- 施設に入るまでの1〜2年だけ住みたいのか、ずっと住みたいのかで最適な条件は変わる
- 必要な年数が決まれば、家賃総額と契約形態の比較が一気に簡単になる
比較ポイント1:売却価格・家賃・利回りの考え方
売却価格の高さだけで選ばず、「売却価格−住む予定年数分の家賃総額」で比べます。家賃は買取価格に利回りを掛けて決まることが多く、価格が高い会社ほど家賃も高くなりがちです。
ガイドブックは、契約前に「売却で受け取る金額」と「数年かけて賃料として支払う金額」のどちらが高いかを自分で計算して比べるよう求めています。価格と家賃はセットで動くため、片方だけでは良し悪しを判断できません。
売却価格は周辺相場と比べる
国交省が令和2年度にリースバック事業者に行ったアンケートでは、周辺相場に対する買取価格の割合を「7割以下」と答えた事業者が50%でした。リースバックの買取価格は、一般に市場で売る価格より低めに出ると考えておく必要があります。
問題は、相場から大きく外れた価格です。ガイドブックには、市場での取引価格が1億2,000万円相当の自宅を700万円で売却し、月約15万円で借りる契約を結んでしまったトラブル事例が載っています。提示価格の根拠を聞き、他の宅建業者にも相場の意見を求めましょう。
家賃は「買取価格×利回り」で決まりやすい
同じ国交省のアンケートでは、家賃の査定方法として「買取価格×(6〜8%÷12か月)」「買取価格からの利回り」「周辺相場と利回り」といった回答が挙がっています(自由回答の抜粋)。つまり、高く買ってもらうほど家賃も上がる仕組みになりやすいのです。
比較の際は、各社の条件から表面利回り(年間家賃÷売却価格×100)を自分で計算してみましょう。利回りが高い会社ほど、住み続けるほど手元のお金が早く減ります。
2,000万円で売って、家賃が利回り7%で決まった場合
- 年間家賃:2,000万円×7%=140万円(月額 約11.7万円)
- 家賃総額が売却代金に並ぶまで:2,000万円÷140万円=約14.3年
- → 家賃が月20万円(年240万円)なら、約8年4か月で売却代金を超える
月20万円のケースは、ガイドブックのトラブル事例(約2,000万円で売却、家賃約20万円)と同じ数字です。住む予定年数と並べて、手元にいくら残るかを必ず計算しましょう。
何年住むかで有利な会社が入れ替わる
売却価格が高くて家賃も高い会社と、価格は低いが家賃も安い会社では、住む年数が長くなるほど家賃の安い会社が有利になります。次の2社の例で確認してみましょう。
| 項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 1,800万円 | 2,000万円 |
| 月額家賃 | 9万円 | 12万円 |
| 表面利回り | 6.0% | 7.2% |
| 5年住んだ後に残る額 | 1,260万円 | 1,280万円 |
| 10年住んだ後に残る額 | 720万円 | 560万円 |
※計算例。残る額=売却価格−家賃総額(税金・諸費用は含まない)
A社とB社が逆転するのは何年目か
- 売却価格の差:2,000万円−1,800万円=200万円(B社が多い)
- 年間家賃の差:(12万円−9万円)×12か月=36万円(B社が多い)
- → 200万円÷36万円=約5.6年。約5年7か月より長く住むならA社のほうが手元に残る
「高く買ってくれる会社」が正解とは限りません。住む予定年数を決めてから比べると判断がぶれません。
- 買取価格は相場の7割以下という事業者が半数。相場から大きく外れていないか他社にも確認する
- 家賃は買取価格×利回りで決まりやすい。住む年数で「残る額」を計算して比べる
比較ポイント2:定期借家か普通借家か、期間と再契約
長く住みたいなら契約形態が最重要です。定期借家契約は期間満了で終わり、再契約は貸主が拒めばできません。契約の種類・期間・再契約の条件を契約書で確認します。
国交省の事業者アンケートでは、締結している契約の種類(複数回答)で定期借家契約が80%と最も多い結果でした。リースバックでは「更新のない契約」が主流だと考えておく必要があります。
定期借家と普通借家の違い
普通借家契約は、貸主に更新を拒む「正当の事由」がない限り更新されます(借地借家法28条)。一方、定期借家契約は契約の更新がなく、期間の満了で確定的に終わります(同法38条)。両者の違いは次のとおりです。
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| 項目 | 普通借家契約 | 定期借家契約 |
|---|---|---|
| 契約方法 | 書面でも口頭でも可能 | 書面または電磁的記録に限る。更新がないことを事前に書面で説明する必要がある |
| 期間 | 1年以上(長期の制限なし) | 短期・長期とも制限なし |
| 期間満了時 | 借主が希望すれば、貸主に正当事由がない限り更新される | 期間満了で終了し更新はない(住み続けるには再契約が必要) |
| 中途解約 | 特約があれば可能(貸主からの解約には正当事由が必要) | 特約があれば可能。床面積200㎡未満の住まいは、やむを得ない事情があれば借主から解約できる |
| 借主が亡くなった場合 | 賃借権は相続される | 賃借権は相続されるが、期間満了で終了する |
※国土交通省「リースバックガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について」の表と借地借家法をもとに作成
定期借家なのに、契約前に「更新がなく期間満了で終わる」旨の書面を受け取って説明を受けていない場合、更新がないという定めは無効になります(借地借家法38条5項)。説明書面を受け取ったかどうかも比較・確認のポイントです。
再契約は約束ではなく「双方の合意」
定期借家でも、貸主と借主の双方が合意すれば再契約して住み続けられます。しかしガイドブックは、貸主が再契約を拒んだ場合は退去する必要があると明記しています。営業担当者の「再契約できますよ」は、契約書に条件が書かれていなければ保証になりません。
期間が1年以上の定期借家では、貸主は期間満了の1年前から6か月前までに「期間満了で終了する」旨を借主に通知しなければ、終了を借主に主張できません(同法38条6項)。再契約できなかった場合に備え、この通知の時期から転居の準備期間を逆算しておきましょう。
- 契約開始定期借家の期間(例:3年)がスタート
- 満了の1年前〜6か月前貸主から「期間満了で終了する」旨の通知が届く時期
- 再契約の協議双方が合意すれば再契約。合意できなければ転居準備
- 期間満了再契約がなければ退去が必要
中途解約・家賃改定・貸主が変わる場合
施設への入居などで早めに出たい人は、借主からの中途解約の条件も比べます。ガイドブックの利用例でも、入居可能になり次第転居できるよう、2年間の定期借家に借主から中途解約できる条項を入れています。
家賃の値上げについては、普通借家なら経済事情の変動などを理由に家賃の増減を請求できる仕組みがあります(借地借家法32条)。ただし定期借家で家賃の改定に関する特約がある場合、32条は適用されません(同法38条9項)。賃料減額請求の考え方とあわせて、特約の中身を確認しましょう。
また、事業者が家を第三者に売ると貸主が変わります。引渡しを受けて住んでいる借主の賃貸借は新しい所有者にも引き継がれますが(借地借家法31条、民法605条の2)、ガイドブックは新しい貸主から再契約を拒絶される可能性に注意を促しています。
- リースバックは定期借家が主流(事業者アンケートで80%)。期間満了で終わる前提で計画する
- 再契約・中途解約・家賃改定の条件は、口頭ではなく契約書の条項で比べる
比較ポイント3:買戻し条件
買戻しは「当然の権利」ではなく、契約で決めた条件を満たしたときだけ使える約束です。「いつまでに」「いくらで」が契約書に書かれているかで比べます。
「将来お金ができたら買い戻せる」という説明は、リースバックを選ぶ大きな理由になりがちです。しかしガイドブックは、契約時に買戻しの条件や価格を確認していなかったためにトラブルになる事例があると注意しています。
買戻しは「当然の権利」ではない
ガイドブックは、買戻しを「一度家を買った事業者が、条件次第で、もう一度自分に家を売るという約束ごと」と説明しています。口約束ではなく、契約書に具体的な条件が記載されていることを確認するよう求めています。
さらに、家賃の支払いなど賃貸借契約の内容を守れていないと、買戻しの条件を整えていても買い戻せなくなることが想定される、と国交省の報告書は指摘しています。買戻しを望むなら、家賃を払い続けられるかも同時に確認が必要です。
買戻し特約と再売買の予約の違い
買戻しの仕組みには主に2つの形があります。どちらで約束しているかによって、期間の上限や第三者への対抗力が変わります。
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| 項目 | 買戻し特約(民法579条〜) | 再売買の予約(民法556条) |
|---|---|---|
| 結ぶ時期 | 売買契約と同時 | 当事者の話し合いで決める |
| 期間 | 最長10年。定めなければ5年以内。後から延長できない | 話し合いで自由に決められる場合がある |
| 返すお金 | 買主が払った代金(別の合意があればその額)と契約の費用 | 予約で決めた売買代金 |
| 家が第三者に売られたとき | 特約を登記していれば第三者に対抗できる | 承継させる条項があるかを確認する必要がある |
※民法579条〜581条・556条、国交省検討会報告書をもとに作成
民法の買戻し特約は期間が最長10年のため、国交省の報告書は「賃貸借契約期間が10年を超過すると、買戻しを行えなくなることが考えられる」としています。10年以上住んでから買い戻したい人は、再売買の予約の形になっているかを確認しましょう。
買戻し価格と期限の確認方法
買戻し価格は「売却価格と同額」とは限りません。契約で売却価格より高い額が定められることもあり、買戻し時に自分が払える額かを冷静に計算する必要があります。
買戻し価格を「売却価格の110%」と定めた場合
- 売却価格2,000万円 → 買戻し価格は2,000万円×110%=2,200万円
- 5年間の家賃(月12万円):12万円×60か月=720万円
- → 5年後に買い戻すと、受け取った2,000万円に対し支払いは合計2,920万円(差し引き920万円の負担)
この負担を払ってでも家を取り戻したいか、資金計画に無理がないかを、契約前に計算しておきましょう。
また報告書は、事業者が再売買を「前向きに検討する」と意向を示しているだけの場合、家が第三者に売られて再売買を拒まれる可能性があるとしています。第三者に譲渡するときは買戻しの条項を引き継がせる義務が売買契約に書かれているかも確認ポイントです。
リースバックの提示価格、相場と比べて妥当ですか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
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比較ポイント4:修繕負担・原状回復・費用
リースバック後は「住める」けれど「自由に使える」わけではありません。設備が壊れたときの修繕費をどちらが払うかと、退去時の原状回復の範囲を契約前に比べます。
持ち家のときは自分の判断で直したり設備を付けたりできましたが、売却後は事業者の持ち物です。ガイドブックも、設備の設置には事業者の承諾が必要になるなど、これまでと同じ使い方ができるとは限らないと説明しています。
修繕は誰が払うのか
民法の原則では、使用に必要な修繕は貸主が行う義務を負います。ただし借主の責任で壊れた場合は別です(民法606条)。貸主に知らせても相当の期間内に直さないときや急迫の事情があるときは、借主が自分で修繕でき(同607条の2)、貸主が負担すべき費用は請求できます(同608条)。
ただしリースバックの契約では、この原則と違う特約が置かれることがあります。国交省の報告書は、どの設備が売却後も自分の所有のままなのかを明確にし、どの設備をどちらが直すのかを契約前に確認するよう求めています。
| 確認する項目 | 契約書で見るところ |
|---|---|
| 給湯器・エアコンなどの故障 | 修繕費の負担者と、借主所有の設備の範囲 |
| 設備の新設・リフォーム | 貸主の承諾の要否と手続き |
| 退去時の原状回復 | 家具の撤去を含む範囲、通常損耗の扱い |
| 明渡しが遅れた場合 | 明渡遅延損害金の額 |
原状回復と亡くなった後の扱い
民法では、通常の使用による損耗と経年変化は原状回復の対象外です(民法621条)。しかし報告書は、これと異なる特約も認められるため、契約時に具体的な内容を確認することが重要だとしています。持ち家として長く住んだ家ほど、どこまで戻す必要があるかで負担が大きく変わります。
ガイドブックは、リースバック期間中に亡くなった場合、家族が相続によって賃貸借契約上の責任(原状回復など)を負うことがあるとも注意しています。また、契約できるのは家の所有者だけで、所有者が夫なら妻の承諾がなくても契約できてしまうため、同居家族が残されたときに家賃を払い続けられるかも確認しておきましょう。
固定資産税・仲介手数料など費用の違い
所有者ではなくなるため、契約条件によっては固定資産税や修繕費の支払いは不要になります。ただしガイドブックは、家賃はそうした貸主負担の費用も踏まえて設定されていると説明しています。税金がなくなる分は家賃に含まれていると考えて比べましょう。
仲介会社を通して別の事業者と契約する場合、売買契約と賃貸借契約の両方について媒介報酬が発生すると考えられる、と報告書は指摘しています。
このほか売却時には、売買契約書の印紙税がかかります(国税庁No.7108の軽減措置により、令和9年3月31日までに作成する契約書は、契約金額1,000万円超5,000万円以下なら1万円)。ローンが残っていれば抵当権抹消の登記費用も必要です。事務手数料の有無や、賃貸借の敷金・保証会社の費用も会社ごとに異なることがあるため、諸費用の内訳を見積書でもらい、媒介報酬とあわせて差し引いた手取り額で比べましょう。
家賃保証会社が家賃を立て替えて払っていても、借主の滞納を理由に貸主が契約を解除できるとした裁判例がある、と国交省の報告書は紹介しています。保証会社をつけても家賃の支払いは怠らないようにしましょう。
比較ポイント5:運営会社の種類と宅建業免許
リースバックは売却後も同じ相手と付き合い続ける取引です。相手方が誰か(宅建業者か個人投資家か、仲介経由か)と宅建業免許を確認し、勧誘の仕方も含めて信頼できるかを比べます。
国交省の報告書は、売却後に売買の相手と賃貸借契約を結んで継続的に関わることになるため、十分に信頼できる事業者を選ぶよう求めています。ここでは特定の会社の評価ではなく、相手方を確かめる方法を整理します。
契約の相手方になる事業者の種類
報告書によれば、リースバックの主な事業者は宅建業者や工務店などの不動産業者と考えられますが、個人投資家など不動産業のプロではない人が事業者になるケースもあります。また、仲介会社が間に入り、買主・貸主は別の会社や投資家という形もあります。
- 買主(売却先)は誰か。会社名・所在地・免許番号
- 貸主は誰か。買主と同じか、別の会社や個人か
- 仲介会社は入っているか。入っているなら媒介報酬はいくらか
- 物件の管理(家賃の受け取り・修繕の窓口)は誰が行うか
宅建業免許の確認方法
宅地建物取引業を営むには免許が必要で、2つ以上の都道府県に事務所を置くなら国土交通大臣、1つの都道府県だけなら都道府県知事の免許を受けます(宅地建物取引業法3条)。免許の有効期間は5年です。
免許番号の括弧内の数字は免許の更新回数で、更新を重ねているほど営業年数が長い目安になります。相手方の免許は、国交省の建設業者・宅建業者等企業情報検索システムで会社名や免許番号から実在を確認できます。
宅建業法でいう宅地建物取引業は、売買・交換と、売買・交換・貸借の代理や媒介です。自分の家を自ら貸すことは含まれないため、貸主が個人投資家でも違法とは限りません。だからこそ、貸主が誰かを自分で確かめる必要があります。
勧誘の仕方も比較材料にする
ガイドブックには、しつこい勧誘で契約し、解約を申し出たら約400万円の違約金を求められた事例が載っています。宅建業法のクーリング・オフは宅建業者が自ら売主となる売買が対象で(同法37条の2)、自宅を宅建業者に売る場合は適用されません。
売主側から解約する場合、手付を受け取っていれば、買主が契約の履行に着手するまではその倍額を払って解除するのが一般的です(民法557条)。それ以外は契約で定めた違約金が必要になることが多く、高額になりがちです。即日の契約を急かす会社は、比較の段階で候補から外すのが安全です。
重要な事項について事実と異なる説明を受けて契約した場合は、消費者契約法により取り消せることがあります(4条)。取消権は追認できる時から1年、契約から5年で消滅するため(7条)、おかしいと感じたら早めに消費生活センターなどに相談しましょう。
リースバックを複数社で比較する手順
住む年数と必要額を決めてから、同じ前提で複数社の条件を表にそろえ、通常の売却や買取の手取りとも並べて判断します。
ガイドブックのポイント1は「不動産業者・金融機関など複数の事業者に相談し、自分のライフプランに合った条件・手法を選びましょう」です。次の手順で進めると、比較のたびに前提がぶれるのを防げます。
比較の5ステップ
- 住む年数と必要な金額を決める施設入居まで、子の独立まで、ずっと、など。必要な一時金の額も書き出す。
- 自宅の相場を把握するリースバック以外の宅建業者にも査定を依頼し、通常に売った場合の価格を知っておく。
- 複数社から条件を書面でもらう売却価格・家賃・契約形態・期間・買戻し・修繕負担を、口頭ではなく書面で受け取る。
- 同じ前提で比較表を作る住む年数ぶんの家賃総額を差し引いた「残る額」と、再契約・買戻しの条件を並べる。
- 家族と契約書の案を確認するその場で署名・押印せず、売買契約書と賃貸借契約書の案を持ち帰って確認する。
比較表は同じ前提でそろえる
A社は「3年の定期借家」、B社は「2年の普通借家」のように条件の形がばらばらだと、数字だけでは比べられません。住む予定年数を1つ決めて、その年数で全社の残る額を計算するのがコツです。
そのうえで、定期借家なら再契約できなかった場合の転居費用、買戻しを望むなら買戻し価格も表に加えます。数字に表れない条件は「契約書に書いてあるか」で〇×をつけると、営業トークに左右されにくくなります。
通常の売却・買取とも並べて比べる
リースバックの条件だけを比べていると、「そもそもリースバックが最適か」を見落とします。ガイドブックも、通常の売却を選んで引渡し時期を一定期間待つことを契約条件にする方法を挙げています。
- 目的と年数を決めるいつまで住みたいか
- 相場を知る通常売却・買取の査定
- リースバック各社の条件書面でそろえる
- 手取りで比較通常売却+引渡し猶予とも比べる
リースバックの比較で一番大切なのは、相場を知ったうえで、住む年数で「残る額」と「住み続けられる確実さ」を比べることです。相場を知らないまま1社の提示だけで決めるのは避けましょう。
契約前の確認事項チェックリスト
署名・押印の前に、売買契約書・賃貸借契約書・家族の3方向から確認します。1つでも「口頭の説明だけ」の項目があれば、契約書への記載を求めます。
国交省の報告書は、契約時に売買契約書を確実に受け取ること、契約書の内容を十分確認して疑問点を解消してから契約することを求めています。次のチェックリストを、各社の契約書案に当てはめて使ってください。
売買契約書で確認すること
- 売却価格の根拠を聞き、他社の査定や相場と比べたか
- 売却代金がいつ、どのように支払われるか
- 手付の額と、解約するときの違約金の額
- 買戻しの可否・価格・期限・第三者に売られたときの承継条項
- 契約不適合責任(売主として負う責任)の範囲
売主として、自宅の不具合など知っている情報はできるだけ伝えることも大切です。報告書は、売主が一般に契約不適合責任を負うため、告知した内容の扱いも含めて契約書の規定を確認するよう求めています。
賃貸借契約書で確認すること
- 契約の種類(定期借家か普通借家か)と期間
- 定期借家なら、更新がない旨の説明書面を受け取ったか
- 再契約・更新の条件、借主からの中途解約の条件
- 家賃・共益費の額と、家賃改定の特約
- 修繕費の負担、設備の新設やリフォームの承諾
- 原状回復の範囲と、明渡しが遅れた場合の損害金
報告書は、明渡しが遅れた場合に家賃の2倍相当額の損害金を定めた条項を有効とした裁判例を紹介しています。退去時の負担まで含めて比べておきましょう。
家族と確認しておくこと
- リースバックを使う理由と、住み続けたい年数を家族と共有したか
- 所有者が亡くなった後も、残る家族が家賃を払えるか
- 説明の場に家族が同席できるか
報告書は、理解力や知識に不安がある場合、説明の場に家族・親族が同席することを有効な方法の一つとしています。判断能力に不安がある親の家を扱うなら、成年後見人による不動産売却の手続きも確認しておきましょう。
- 売買・賃貸借・家族の3方向から確認し、口頭だけの約束は契約書に書いてもらう
- 定期借家の説明書面、買戻し条項、違約金と明渡遅延損害金は特に念入りに見る
よくある質問
リースバックの会社はどうやって比較すればいいですか?
会社名や知名度ではなく、同じ物件・同じ居住予定年数を前提に、売却価格、月額家賃、契約形態、契約期間と再契約の条件、買戻しの価格と期限、修繕負担の6点を並べて比べます。
国土交通省のガイドブックも、複数の事業者に相談し、納得できる条件・手法を選ぶよう勧めています。
リースバックの売買契約はクーリング・オフできますか?
できません。宅建業法のクーリング・オフは宅建業者が自ら売主となる売買が対象で、自宅を宅建業者に売るリースバックには適用されません。解約には手付の倍返しや違約金が必要になることが多いため、署名・押印の前に家族と契約内容を確認してください。
定期借家契約でも再契約すれば住み続けられますか?
再契約は貸主と借主の双方が合意した場合にだけ成立します。貸主が拒めば期間満了で退去が必要です。
物件が第三者に売られて貸主が変わり、新しい貸主に再契約を断られる可能性もあります。長く住みたいなら、普通借家契約か、再契約の条件が契約書に書かれているかを確認しましょう。
買戻しの約束があれば必ず買い戻せますか?
必ずではありません。買戻しは当然の権利ではなく、契約で決めた「いつまでに」「いくらで」という条件を満たした場合に限られます。民法の買戻し特約は期間が最長10年で、家賃の滞納など賃貸借契約を守れていないと買い戻せなくなることもあるため、契約書の条項で確認してください。
この記事のまとめ
- リースバックは売買と賃貸借のセット。会社名ではなく6つの条件で比べる
- 価格と家賃は「売却価格−住む年数分の家賃総額」で比較し、相場からの乖離も確認する
- 定期借家は期間満了で終了。再契約・中途解約・家賃改定は契約書の条項で確かめる
- 買戻しは当然の権利ではない。価格・期限・第三者への承継を契約書で確認する
- 修繕負担と原状回復、相手方の宅建業免許、クーリング・オフ不可の点も比較材料にする
- リースバックだけでなく、通常の売却で引渡しを調整する方法とも手取りで比べる
比較の土台になるのは、自宅が今いくらで売れるかという相場です。まず現在の価格を知ることから始めてください。