リースバックとは?仕組み・家賃と売却価格の関係・定期借家の注意点

自宅を売却して家賃を払い住み続けるリースバックの仕組みを解説する記事のイメージ

「家を売ってまとまったお金が欲しい。でも住み慣れた家からは離れたくない」。そんなときに広告などで目にするのがリースバックです。自宅を売って代金を受け取り、そのまま家賃を払って住み続けられる仕組みとして、高齢者世帯を中心に利用が増えています。

結論から言うと、リースバックは「売却」と「賃貸」を同時に結ぶ取引で、売却価格は相場より低く、家賃は買取価格から逆算されやすいのが特徴です。

定期借家契約なら期間満了で退去になる可能性があり、買戻しも当然の権利ではありません。国土交通省の「住宅のリースバックに関するガイドブック」をもとに、契約前に知っておきたい点を整理します。

この記事を読むとわかること

  • リースバックの仕組みと、どんな目的で使われているか
  • 家賃と売却価格の関係、家賃総額が売却代金を超えるまでの計算方法
  • 定期借家と普通借家の違い(借地借家法)と、住み続けられる期間
  • 買戻しの条件と、リースバックが向いている人・向かない人

この記事の結論

  1. リースバックは自宅の売買契約+賃貸借契約の組み合わせ。所有者ではなくなり、毎月家賃を払って住む
  2. 国交省の事業者調査では、買取価格が周辺相場の7割以下と答えた事業者が50%。家賃は「買取価格×6〜8%÷12か月」のように決める例がある
  3. 事業者の80%が定期借家契約を使っており、期間満了後に住み続けられるかは再契約しだい
  4. 民法の買戻し特約は最長10年。買戻しは「いつまでに・いくらで」が契約書にあるかが全て
  5. 宅建業者への売却はクーリング・オフの対象外。署名前に通常の売却の査定額と比べることが最大の防御策

リースバックとは?売って住み続ける仕組み

結論

リースバックは、自宅を事業者に売って代金を一括で受け取り、売却後は毎月家賃を払ってその家に住み続ける取引です。

国土交通省のガイドブックは、住宅のリースバックを「住宅を売却して現金を得て、売却後は毎月賃料を支払うことで、住んでいた住宅に引き続き住むというサービス」と説明しています。「セール・アンド・リースバック」と呼ばれることもあります。

見た目は「家を担保にお金を借りる」のと似ていますが、中身はまったく違います。家の所有権は事業者に移り、あなたは借主(賃借人)になるという点を最初に押さえておきましょう。

売買契約と賃貸借契約の2つで成り立つ

リースバックは1本の契約ではなく、「不動産売買契約」と「建物賃貸借契約」の2本を組み合わせた取引です。売買契約で家を売り、賃貸借契約で同じ家を借ります。

  1. 査定・条件提示売却価格と家賃の提示を受ける
  2. 売買契約自宅を事業者に売る
  3. 代金の受け取り売却代金を一括で受け取る
  4. 賃貸借契約同じ家を借りて家賃を払う
  5. 契約終了・退去/買戻し期間満了・再契約・買戻しは契約しだい
図:リースバックの流れ(事業者買取型の一例。国交省検討会資料をもとに作成)

2本の契約はそれぞれ別のルールで動きます。売買契約の条件(価格・解約時の違約金)と、賃貸借契約の条件(家賃・期間・更新)を両方とも読んでから署名することが、リースバックで後悔しないための基本です。

事業者買取型と事業者仲介型

国交省の検討会資料では、リースバックの形を2つに分けています。不動産会社自身が家を買って貸主になる「事業者買取型」と、不動産会社が仲介して第三者(投資家など)が買主・貸主になる「事業者仲介型」です。

仲介型の場合、売買と賃貸の2つの契約それぞれについて仲介手数料(媒介報酬)がかかると考えられる、と国交省の報告書は指摘しています。また、貸主が個人投資家など不動産のプロではない相手になることもあります。誰が買主で、誰が貸主になるのかを最初に確認しましょう。

どんな目的で使われているか

国交省の検討会に提出された事業者アンケート(令和2年実施。回答39社のうち、この設問は30社が回答、複数回答)では、利用者の主な利用動機は次のとおりでした。

主な利用動機 回答割合
生活資金の確保 76.7%
住宅ローンやその他債務の返済 63.3%
高齢者施設への入居資金の確保 50.0%
ゆとり資金、余暇資金の確保 36.7%
子どもの教育資金等の確保/相続対策 各26.7%

※国土交通省「リースバックの現状について」(事業者アンケート、令和2年実施)より。事業者が回答した利用者の動機で、複数回答。

ガイドブックでは、高齢者施設の空きを待つ間に自宅を売って入居一時金を用意し、入居できたらすぐ退去できるよう2年間の定期借家契約+借主からの中途解約条項を付けた例が紹介されています。「いつまで住むか」が決まっている人ほど使いやすい仕組みだと分かります。

この項目のまとめ
  • リースバック=売買契約+賃貸借契約。所有者から借主に立場が変わる
  • 買主・貸主が不動産会社か第三者かで、手数料や交渉相手が変わる
  • 生活資金・ローン返済・施設入居資金の確保が主な利用目的

リースバックのメリット・デメリット

結論

最大のメリットは「引っ越さずにまとまった資金が手に入る」こと。代わりに所有権を失い、相場より安く売り、家賃を払い続けるという3つの負担を引き受けます。

リースバックは便利な一方で、通常の売却や借入とは違うコストの払い方をしています。メリットとデメリットを並べて、自分にとって何が一番大事かを先に決めておくと判断がぶれません。

メリット

  • 住み慣れた家に住み続けながら、一括で資金を受け取れる
  • 引っ越しや仮住まいの手間がない
  • 契約条件によっては固定資産税や修繕費の負担がなくなる
  • 施設入居などで退去する時期が来ても、空き家の管理や売却に悩まずに済む

デメリット

  • 所有権が移り、設備の設置やリフォームに貸主の承諾が要る
  • 売却価格が周辺相場より低くなりやすい
  • 毎月の家賃が発生し、途中で増額される可能性もある
  • 定期借家だと、希望しても住み続けられないことがある

メリット:住み続けながら一括で資金が入る

ガイドブックは特徴の1つ目に「住み慣れた自宅に住み続けながら一括で資金を受け取れる」ことを挙げています。また、自宅を持っていれば固定資産税などの税金や修繕費を払う必要がありますが、リースバックでは事業者が所有者になるため、契約条件によってはこれらの支払いが不要になります。

ただし、ガイドブックは同時に「家賃は修繕費等を含め、貸主が負担する様々な費用も踏まえて設定されている」とも書いています。税金や修繕費が消えるのではなく、家賃に含まれて形を変えると考えておくのが正確です。

デメリット:所有権・価格・家賃の3つ

1つ目は所有権です。家は事業者の持ち物になるので、たとえば設備を新しく付けるときは貸主の承諾が必要です。国交省の報告書には、蓄電池の設置を契約したあとで貸主から「設置するなら退去時に買い取ってもらう」と言われた事例も載っています。

2つ目は価格、3つ目は家賃です。事業者は買った家を貸して家賃収入を得たり、退去後に再販売したりして利益を出すため、買取価格は低め、家賃は買取価格から逆算した水準になりがちです。この2つは次の章で数字を使って確認します。

見落としやすいのが、借主として退去時の原状回復を求められる点です。ガイドブックは、契約期間中に亡くなった場合、家族や親族が相続によって原状回復などの責任を負う場合があると注意しています。

仕組みが知られていないことによるトラブル

国交省が令和3年度に行った消費者アンケートでは、リースバックを「初めて聞いた」人が66.2%、「仕組みを知っている」人は合わせて12.8%にとどまりました。定期借家契約についても54.5%が「初めて聞いた」と答えています。

仕組みがよく知られていないことから、ガイドブックには強引な勧誘、相場より著しく低い価格での売却、再契約を拒まれて退去を迫られたといったトラブル事例が並んでいます。トラブル事例の詳しい内容と防ぎ方は、リースバックの失敗パターンと回避策の記事でまとめて解説しています。

家賃と売却価格の関係

結論

リースバックの家賃は周辺の家賃相場ではなく「買取価格×利回り」で決まることがあるため、売却価格と家賃はセットで考えます。家賃の総額が売却代金を超えるまでの年数を、契約前に必ず計算しましょう。

ガイドブックはポイント3で「『売却で受け取る金額』と、『数年かけて賃料として支払う金額』、どちらが高いか自分で計算して比較しましょう」と呼びかけています。ここでは、その計算に必要な数字の決まり方を見ていきます。

売却価格は相場より低くなりやすい

国交省の報告書によると、令和2年度にリースバックを扱う事業者39社に「買取価格の周辺相場に対する割合」を聞いたところ、「7割以下」が全体の50%でした。通常の仲介で市場に売り出す場合と比べ、受け取れる金額が小さくなる可能性が高いということです。

報告書にはさらに、市場で1億2,000万円相当の自宅を700万円で売却してしまった事例も載っています。提示された金額が妥当かどうかは、リースバック事業者以外の不動産会社にも査定を頼まなければ判断できません。

具体例

周辺相場3,000万円の家を相場の7割で売った場合

  • 周辺相場(通常の売却で見込める価格):3,000万円
  • リースバックの買取価格:3,000万円 × 70% = 2,100万円
  • → 相場との差額:900万円

この900万円が「住み続けられる権利」のために手放す金額の目安です。差額に見合う価値があるかを、家賃の総額と合わせて判断します。

家賃は買取価格から逆算されることがある

国交省の検討会資料に載った事業者の回答(賃料の査定方法・自由回答の抜粋)には、「買取価格×(6〜8%÷12か月)」という計算方法が挙げられています。ほかに「周辺相場と利回り」「相場賃料」といった回答もあり、決め方は事業者によって違います。

利回りで決める方式では、買取価格が高いほど家賃も高くなる関係になります。「高く買ってもらう」と「家賃を安くする」は両立しにくいので、2つの数字を一緒に交渉するのが現実的です。

具体例

買取価格2,100万円で「×6〜8%÷12か月」の場合の家賃

  • 利回り6%:2,100万円 × 6% ÷ 12 = 月10万5,000円
  • 利回り8%:2,100万円 × 8% ÷ 12 = 月14万円
  • → 年間の家賃は126万〜168万円

同じ買取価格でも、利回りが2%違うだけで年42万円の差になります。提示された家賃が周辺の同じような家の家賃と比べてどうかも確認しましょう。

家賃の総額が売却代金を超えるまでの年数

手元に入ったお金から家賃を払い続けると、いずれ底をつきます。目安になるのは「売却代金÷年間家賃」で出る年数です。国交省の報告書には、約2,000万円で売って家賃が約20万円だったため、10年住むと家賃の合計が売却代金を上回ると後から気づいた事例が載っています。

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売却代金 月額家賃 年間家賃 家賃総額が売却代金を超える時期
2,100万円 10万5,000円 126万円 約16年8か月後
2,100万円 14万円 168万円 12年6か月後
2,000万円 20万円 240万円 8年4か月後

※売却代金÷年間家賃の単純計算。ローン返済などで手元に残る額が少ない場合や、家賃が途中で増額された場合はもっと早くなる。更新料・共益費・税金は含まない。

注意

売却代金から住宅ローンの残りを返すと、家賃に回せるお金はさらに減ります。ガイドブックも、受け取った資金から家賃を払い続ける場合「いずれ底を突いたり、途中で賃料が増額されて資金が不足したりする可能性」があると注意しています。

この項目のまとめ
  • 買取価格は「相場の7割以下」と答えた事業者が50%
  • 家賃は「買取価格×6〜8%÷12か月」のように逆算される例がある
  • 「売却代金÷年間家賃」で、何年住むと逆転するかを先に計算する

定期借家と普通借家の違い(借地借家法)

結論

普通借家なら貸主に正当事由がない限り更新されますが、定期借家は期間満了で終わり、住み続けられるかは貸主との再契約しだいです。リースバックでは定期借家が多く使われています。

「住み続けられる」と聞いて契約しても、何年住めるかは賃貸借契約の種類で決まります。国交省の報告書によると、事業者に締結している契約の種類を聞いたところ(複数回答)、「定期借家契約」が80%で最も多い結果でした。

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項目 普通借家契約 定期借家契約
契約方法 書面でも口頭でも可能 公正証書等の書面または電磁的記録に限る。さらに「更新がなく期間満了で終わる」ことを、貸主が事前に書面を交付して説明する必要がある
期間 1年以上(1年未満は期間の定めのない契約とみなされる) 短期・長期とも制限なし
期間満了時 借主が希望すれば、貸主に正当事由がない限り更新される 期間満了で終了し、更新はない(続けるには再契約)
借主からの中途解約 特約があれば可能 特約があれば可能。床面積200㎡未満の住まいで、転勤・療養・親族の介護などやむを得ない事情があれば、特約がなくても申入れから1か月で終了
借主が亡くなったとき 賃借権は相続される 賃借権は相続されるが、期間満了で終了する

※国土交通省「住宅のリースバックに関するガイドブックの作成に際しての検討会での検討内容について」の表と、借地借家法26条・28条・29条・38条をもとに作成。

普通借家契約:正当事由がなければ更新される

借地借家法26条により、期間の定めがある建物の賃貸借で、期間満了の1年前から6か月前までに更新しない旨の通知がなければ、同じ条件で更新したものとみなされます。そして28条により、貸主からの更新拒絶や解約の申入れには「正当の事由」が必要です。

つまり普通借家なら、家賃をきちんと払っている限り貸主の都合だけで追い出されることはないのが原則です。長く住み続けたい人にとっては、こちらの契約にできるかどうかが最初の交渉ポイントになります。

用語の補足:正当の事由

貸主が更新を断るために必要な理由のこと。貸主・借主それぞれが建物を使う必要性、これまでの経過、建物の状態、立ち退き料の申出などを総合して判断されます(借地借家法28条)。

定期借家契約:期間満了で終わり、再契約は合意しだい

借地借家法38条の定期建物賃貸借は、書面で契約し、事前に説明書面を交付することで「契約の更新がない」と定められる契約です。期間が1年以上なら、貸主は満了の1年前から6か月前までに「期間満了で終了する」と通知する必要があります。

  1. 契約開始書面で契約。「更新なし」の説明書面を受け取る
  2. 満了の1年前〜6か月前貸主から終了の通知が届く期間
  3. 再契約の交渉貸主と借主の双方が合意すれば住み続けられる
  4. 期間満了再契約しなければ退去
図:期間1年以上の定期借家契約の流れ(借地借家法38条)

ガイドブックは、事業者が「再契約の予定がある」と言っているだけでは住み続けられる保証にならないと注意しています。再契約の条件が契約書に書かれているかを確認し、書かれていなければ、期間満了で出ていく前提で資金計画を立てるのが安全です。

POINT

家賃の増減ルールも契約の種類で変わる

  • 借地借家法32条により、経済事情の変動などで家賃が不相当になれば、貸主・借主とも増減を請求できる
  • 定期借家で「家賃の改定に関する特約」がある場合は、32条は適用されず特約が優先される(38条9項)

事業者が家を第三者に売ったらどうなるか

リースバック事業者が、借りている途中の家を別の会社や投資家に売ることもあります。借地借家法31条により、建物の賃貸借は登記がなくても建物の引渡しを受けていれば新しい所有者に対抗できます。住み続けている借主は、この条件を満たしているのが通常です。

ただし、引き継がれるのは今の契約の内容までです。定期借家なら期間満了で終わる点は変わらず、ガイドブックが指摘するとおり、新しい貸主から再契約を断られる可能性があります。前の事業者との口約束は、新しい貸主には通じないと考えておきましょう。

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買戻しはできる?条件と注意点

結論

買戻しは「当然の権利」ではなく、事業者との約束ごとです。「いつまでに」「いくらで」が契約書に具体的に書かれていなければ、買い戻せないと考えておきましょう。

広告で「将来買い戻せる」とうたわれていても、ガイドブックは「買い戻せる条件や買戻し価格によっては買い戻せない可能性もある」と注意しています。買戻しを考えているなら、売買契約の段階で条件を固めておく必要があります。

民法の買戻し特約は最長10年

民法579条の「買戻しの特約」は、売買契約と同時に結ぶことで、売主が代金と契約費用を返して売買を解除できる仕組みです。580条により買戻しの期間は10年を超えられず、期間を定めなかった場合は5年以内に買い戻さなければなりません。

国交省の報告書は、この期間の上限があるため、賃貸借の期間が10年を超えると買戻し特約では買い戻せなくなることが考えられると指摘しています。いったん定めた期間は後から延ばせない点(580条2項)にも注意が必要です。

「再売買の予約」は契約書の書き方しだい

実際のリースバックでは、事業者が将来もう一度売主に売る約束をする「再売買の予約」という形がとられることもあり、この場合は期間を当事者の話し合いで決められます。ただし内容は契約書の書き方しだいで、法律が守ってくれる範囲は限られます。

報告書には、2年後に買い戻すつもりだったのに自宅が売りに出されていた事例や、買戻し価格が売却金額の5倍程度と言われた事例が載っています。事業者が家を第三者に売る場合に、再売買の条項を買主に引き継がせる義務があるかも確認しておきましょう。

  • 買戻しの期限(「いつまでに申し出れば買えるか」)が書かれている
  • 買戻し価格、またはその計算方法が書かれている
  • その金額を自分(または家族)が本当に払えるか試算した
  • 家賃の滞納があると買戻しできなくなる条件かどうか確認した
  • 事業者が第三者に売った場合も買戻しの約束が引き継がれる
具体例

2,100万円で売り、月14万円の家賃で5年住んでから買い戻す場合

  • 5年間に払う家賃:14万円 × 60か月 = 840万円
  • 買戻し価格が仮に売却代金と同じ2,100万円でも、5年間の支出は合計2,940万円
  • → 売却代金を840万円上回る支出になる

買戻し価格が売却代金より高く設定されていれば、支出はさらに増えます。買戻しを前提にするなら、その資金をどう用意するかまで決めてから契約しましょう。

リースバックが向いている人・向かない人

結論

「住む期間が決まっている」「家賃を払える収入や資金がある」人には向きます。「一生住み続けたい」「家を子に残したい」人には向きません。

ガイドブックはポイント1で、不動産業者や金融機関など複数の事業者に相談し、自分のライフプランに合った条件・手法を選ぶよう勧めています。リースバックが合うかどうかは、「あと何年その家に住むか」と「家賃を何年払えるか」でほぼ決まります。

向いている人

  • 高齢者施設の入居待ちなど、退去する時期のめどが立っている
  • 建て替えや住み替えの完成まで、今の家に住みながら資金が必要
  • 年金や給与など、売却代金とは別に家賃を払える収入がある
  • 退去後の空き家の管理や処分の負担を避けたい

ガイドブックの利用例は、施設入居までの2年間や、実家の建て替え完成までの1年間など、期間がはっきりした使い方ばかりです。この場合、定期借家の「期間満了で終わる」性質はむしろ合っています。

向かない人

「死ぬまでこの家に住みたい」という人は、定期借家での再契約拒否や家賃の増額のリスクを負い続けることになります。家賃を売却代金だけで払い続ける計画なら、前の章の計算どおり、いずれ資金が尽きる時期が来ます。

また、家を子に相続させたい人にも向きません。所有者でなくなるので家そのものは残らず、ガイドブックによれば借主として亡くなった場合は相続人が原状回復などの責任を負うこともあります。

ご家族と一緒に住んでいる場合は、所有者だけで契約できてしまう点にも注意が必要です(国交省の報告書は、夫名義の家なら妻の承諾がなくても契約できると指摘しています)。

認知症などで判断能力が低下した親の家については、本人が有効に契約できるかという問題もあります。後見人を通じた売却の手続きは成年後見人による不動産売却の解説を参考にしてください。

ほかの方法との比較

ガイドブックは、自宅に住みながら資金を得る方法として、リースバックのほかにリバースモーゲージ(自宅を担保にした融資)と、通常の売却で引渡し時期を調整する方法を挙げています。それぞれの違いを大まかに比べると次のとおりです。

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方法 所有権 毎月の支払い 住める期間
リースバック 事業者に移る 家賃 賃貸借契約の内容しだい
リバースモーゲージ 自分に残る(担保に入る) 利息(元金は契約終了時に一括返済が一般的) 契約終了(死亡時など)まで。終了時に担保の家を処分して返済
通常の売却+引渡し時期の調整 買主に移る なし 買主と合意した引渡し日まで

※国土交通省の検討会報告書の記述をもとに作成。条件は商品・契約ごとに異なる。

通常の売却でも、売り出す際に引渡し時期を指定したり、買主と交渉したりして一定期間住み続けられる場合があります。売却価格を相場に近づけたいなら、まずこの方法が使えないかを検討する価値があります。リバースモーゲージとの詳しい比較はリバースモーゲージの仕組みとリスクの記事で扱っています。

結論

リースバックは「期間限定で住み続けたい人」のための仕組みです。住む期間と家賃を払える年数を先に決め、それに合う契約の種類と価格かどうかで判断しましょう。

契約前にやること(解約・税金・査定)

結論

リースバックの売買契約はクーリング・オフで取り消せないため、署名前の確認がすべてです。税金の扱いと、通常の売却ならいくらになるかを先に調べておきましょう。

ガイドブックのトラブル事例の多くは、契約してから条件に気づいたものです。ここでは、契約書にサインする前にやっておくべきことを順番にまとめます。

クーリング・オフは使えない

宅地建物取引業法37条の2のクーリング・オフは、宅建業者が自ら売主になる売買契約で、事務所等以外の場所で申し込んだ買主を守る制度です。国交省の報告書が明記しているとおり、消費者が宅建業者に自宅を売る場合には、この規定で契約を解除することはできません。

売主側から解除するには、受け取った手付金の倍額を返す「手付倍返し」が一般的で、それ以外は契約書の違約金がかかることが多いとされています。ガイドブックには、契約後に解約を申し出たら約400万円の違約金を求められた事例が載っています。

注意

不実の告知など不当な勧誘があった場合は、消費者契約法により契約を取り消せる場合もあるとガイドブックは補足しています。強引な勧誘を受けたら、一人で判断せず消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センターに相談してください。

売却代金には税金がかかることもある

リースバックも自宅の売却なので、利益(譲渡所得)が出れば所得税・住民税の対象になります。国税庁のNo.3302 マイホームを売ったときの特例は、現に自分が住んでいる家屋などを売ったときに、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。

ただし、親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却は対象外で、適用には確定申告が必要です。短期・長期で税率が変わる仕組みは短期譲渡所得の税率と判定方法で解説しています。個別の判断は税務署や税理士に確認しましょう。

署名前に通常の売却の査定額と比べる

ガイドブックのポイント4は、提示された売却価格について複数の事業者に意見を聞くことです。リースバック事業者の提示額だけを見ていると、相場から大きく外れていても気づけません。

  1. 通常の売却の査定を取るリースバック事業者以外の不動産会社にも査定を頼み、相場を把握する。
  2. 提示額と家賃を並べて計算する相場との差額と「売却代金÷年間家賃」の年数を出す。ローン残高も差し引く。
  3. 賃貸借契約の種類と期間を確認する普通借家か定期借家か、再契約・中途解約・家賃改定・修繕負担の条件を読む。
  4. 買戻し・違約金の条件を確認する期限と価格、解約時の違約金の額を契約書で確かめる。
  5. 家族と相談してから署名するその場で決めず、契約書は必ず受け取って手元に保管する。

通常の売却の査定額が分かれば、「住み続ける価値」にいくら払うことになるのかがはっきりします。その差額を見てから方法を決めるのが、後悔しない順番です。

ローン残債・共有名義・家賃の支払い能力を確かめる

リースバックも自宅の売却なので、通常の売却と同じ前提条件があります。事業者に相談する前に、次の3点を確認しておきましょう。

  • 住宅ローンが残っているなら、売却代金で完済して抵当権を消せるか
  • 夫婦や親子の共有名義なら、共有者全員が売却に同意しているか
  • 売却後も家賃を払い続けられる収入や資金があるか

共有の家は、民法251条により他の共有者の同意がなければ変更を加えられず、家全体を売るには全員の同意が必要です。ローンを売却代金で返し切れない場合は、一般的に抵当権が残ったままでは売れないため、まず借入先に相談します(残債が売却価格を上回るケースはオーバーローン売却の解説が参考になります)。また、売却後は借主になるので、事業者が家賃の支払い能力を確認するのが一般的です。

よくある質問

リースバックの家賃は周辺の家賃相場と同じですか?

同じとは限りません。国交省の検討会資料に載った事業者の回答には「買取価格×(6〜8%÷12か月)」のように買取価格から家賃を計算する例があり、周辺の家賃相場とは別の決まり方をすることがあります。

契約前に周辺の家賃相場と比べ、何年分の家賃で売却代金を超えるかを計算しておきましょう。

リースバックの契約はクーリング・オフできますか?

自宅を宅建業者に売る場合、宅建業法のクーリング・オフは適用されません。解約には手付倍返しや違約金が必要になることが多いため、署名前に家族と内容を確認してください。不実の告知など不当な勧誘があった場合は、消費者契約法で取り消せる場合もあります。

定期借家契約でも長く住み続けられますか?

定期借家契約は期間満了で終了し、更新はありません。住み続けるには貸主との再契約が必要で、貸主が拒めば退去となります。

長く住みたい場合は、普通借家契約にできるか、再契約の条件が契約書に書かれているかを確認しましょう。

リースバックで売った家は必ず買い戻せますか?

買戻しは当然の権利ではありません。民法の買戻し特約は期間が最長10年で、それ以外は事業者との再売買の約束しだいです。「いつまでに」「いくらで」買い戻せるかが契約書に具体的に書かれているか、その金額を払えるかを契約前に確認してください。

リースバックで自宅を売っても3,000万円の特別控除は使えますか?

国税庁のマイホームを売ったときの特例は、現に自分が住んでいる家屋などを売った場合に、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。親子や夫婦など特別の関係がある人への売却は対象外で、確定申告が必要です。適用できるかは税務署か税理士に確認してください。

この記事のまとめ

  • リースバックは売買契約+賃貸借契約。所有者から借主になり、毎月家賃を払う
  • 買取価格は「相場の7割以下」が事業者の50%。家賃は買取価格×利回りで決まる例がある
  • 「売却代金÷年間家賃」で、家賃総額が売却代金を超える年数を契約前に計算する
  • 事業者の80%が定期借家。期間満了後に住めるかは再契約しだい
  • 買戻しは当然の権利ではなく、民法の買戻し特約は最長10年
  • クーリング・オフは使えないので、署名前に通常の売却の査定額と比べる

リースバックを検討するなら、まず「通常の売却ならいくらになるか」を知ることから始めてください。その金額があって初めて、提示された価格と家賃が妥当かを判断できます。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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