認知症の親の不動産売却はできる?意思能力の判定と成年後見・買取の実務

認知症の親名義の実家を売却するための成年後見の手続きと費用を解説する記事のイメージ

親が認知症になり、介護費用や施設の入居金を用意するために実家を売ろうとしたところ、不動産会社や司法書士から「このままでは契約できません」と言われた——そうした相談が年々増えています。名義は親本人なのに、同居している子どもが売ることもできない。理由は名義ではなく「意思能力」にあります。

結論から言うと、売買の意味を自分で理解できる状態なら、認知症の診断があっても本人が売主として売れます。理解できない状態まで進んでいる場合は、家族が代わりに売ることはできず、成年後見人を選任するしかありません。委任状を書いてもらっても無効です。

ただ、成年後見は「売るためだけの手続き」ではありません。売却が終わっても本人が亡くなるまで続く制度です。費用と期間、そして後に残る負担まで知ったうえで、使うかどうかを決める必要があります。

この記事を読むとわかること

  • 認知症でも本人が売主になれるケースと、意思能力の判定で見られるポイント
  • 成年後見を使って売るまでの流れと、申立てから1〜4か月という期間の目安
  • 申立ての実費(1万円前後)と、月2万円からの後見人報酬が売却後も続くこと
  • 本人の居住用不動産に必要な家庭裁判所の許可と、3,000万円控除の「3年」の期限
  • 後見人がついた後の売却で、買取のほうが進めやすくなる理由

この記事の結論

  1. 親に意思能力がなければ、子どもが委任状で代わりに売ることはできない。意思能力を欠いた状態でした契約は無効になる(民法第3条の2)。
  2. すでに判断能力を失っているなら、現実的な方法は成年後見だけ。家族信託や任意後見は判断能力があるうちにしか契約できず、間に合わない。
  3. 後見の利用開始までは早ければ1〜2か月、長くても4か月以内が目安。売却活動と許可の期間を足すと、全体で半年前後を見ておく。
  4. 本人の居住用不動産を売るには家庭裁判所の許可が必要で、許可を得ずにした売却は無効になる。
  5. 申立ての実費は1万円前後だが、専門職が後見人になると報酬は月2万円が目安で、売却後も本人が亡くなるまで続く。

認知症の親の不動産売却は原則できない|鍵は「意思能力」

結論

認知症でも、売買の意味を理解できる意思能力が残っていれば本人が売主として売れます。失っている場合は家族でも代わりに売れず、成年後見人の選任が必要です。

厚生労働省の推計では、65歳以上の認知症高齢者数は2025年に約471万6,000人、高齢者に対する有病率は12.9%とされています。高齢者の約8人に1人という規模で、持ち家を持ったまま判断能力が低下する人が出てくる計算です。

一方、家庭裁判所に持ち込まれる成年後見関係事件の申立件数は、2025年の1年間で4万3,159件でした。認知症高齢者の数に比べれば非常に少なく、多くの家庭が「売れない」と気づいた時点で止まっていることがうかがえます。

意思能力がないと売買契約は無効になる

不動産の売買で問題になるのは、名義でも年齢でもなく意思能力です。民法第3条の2は、意思表示をしたときに意思能力がなかった場合、その法律行為は無効と定めています。

用語の補足:意思能力

自分がした行為によって権利や義務がどう変わるかを理解できる精神的な能力のことです。「この家を、この金額で、この相手に売ると、家は相手のものになり自分はお金を受け取る」と理解できるかどうかが判断の対象になります。

不動産の売買は金額が大きく、決済・引渡し・登記と後戻りのきかない手続きが続きます。後から無効になりうる契約を結ばないため、契約や決済の場では売主本人に売る意思と理解があるかが確認されます。ここで意思能力に疑いが生じれば、その時点で取引は止まります。

子どもが委任状で代わりに売ることもできない

「本人が施設にいるので、委任状をもらって自分が手続きする」という方法を考える人は多いのですが、これは成立しません。委任状で代理人に権限を与える行為そのものが法律行為であり、本人に意思能力がなければ委任状自体が無効になります。

親の名義で子どもが実印を押しても、同じことです。登記の段階で本人確認が入るため、実務上もまず通りません。

注意

判断能力が怪しい状態の親に署名させて売却を進めるのは、後から契約の無効を主張されるリスクを買主に負わせる行為です。他の相続人から「勝手に売った」と争われる原因にもなります。急いでいても、ここは手順を踏むしかありません。

「認知症の診断」=即売却不可ではない

見落とされがちですが、認知症と診断されていることと、意思能力がないことはイコールではありません。判断されるのは診断名ではなく、その取引を理解できているかどうかです。軽度で、物件・価格・相手を自分の言葉で説明できる状態なら、本人が売主として契約できるケースがあります。

ただし、この判断は家族が決めるものではありません。不動産会社・司法書士・金融機関がそれぞれの立場で確認し、少しでもグレーだと判断されれば取引を見送られます。

  • 自分の家がどこにある、どんな物件かを説明できる
  • なぜ売るのかを自分の言葉で言える
  • 提示された価格が高いか安いかの感覚を持っている
  • 売った後どこで暮らすのかを理解している
  • 日付・場所・面会している相手の見当がついている
POINT

迷ったら「早く動く」が唯一の正解

  • 意思能力は時間とともに失われる方向にしか進まないため、様子を見るほど選択肢が減る
  • 本人が売れる状態なら、通常の売却として3〜6か月で完了できる
  • 失ってからでは、後見の申立てで数か月を追加で使うことになる

売る方法は3つ|成年後見・家族信託・本人が売るの分かれ道

結論

すでに判断能力を失っているなら、選べるのは成年後見だけです。家族信託や任意後見は判断能力があるうちにしか契約できず、認知症が進んでからでは間に合いません。

3つの選択肢を比較する

親の不動産を売るルートは、大きく3つに分かれます。どれを使えるかは「今の判断能力」で決まり、自分で選べるわけではないのが重要な点です。

横にスクロールできます

方法 使える時期 家庭裁判所の関与 売却までの目安
本人が売る 意思能力があるうち なし 3〜6か月(通常の売却)
任意後見・家族信託 判断能力が十分なうちに契約 任意後見は監督人選任の申立てが必要 契約済みなら比較的早い
法定後見(成年後見) 判断能力を失った後でも使える 選任の審判+居住用は処分許可 後見開始に1〜4か月+売却期間

※期間は目安です。鑑定が必要になった場合や、許可の判断に時間がかかる場合は長くなります。

家族信託・任意後見は「判断能力があるうち」しか使えない

法務省の資料では、任意後見制度は「本人に十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ自ら選んだ代理人に代理権を与える契約を公正証書で結んでおくもの」と説明されています。つまり契約できるのは元気なうちだけです。

家族信託(民事信託)も同じで、信託契約を結ぶ時点で本人に契約能力が必要です。「認知症になったから家族信託で対応しよう」という順番は成り立ちません。ここが最も多い行き違いです。

POINT

親が元気なうちにできる備え

  • 任意後見契約を公正証書で結んでおく(将来売る可能性があるなら不動産の処分権限も入れる)
  • 家族信託で、受託者が不動産を管理・処分できるようにしておく
  • 権利証(登記識別情報)・固定資産税の納税通知書の保管場所を共有しておく
  • 購入時の売買契約書を探して保管する(取得費の証明になり、税額が変わる)

共有名義に認知症の人がいるとどうなるか

親と子の共有、あるいは兄弟の共有になっている不動産では、共有者の1人が認知症というパターンもあります。民法第251条は、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が必要と定めており、売却のような法律的な処分もこの「変更」に含まれると解されています。

結果として、共有者の1人が意思能力を失うと、不動産全体を売ることができなくなります。自分の持分だけを単独で売ることは可能ですが、買い手が持分買取業者などに限られ、価格も大きく下がります。共有名義の売却でつまずく場面は相続で共有名義になった不動産の売却方法でも整理しています。

注意

いちばん動けなくなるのは「兄弟の共有+そのうち1人が認知症」の形です。全体売却には全員の同意が必要で、認知症の共有者について後見人を選任しない限り前に進みません。親の相続時に安易に共有にしておくと、数年後にこの状態になります。

この項目のまとめ
  • 使える方法は「今の判断能力」で決まる。元気なうちなら任意後見・家族信託という選択肢がある
  • 判断能力を失った後に残るのは法定後見だけ
  • 共有名義は共有者1人の認知症で全体の売却が止まる

成年後見を使って売るまでの流れと期間

結論

後見の利用開始までは早ければ1〜2か月、長くても4か月以内が目安です。売却先を決める期間と許可の期間を足すと、全体では半年前後を見ておくと安全です。

成年後見の申立ては、本人の住所地の家庭裁判所に対して行います。申立てができるのは本人・配偶者・四親等内の親族などで、子どもからの申立ては一般的なケースです。手続きの詳細は成年後見人が不動産売却するにはでも解説しています。

申立てから引渡しまでの6ステップ

  1. 医師の診断書を取る家庭裁判所の所定書式で、かかりつけ医に作成してもらいます。ここで示される判断能力の程度によって、後見・保佐・補助のどれを申し立てるかが決まります。
  2. 申立書類をそろえて家庭裁判所に申し立てる申立書、診断書、本人の戸籍謄本・住民票、後見登記されていないことの証明書、財産目録、収支予定表などが必要です。書式と必要書類は家庭裁判所ごとに公開されています。
  3. 審理・必要なら鑑定を経て後見開始の審判家庭裁判所が本人や申立人から事情を聞き、必要と判断すれば医師の鑑定を行います。審判が確定すると後見が始まり、法務局に登記されます。
  4. 後見人が財産を調査して裁判所に報告する選任された後見人は本人の財産を調査し、財産目録と収支予定表を家庭裁判所に提出します。売却の検討はここからが本番です。
  5. 査定を取り、売却先と価格を決める後見人は本人の財産を適正な価格で処分する責任があるため、複数社の査定で価格の根拠を残します。買主と価格が固まった段階で次に進みます。
  6. 居住用なら処分許可を申し立て、許可後に契約・決済家庭裁判所に居住用不動産の処分許可を申し立て、許可が出てから売買契約・決済・引渡しを行います。許可前に契約しないのが原則です。

期間の目安は「後見開始まで1〜4か月+売却」

厚生労働省の成年後見制度の案内では、申立てから利用開始までの期間は「早ければ1〜2か月、長くても4か月以内くらい」とされています。これに書類をそろえる準備期間と、売却活動・許可申立ての期間が積み上がります。

  1. 申立ての準備診断書の取得と書類集めに1か月前後
  2. 後見開始の審判申立てから1〜4か月(鑑定が入ると延びる)
  3. 売却先と価格の決定査定・募集に1〜3か月
  4. 処分許可→契約・決済許可が出てから契約。全体で半年前後
図:認知症の親の実家を成年後見で売るまでのスケジュール
注意

申立てをした後は、家庭裁判所の許可を得なければ申立てを取り下げることができません。「とりあえず申し立てて、気が変わったらやめる」ということはできないため、後述する費用と、売却後も続く負担まで確認してから踏み切ってください。

この項目のまとめ
  • 後見開始までが1〜4か月、売却と許可を足して全体で半年前後
  • 居住用不動産は、許可が出てから契約するのが原則
  • 申立て後は家庭裁判所の許可なく取り下げられない

実家を売るには家庭裁判所の許可が必要|居住用不動産の壁

結論

後見人が選任されても、本人の居住用不動産は家庭裁判所の許可なしに売れません。許可を得ずにした売却は無効になります。

許可なく売れば、その売買は無効になる

民法第859条の3は、成年後見人が本人に代わって居住用の建物やその敷地を売却・賃貸・賃貸借の解除・抵当権の設定などで処分するには、家庭裁判所の許可を得なければならないと定めています。

この効力について、国税庁の文書回答事例でも「家庭裁判所の許可なくしてなされた成年被後見人所有の居住用不動産の売却は無効なものとなります」と整理されています。許可は形式ではなく、契約の有効性そのものに直結します。

趣旨は本人の保護です。住む場所が変わることは本人の精神状態に大きく影響するため、居住用については裁判所が個別に判断する仕組みになっています。

許可が出やすいケース・出にくいケース

許可は「売ることが本人のためになるか」で判断されます。売却代金の使い道と、価格の妥当性、そして本人が戻る見込みがあるかどうかが中心的な論点です。

判断 よく見られる事情
認められやすい 施設の入居費用や医療費に充てる必要がある/空き家の維持費や固定資産税が本人の負担になっている/相場に見合う価格で売る
認められにくい 本人が自宅に戻る見込みが残っている/売却代金の使い道が説明できない/親族が相場より安く買い取る(本人の利益を害する)

※最終的な判断は個別の事情によります。管轄の家庭裁判所の指示に従ってください。

国税庁の同じ文書回答では、この許可の申立てにかかった費用は譲渡費用に当たると解してよいという見解も示されています。譲渡所得を計算する際に差し引ける費用なので、領収書は残しておいてください。

老人ホームに入っている実家も「居住用」に含まれることがある

「もう施設に入っていて誰も住んでいないのだから居住用ではない」と考えたくなりますが、実務ではそう扱われないことがあります。現に住んでいなくても、生活の本拠として戻る可能性が残っていれば居住用として扱われる、という広めの解釈が取られる場面があるためです。

判断に迷う物件なら、許可を申し立てておくほうが安全です。許可が不要だったとしても損はありませんが、必要だったのに取らずに売れば契約が無効になり、買主にも迷惑がかかります。

結論

居住用かどうか迷ったら、許可を申し立てる。許可を取らずに売った契約は無効で、決済や登記まで終わってから巻き戻す事態になりかねません。判断は管轄の家庭裁判所に確認するのが確実です。

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費用はいくら?申立ての実費と、売却後も続く後見人報酬

結論

申立ての実費は1万円前後で済みます。負担が大きいのは後見人報酬で、月2万円が目安、しかも本人が亡くなるまで続きます。

申立てにかかる実費の内訳

申立てそのものにかかるお金は、意外に少額です。鑑定が不要なら1万円前後で収まります。

費目 金額
申立手数料(収入印紙) 800円
後見登記手数料 2,600円
郵便切手 数千円(前橋家庭裁判所の例では4,480円)
医師の診断書 医療機関ごとに異なる
鑑定費用(必要な場合) 主治医が行うときは5万円以下、別の医師が行うときは10万円以下が多い

※郵便切手の金額や必要書類は家庭裁判所ごとに異なります。申立て前に管轄の裁判所の一覧表で確認してください。

後見人報酬は月2万円が目安|本人が亡くなるまで続く

見落としやすいのが後見人報酬です。東京家庭裁判所が公表している報酬額のめやすでは、通常の後見事務を行った場合の基本報酬は月額2万円とされています。管理する財産が多い場合は増額され、1,000万円超5,000万円以下で月3〜4万円、5,000万円超で月5〜6万円が目安です。

ここで効いてくるのが不動産の売却です。実家を売って現金化すると管理財産額が増え、報酬の区分が上がることがあります。売却で手元の資金は増えますが、同時に毎月のコストも上がる構造です。

さらに重要なのが期間です。家庭裁判所の案内では、成年後見人の仕事は「本人が病気などから回復し判断能力を取り戻すか、本人が亡くなるまで続く」とされています。不動産を売り終えても後見は終わりません。後見人の都合で自由に辞任することもできません。

注意

後見人の候補者を申立てのときに挙げることはできますが、実際に誰を選ぶかを決めるのは家庭裁判所です。家族を候補に立てても、専門職(弁護士・司法書士など)が選任されることがあります。希望どおりになる前提で計画しないでください。

10年続いた場合の総額を試算する

具体例

実家1,500万円を売却し、専門職後見人が10年続いた場合

  • 前提:実家を1,500万円で売却、ほかに預貯金500万円 → 管理財産は約2,000万円
  • → 管理財産1,000万円超5,000万円以下の区分で、基本報酬を月3万円と想定
  • → 年間 36万円(3万円×12か月)
  • → 本人が10年ご存命なら 合計360万円

報酬は本人の財産から支払われます。売却代金は本人のためにしか使えないため、家族が自由に使えるお金が増えるわけではない点も押さえておいてください。

この項目のまとめ
  • 申立ての実費は1万円前後(鑑定が入れば+5〜10万円程度)
  • 基本報酬は月2万円が目安で、管理財産が増えると上がる
  • 後見は売却後も、本人が亡くなるまで続く

税金はどうなる?3,000万円控除が使えるかが分かれ目

結論

本人が住んでいた家なら、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば3,000万円の特別控除が使えます。この期限を過ぎると税額が大きく変わります。

居住用財産の3,000万円特別控除と「3年」の期限

国税庁のマイホームを売ったときの特例では、自分が住んでいた家屋を売った場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるとされています。

すでに住んでいない家についても、同庁の解説で「住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにその家屋を売ること」が条件として示されています。この期間を過ぎてから売った場合は適用を受けられません。

ここが認知症のケースで効いてきます。親が施設に入った日から、すでに3年のカウントが始まっています。後見の申立てに数か月、売却と許可にさらに数か月かかるため、気づいたときには期限が目前というケースが少なくありません。

  1. 施設入居=住まなくなった日ここから3年のカウントが始まる
  2. 1年目〜2年目後見の申立てと売却準備に使える期間
  3. 3年を経過する日の属する年の12月31日この日までに売らないと3,000万円控除は使えない
図:3,000万円特別控除の「3年」の期限
注意

この控除は、配偶者や一定の親族、同族会社など特別の関係にある人への売却では使えません。「身内に買ってもらって現金化する」という方法では控除が受けられず、家庭裁判所の許可も通りにくくなります。

控除が使えるかで税額はどれだけ変わるか

用語の補足:譲渡所得

売った金額そのものではなく、売却代金から取得費(買ったときの費用。建物は減価償却後の金額)と譲渡費用(仲介手数料など)を引いた「もうけ」の部分です。税金はこの譲渡所得にかかります。

税率は所有期間で変わります。国税庁の長期譲渡所得の税額の計算では、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合、所得税15%・住民税5%とされています。これに復興特別所得税が上乗せされ、合計20.315%になります。5年以下の場合は税率が大きく上がるため、短期譲渡所得は何年まで?も確認してください。

具体例

実家を1,500万円で売った場合(所有期間5年超)

  • 前提:売却価格1,500万円、取得費(建物は減価償却後)と譲渡費用の合計600万円
  • → 譲渡所得=1,500万円−600万円=900万円
  • → 3,000万円控除が使える場合:900万円−3,000万円<0 なので税額は0円
  • → 使えない場合:900万円×20.315%=約182万円

期限に間に合うかどうかだけで、約180万円の差が生まれる計算です。親が施設に入った日付を先に確認してください。

POINT

控除を使うには確定申告が必要

  • 3,000万円控除は、要件を満たしても申告しなければ適用されない
  • 申告は売却した翌年の確定申告で行う。後見人が本人に代わって手続きする
  • 家庭裁判所の許可申立てにかかった費用は譲渡費用として差し引ける(領収書を残す)

後見で売るなら買取が進めやすい理由

結論

許可の申立てには売却の相手と価格を示す必要があります。価格と決済日が先に確定する買取は、裁判所に説明しやすく期限にも間に合わせやすいのが実務上の利点です。

許可の申立てには「誰に・いくらで売るか」が必要

居住用不動産の処分許可は、「売ってよいか」を漠然と尋ねる手続きではありません。誰に、いくらで、どういう条件で売るのかを示して判断を受けます。

仲介で売る場合、買主が現れるまで価格も相手も決まりません。買主が決まってから許可を申し立てるため、許可を待つ間に買主の都合が変わって流れることがあります。認知症の親の実家では、ここが最も読みにくい部分です。

  1. 複数社に査定を依頼価格の根拠を残す
  2. 買取価格と決済日が確定相手と条件が先に決まる
  3. 家庭裁判所に処分許可を申し立て確定した条件で説明できる
  4. 許可後に契約・決済買主が離れるリスクが小さい
図:買取を使った場合の、許可申立てと売却の進み方

買取のメリットとデメリット

メリット

  • 価格と決済日が先に決まるため、許可の申立てで条件を明確に示せる
  • 残置物や傷みをそのままの状態で引き渡せる場合がある
  • 内覧対応が要らず、本人が施設にいても手続きを進めやすい
  • 3,000万円控除の「3年」の期限に間に合わせやすい

デメリット

  • 仲介で売れた場合に比べて価格が低くなりやすい
  • 買い手が業者に限られ、物件によっては対象外になる
  • 安すぎる価格では、本人の利益を害するとして許可が得にくい
POINT

後見人は「適正価格で売った」説明を求められる

  • 買取を選ぶなら、必ず複数社の査定を取って価格の根拠を残す
  • 1社だけの提示額で決めると、安売りを疑われて許可の判断が長引く
  • 空き家のまま維持する費用と比べて判断する(空き家の管理費用は年間いくら?)

なお、親が元気なうちに売るケースも含めた実家売却全体の流れは実家売却の流れでまとめています。まだ意思能力がある段階なら、後見を使わずに売れる今のうちに動くのがいちばん費用も期間も軽く済みます。

よくある質問

親が認知症でも、子どもが代わりに実家を売ることはできますか?

本人に意思能力がなければできません。委任状による代理売却は本人に意思能力があることが前提のため、能力を失った後に作った委任状では売れません。

家庭裁判所に成年後見開始の申立てを行い、選任された後見人が本人に代わって売却する流れになります。

成年後見の申立てから売却までどれくらいかかりますか?

後見の利用開始までが、早ければ1〜2か月、長くても4か月以内が目安です。そこに売却先を決める期間と、居住用不動産なら家庭裁判所の許可を得る期間が加わるため、全体では半年前後を見ておくと安全です。

不動産を売り終えたら成年後見は終わりますか?

終わりません。成年後見人の仕事は、本人が判断能力を取り戻すか、本人が亡くなるまで続きます。

専門職が後見人になった場合は報酬も続けて発生するため、不動産を売ることだけを目的に使う制度ではない点に注意してください。

施設に入って空き家になった実家でも3,000万円控除は使えますか?

本人が住んでいた家屋であれば、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売れば対象になります。

この期限を過ぎると適用を受けられないため、後見の手続きにかかる期間を逆算して動く必要があります。

この記事のまとめ

  • 判断されるのは診断名ではなく意思能力。理解できる状態なら本人が売主として売れる
  • 意思能力を失うと委任状も無効。家族が代わりに売ることはできず、成年後見しか残らない
  • 後見開始までは1〜4か月、売却と許可を足して全体で半年前後が目安
  • 本人の居住用不動産は家庭裁判所の許可が必須で、許可なく売った契約は無効
  • 実費は1万円前後だが、後見人報酬は月2万円が目安で本人が亡くなるまで続く
  • 3,000万円控除は住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日が期限

どの選択肢を取るにしても、判断の出発点は「その家が今いくらになるか」です。金額が分かれば、施設費用をまかなえるのか、後見の費用を払っても売る価値があるのかを具体的に比べられます。まずは現在の価格を確認することから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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