子どもの成長や通勤の変化、老後の住まいの見直しなどで、今の家を売って新しい家に移ろうと考え始めた方は多いはずです。ところが、家の買い替えは「売る」と「買う」を同時に進めるため、何から手を付ければよいのか分かりにくいものです。
結論から言うと、最初に決めるべきは「売り先行」か「買い先行」かです。この順番で、資金計画の確実さ、仮住まいの要否、二重ローンのリスクがすべて変わります。そして売却益が出る場合は、3,000万円控除と買換え特例のどちらか一方しか使えません。
この記事では、査定から確定申告までの流れを順番に整理し、手元に残るお金の計算方法と、税金の特例の選び方までまとめます。
この記事を読むとわかること
- 家の買い替えの全体の流れと、7つのステップでやること
- 売り先行・買い先行・同時決済の違いと選び方
- ローン残債と諸費用を引いた「手元に残る金額」の出し方
- 引渡し日の合わせ方と、仮住まいが必要になるケース
- 3,000万円控除と買換え特例の違い、住宅ローン控除との関係
この記事の結論忙しい方はここだけ
- 家の買い替えは査定→売り方の決定→資金計画→売却活動→購入→決済・引渡し→確定申告の7ステップで進みます。
- 売却額が確定してから買う売り先行は資金計画が確実な代わりに仮住まいが必要になりやすく、買い先行は新居をじっくり選べる代わりに二重ローンのリスクがあります。
- 手元に残る金額は「売却額-ローン残債-諸費用」で考えます。仲介手数料の上限は、4,000万円で売れた場合税込138万6,000円です。
- マイホームの売却益には最高3,000万円の特別控除(所有期間を問わない)と、所有10年超・居住10年以上が条件の買換え特例(課税の繰延べ)があり、併用はできません。
- どちらの特例も、使うと新居の住宅ローン控除が受けられなくなる期間があります。売却損が出た場合の損益通算の特例は、住宅ローン控除と併用できます。
家の買い替えの全体の流れ|7つのステップ
家の買い替えは、査定から確定申告まで7つのステップで進みます。最初に今の家がいくらで売れるかを把握し、その金額から新居の予算を決めるのが基本の順番です。
家の買い替えでは、今の家の売却と新しい家の購入という2つの取引を、限られた期間の中で並行して進めます。どちらか一方だけを先に考えると、資金や住まいの空白が生まれやすくなります。
買い替えは「売る」と「買う」の2本の契約を同時に管理する
売却側には、媒介契約・売買契約・決済と引渡しがあります。購入側にも、物件探し・売買契約・住宅ローンの審査・決済があります。2本の契約の日付がずれると、二重の住居費や仮住まいが発生します。
そのため、売却と購入の担当者には、最初から「買い替えである」ことを伝えておくことが大切です。売却額の見込み、残っている住宅ローンの金額、引っ越したい時期の3つは、早い段階で共有しておきましょう。
査定から確定申告までの7ステップ
全体の流れは次のとおりです。売り先行と買い先行では、STEP4とSTEP5の順番が入れ替わります。
- 今の家の査定を受ける複数の会社の査定額を比べ、売れる価格の幅をつかみます。ローンの残高証明も手元に用意します。
- 売り先行か買い先行かを決める自己資金、ローン残債、新居の希望条件の強さから、どちらを先に進めるかを決めます。
- 資金計画を立てる売却で手元に残る金額と自己資金から、新居に使える上限額を出します。住宅ローンの事前審査もこの段階で受けます。
- 売却活動・売買契約媒介契約を結んで買主を探し、売買契約を結びます。引渡し日はこの時点で決めます。
- 新居の購入・売買契約新居を決めて売買契約を結び、住宅ローンの本審査を受けます。
- 決済・引渡し・引っ越し旧居の売却代金でローンを完済して引き渡し、新居の代金を支払って入居します。
- 翌年に確定申告売却益や売却損が出た場合、特例を使うには売った年の翌年に確定申告が必要です。
媒介契約の種類と、専任媒介の有効期間
売却を不動産会社に依頼するときは媒介契約を結びます。1社だけに任せる専任媒介契約は、宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)第34条の2で有効期間は3か月を超えることができないと定められています。
また専任媒介では、不動産会社は業務の状況を2週間に1回以上(自分で見つけた買主とも直接契約できない専属専任媒介では1週間に1回以上)報告する義務があります。買い替えでは売却の進み具合が購入の判断に直結するため、この報告を資金計画の見直しに使いましょう。
不動産会社に買主探しを依頼する契約です。複数社に頼める一般媒介、1社に任せる専任媒介、さらに自分で買主を見つけても直接契約できない専属専任媒介の3種類があります。
売り先行と買い先行の違い|どちらを選ぶか
資金に余裕がない場合や、ローンが残っている場合は売り先行が安全です。買い先行は、旧居が売れるまで2軒分の支払いに耐えられる場合に限られます。
2つの違いは「どちらの金額を先に確定させるか」です。売り先行は売却額を、買い先行は新居を先に確定させます。確定していない側の金額が、計画のぶれになります。
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| 項目 | 売り先行 | 買い先行 | 同時決済をめざす |
|---|---|---|---|
| 資金計画 | 売却額が確定してから予算を決められる | 売却額が未確定のまま予算を組む | 売却額の確定と購入がほぼ同時 |
| 仮住まい | 新居が決まらないと必要になる | 原則不要 | 日程が合えば不要 |
| 二重ローン | 発生しない | 旧居が売れるまで発生しうる | 原則発生しない |
| 新居の選び方 | 期限の中で探す | 時間をかけて選べる | 日程に合う物件に限られる |
| 売却価格 | 急がず売れる | 売り急いで値下げしやすい | 買主との日程調整が必要 |
※一般的な傾向です。実際には手元資金や物件の売れやすさで変わります。
売り先行:資金計画が確実、ただし仮住まいの可能性
売り先行は、売買契約で売却額が決まってから新居を探すため、予算オーバーや二重ローンが起きにくい方法です。売却を急ぐ必要がないので、価格交渉でも不利になりにくくなります。
一方で、引渡し日までに新居が決まらないと、賃貸住宅などの仮住まいに一度引っ越すことになります。引っ越しが2回になり、家賃や敷金・礼金もかかります。
買い先行:新居を選べる、ただし二重ローンのリスク
買い先行は、気に入った物件が見つかったときに逃さず購入できるのが利点です。引っ越しも1回で済み、旧居は空き家の状態で内覧してもらえます。
ただし、旧居のローンが残ったまま新居のローンを組むと、売れるまで2軒分の返済と固定資産税を負担します。売却期限が迫るほど値下げに応じざるを得なくなり、資金計画が崩れやすい点に注意が必要です。
- 新居を購入新居のローン返済が始まる
- 旧居の売却活動旧居のローンも返済が続く
- 売れ残り二重返済が長引き値下げへ
- 売却・完済二重返済が終わる
売却と購入の決済を同じ日にそろえる方法
理想は、旧居の売却と新居の購入の決済を同じ日、または近い日程にそろえることです。売却代金を新居の代金に充て、仮住まいも二重ローンも避けられます。
そのためには、売却の売買契約で引渡し日を新居の引渡し予定日に合わせる、または買主と合意して引渡しを少し後ろにずらす方法があります。どちらも買主の都合と合う必要があるので、契約前に条件として伝えておきます。
迷ったら判断基準はこの3つ
- 旧居のローン残債を、売却代金なしで完済できるか
- 売れるまでの2軒分の支払いに、何か月耐えられるか
- どうしても逃したくない新居がすでにあるか
資金計画|手元に残る金額から逆算する
新居の予算は「売却額」ではなく、売却額からローン残債と諸費用を引いた手元に残る金額と自己資金から決めます。
買い替えの資金計画で失敗しやすいのは、査定額をそのまま新居の頭金として考えてしまうことです。実際には、ローンの完済と売却の諸費用が先に差し引かれます。
売却で手元に残る金額=売却額-残債-諸費用
住宅ローンが残っている家を売るときは、通常、決済日に売却代金でローンを一括返済し、抵当権を抹消してから買主に引き渡します。抵当権の仕組みはオーバーローン売却の記事でも詳しく解説しています。
売却の諸費用で大きいのは仲介手数料です。上限は国土交通省の告示で決まっており、売買価格のうち200万円以下の部分は5.5%、200万円超400万円以下の部分は4.4%、400万円を超える部分は3.3%(いずれも税込)です。
4,000万円で売れて、ローン残債が2,500万円の場合
- 仲介手数料の上限:200万円×5.5%+200万円×4.4%+3,600万円×3.3%=138万6,000円
- 売却額4,000万円-残債2,500万円-仲介手数料138万6,000円=1,361万4,000円
- → ここから抵当権抹消の登記費用、売買契約書の印紙代、引っ越し代などが引かれ、残りが新居に回せる金額
新居の予算は、この金額に自己資金と新居のローンの借入額を足した範囲で考えます。
なお、売却益の税金を計算するときは、仲介手数料や印紙代は「譲渡費用」として売却額から差し引けます。国税庁「譲渡所得の計算のしかた」に、譲渡費用の例が載っています。
購入側でかかる費用と自己資金
新居の購入でも、物件価格とは別に費用がかかります。主なものは、仲介で買う場合の仲介手数料、所有権移転や抵当権設定の登記費用、住宅ローンの手数料や保証料、火災保険料、売買契約書の印紙代です。
- 旧居:ローン残高(金融機関の残高証明で確認)
- 旧居:仲介手数料・抵当権抹消費用・印紙代
- 新居:仲介手数料・登記費用・ローン手数料・火災保険料
- 共通:引っ越し代(売り先行で仮住まいなら2回分)
- 翌年:売却益に対する税金(特例が使えない場合)
残債が売却額を上回るとき・資金が先に必要なとき
売却額より残債が多い場合は、差額を自己資金で埋めないと抵当権を抹消できません。金融機関によっては、旧居の残債を新居のローンに上乗せして借りられる買い替えローン(住み替えローン)を扱っていますが、借入額が新居の価値を上回るため審査は厳しくなります。
また、買い先行で旧居の売却代金が入る前に新居の代金が必要なときは、一時的に借りるつなぎ融資を使う方法もあります。商品の有無や金利・手数料は金融機関ごとに違うので、資金計画の段階で比較しておきましょう。
- 新居の予算は「売却額-残債-諸費用+自己資金」から逆算する
- 仲介手数料の上限は400万円超の部分で3.3%(税込)
- 残債が売却額を上回るなら、自己資金か買い替えローンが必要
今の家、いくらで売れるか知っていますか?
持ち続けるか、手放すか。判断の前提になるのは「現在の価格」です。
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スケジュールと仮住まい|引渡し日の合わせ方
買い替えのスケジュールは、旧居の引渡し日と新居の入居日をどうつなぐかで決まります。つなげない期間が仮住まいになります。
売買契約を結んでも、すぐに家を明け渡すわけではありません。契約から決済・引渡しまでには通常、買主の住宅ローン手続きなどのための期間があり、その間に新居の準備を進めます。
決済日・引渡し日・入居日の関係
売却では、決済日に代金を受け取り、同じ日に鍵を渡すのが一般的です。つまり決済日までに引っ越しを終える必要があります。新居の引渡しがそれより後なら、間の期間の住まいが必要です。
- 旧居の売買契約手付金を受け取り、引渡し日を決める
- 新居の売買契約・ローン本審査旧居の引渡し日に間に合う物件かを確認
- 旧居の決済・引渡し日この日までに退去。新居が未完成なら仮住まいへ
- 新居の決済・入居入居後、翌年に確定申告
仮住まいが必要になるケースと費用
仮住まいが必要になるのは、売り先行で新居が決まらないうち、または新築の完成前に旧居を引き渡すときです。費用は家賃だけでなく、敷金・礼金・仲介手数料、そして2回分の引っ越し代がかかります。
短期間なら、家具付きの短期賃貸や、親族の家に一時的に身を寄せる方法もあります。期間が読めないときは、解約条件(短期解約の違約金の有無)を契約前に確認しておきましょう。
国税庁は、新築期間中だけ仮住まいとして使った家屋は3,000万円控除の対象にならないとしています。仮住まいを売っても特例は使えません。特例の対象になるのは、あくまで売った旧居です。
買い替え特約と手付解除
買い先行で新居の売買契約を結ぶときは、「旧居が一定の期日までに一定額以上で売れなければ、新居の契約を白紙解除できる」という買い替え特約を付けられないか交渉する方法があります。売主にとっては不利な条件なので、必ず応じてもらえるとは限りません。
特約がない場合でも、手付金を払っていれば、民法第557条により買主は手付を放棄して契約を解除できます。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は手付解除ができません。解除できる期限は契約書で確認しておきましょう。
買い替えで使える税金の特例
売却益が出たら3,000万円特別控除か買換え特例のどちらか、売却損が出たら損益通算・繰越控除の特例を検討します。どれも確定申告が必要です。
家を売って利益(譲渡所得)が出ると、給与などとは分けて税金がかかります。譲渡所得は「売却額-(取得費+譲渡費用)」で計算します。購入時の契約書がないと取得費が売却額の5%とされることがあり、その場合の対処は取得費がわからない場合の記事で解説しています。
3,000万円特別控除:所有期間を問わず使える
国税庁「マイホームを売ったときの特例」では、マイホームを売ったときは所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できるとしています。所有5年以下の短期譲渡でも使えます。短期と長期の違いは短期譲渡所得の記事を参照してください。
主な要件は、自分が住んでいる家(または住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る家)であること、親子や夫婦など特別の関係がある人に売っていないこと、前年・前々年にこの特例などを受けていないことです。
取得費2,500万円の家を4,000万円で売った場合
- 譲渡費用(仲介手数料など)150万円とする
- 譲渡所得:4,000万円-(2,500万円+150万円)=1,350万円
- → 3,000万円控除を使うと課税される譲渡所得は0円
税金がゼロでも、特例を使うには確定申告が必要です。申告しないと控除は受けられません。
特定の居住用財産の買換え特例:課税を将来に繰り延べる
もう一つが国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」です。令和9年12月31日までに売った場合に、一定の要件のもとで売却益への課税を将来に繰り延べられます。非課税になるわけではありません。
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| 要件 | 3,000万円特別控除 | 買換え特例 |
|---|---|---|
| 効果 | 最高3,000万円を差し引く(非課税) | 課税を将来に繰り延べる |
| 所有期間 | 問わない | 売った年の1月1日で家屋・敷地とも10年超 |
| 居住期間 | 期間の定めなし | 10年以上 |
| 売却代金 | 上限なし | 1億円以下 |
| 新居の取得時期 | 新居の購入は要件ではない | 売った年の前年から翌年までの3年間 |
| 新居の広さ | ― | 建物の床面積50㎡以上・土地500㎡以下 |
| 中古の新居 | ― | 取得の日以前25年以内の建築、または一定の耐震基準 |
※国税庁タックスアンサー No.3302・No.3355(令和8年4月1日現在法令等)をもとに作成。新築の新居には省エネ基準などの要件もあります。
買換え特例では、新居に住む期限も決まっています。売った年かその前年に取得したときは売った年の翌年12月31日まで、売った年の翌年に取得したときは取得した年の翌年12月31日までに住む必要があります。
売却損が出たときの損益通算・繰越控除
売却額が購入時より下がって損が出た場合は、国税庁「マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき」の特例で、損失を給与所得などから差し引けます(損益通算)。引ききれない損失は、翌年以後3年内に繰り越せます。
主な要件は、売った年の1月1日で所有期間が5年を超えていること、新居を売った年の前年1月1日から翌年12月31日までに取得し床面積が50㎡以上であること、新居の取得年の年末に償還期間10年以上の住宅ローンがあることです。合計所得金額が3,000万円を超える年は繰越控除を使えません。
3,000万円控除と買換え特例のどちらを選ぶか
売却益が3,000万円以下なら、多くの場合は3,000万円控除で税金をゼロにできます。買換え特例は売却益が3,000万円を大きく超えるときの選択肢で、住宅ローン控除への影響も含めて比べます。
2つの特例は同じ年に重ねて使えません。国税庁のページでも、買換え特例の要件として、売った年・前年・前々年に3,000万円控除などを受けていないことが挙げられています。
繰り延べた利益は、新居を売るときに課税される
買換え特例を使うと、旧居の取得価額が新居に引き継がれます。新居を将来売ったときは、実際の購入価額ではなく引き継いだ取得価額で利益を計算するため、繰り延べた利益がそのとき上乗せされます。
1,000万円で買った家を5,000万円で売り、7,000万円の家に買い替えた場合
- 売却益:5,000万円-1,000万円=4,000万円(減価償却・譲渡費用は省略)
- 3,000万円控除を選ぶ:今年課税されるのは1,000万円
- 買換え特例を選ぶ:今年の課税は0円。新居を将来8,000万円で売ると、実際の利益1,000万円に繰り延べた4,000万円を加えた5,000万円が課税対象
新居に住み続ける予定なら繰延べのメリットは大きく、将来売る可能性が高いなら3,000万円控除で税金を確定させるほうが分かりやすい選択です。
なお、所有期間が10年を超えるマイホームは、3,000万円控除と軽減税率の特例を重ねて使えます。控除後に残った利益のうち6,000万円以下の部分は、所得税の税率が10%に下がります。
新居の住宅ローン控除が受けられなくなる期間
見落としやすいのが住宅ローン控除との関係です。3,000万円控除も買換え特例も、新居に入居した年・その前年・前々年に使うと、新居の住宅ローン控除が受けられません。
さらに、入居した年の翌年から3年目までの間に、住宅ローン控除の対象となる資産以外の資産を売ってこれらの特例を使う場合も、住宅ローン控除は受けられません。売却と購入の時期が近い買い替えでは、ほぼ必ずこの期間に当たります。
- 特例で減る売却益の税金はいくらか
- 新居の住宅ローン控除で戻る税金は、控除期間の合計でいくらか
- 新居を将来売る可能性はあるか(買換え特例の場合)
- 売却損が出る場合は、損益通算の特例と住宅ローン控除を併用できる
売却損の損益通算・繰越控除の特例は、国税庁のページで住宅ローン控除と併用できると明記されています。どの組み合わせが有利かは金額で決まるため、税務署や税理士に試算してもらいましょう。
売った金額より安い家に買い替えた場合
買換え特例は、新居の購入額が売却額より少なくても使えます。ただし、その差額部分は今年の課税対象になります。国税庁 No.3358では、収入金額を「売った金額-買い換えた金額」として計算するとしています。
国税庁の計算例では、1億円で売って7,000万円の家に買い替え、旧居の取得費と譲渡費用の合計が1,500万円の場合、収入金額3,000万円、必要経費450万円で、課税される譲渡所得は2,550万円です。住み替えで家を小さくする場合は、3,000万円控除との差を必ず比べてください。
特例選びは「今年の税金」だけで決めないこと。住宅ローン控除の金額と、新居を将来売る可能性まで含めて比べるのが正解です。
買い替えで失敗しやすい落とし穴と買取という選択肢
買い替えの失敗の多くは、旧居の売却が計画どおりに進まないことから起きます。売却の時期と金額を先に確定させたいなら、買取も比較する価値があります。
購入はお金を払えば進みますが、売却は買主が現れないと進みません。買い替えの計画は、この「売れる時期の読めなさ」をどう吸収するかで決まります。
旧居が想定どおりに売れない
築年数が古い家、耐震基準や検査済証に不安がある家は、買主の住宅ローンが組みにくく、売却が長引きがちです。旧耐震基準の家の売却のように、物件の事情で買主が限られるケースもあります。
買い先行では売れない期間がそのまま二重返済の期間になり、売り先行でも新居の購入時期がずれ込みます。査定額は売れる価格の目安であって、その価格で売れることの保証ではありません。
住まなくなってからの「3年ルール」を過ぎる
新居に先に引っ越した場合でも、旧居は「以前に住んでいた家屋」として3,000万円控除の対象になります。ただし、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。
例えば2026年中に住まなくなった場合、3年を経過する日は2029年中に来るため、期限は2029年12月31日です。買換え特例や損益通算の特例にも同じ期限があります。売れ残りが長引くと、税金の特例まで失う可能性があります。
売却時期と金額を先に確定させる買取
不動産会社が直接買い取る「買取」は、仲介で一般の買主を探すのに比べて価格は下がる傾向がありますが、売却の時期と金額を早い段階で確定できるのが特徴です。買い替えのスケジュールを組みやすくなります。
メリット
- 引渡し日を新居の入居日に合わせやすい
- 売却額が早く確定し、新居の予算を決めやすい
- 二重ローンや仮住まいの期間を短くできる
デメリット
- 仲介で売るより価格が下がる傾向がある
- 手元に残る金額が減り、新居の予算に影響する
- 会社によって条件が大きく違うため比較が必要
仲介での査定額と買取額の両方を把握しておけば、「いつまでに売れなければ買取に切り替える」という計画が立てられます。どちらを選ぶにしても、まずは今の家の価格を知ることが出発点です。
よくある質問
売り先行と買い先行はどちらを選べばよいですか?
旧居のローン残債を売却代金なしで完済できない場合や、手元資金に余裕がない場合は、売却額を先に確定できる売り先行が安全です。
買い先行は新居をじっくり選べますが、旧居が売れるまで2軒分の返済や固定資産税を負担するため、その期間に耐えられる場合に向いています。
買い替えで3,000万円控除と買換え特例は両方使えますか?
同じ売却について両方を使うことはできず、どちらか一方を選びます。売却益が3,000万円以下なら3,000万円控除で税金をゼロにできることが多く、所有期間10年超なら控除後の利益に軽減税率の特例も重ねて使えます。
3,000万円控除を使うと新居の住宅ローン控除は使えなくなりますか?
新居に入居した年・その前年・前々年に3,000万円控除や買換え特例を使うと、新居の住宅ローン控除は受けられません。入居した年の翌年から3年目までに対象外の資産を売ってこれらの特例を使う場合も同様です。どちらが有利か金額で比べてください。
買い替えで売却損が出た場合も確定申告は必要ですか?
損失を給与所得などと損益通算する特例を使うには、確定申告が必要です。所有期間5年超、新居に償還期間10年以上の住宅ローンがあることなどが要件で、この特例は住宅ローン控除と併用できます。控除しきれない損失は翌年以後3年内に繰り越せます。
先に新居へ引っ越しても3,000万円控除は使えますか?
使えます。以前に住んでいた家屋も対象ですが、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。売却が長引くと特例を使えなくなるため、期限から逆算して売り出してください。
この記事のまとめ
- 家の買い替えは査定から確定申告まで7ステップ。最初に今の家の価格を知る
- 資金に余裕がなければ売り先行、買い先行は二重ローンに耐えられる場合に限る
- 新居の予算は「売却額-ローン残債-諸費用+自己資金」から逆算する
- 旧居の引渡し日と新居の入居日をつなげないと仮住まいが必要になる
- 売却益は3,000万円控除か買換え特例のどちらか一方。住宅ローン控除との関係も比べる
- 売却が読めないときは、買取で時期と金額を先に確定させる方法もある
買い替えの計画は、今の家がいくらで売れるかが分からないと始まりません。まずは複数の会社の査定で、売れる価格の幅を確認するところから始めてください。