住宅ローンが残ってる家を売る手順|抵当権抹消とオーバーローン対策

住宅ローンが残った家を売るときの抵当権抹消と残債の判定を解説する記事のイメージ

転勤、家族構成の変化、住み替え、返済の負担——家を売りたい理由ができたとき、まだ住宅ローンが何千万円も残っている方は少なくありません。「ローンを全部返してからでないと売れないのでは」と考えて、売却の検討そのものを止めてしまう方もいます。

結論から言うと、住宅ローンが残ってる家も売れます。一般的には、買主から受け取る売却代金でローンを一括返済し、決済日に抵当権の抹消登記を所有権移転登記と同時に申請する流れです。条件は、売却代金から諸費用を引いた「手取り」で残債を返しきれるかどうか、の一点に集約されます。

返しきれない場合(オーバーローン)でも、自己資金での補填や住み替えローンなどの方法があります。まず自分がどちらに当たるのかを、数字で確かめるところから始めましょう。

この記事を読むとわかること

  • 住宅ローンが残ってる家を売るための条件と、抵当権を外す仕組み
  • アンダーローン・オーバーローンを「手取り」で判定する計算方法
  • 金融機関への連絡から決済日までの手順と、抵当権抹消の書類・費用
  • オーバーローンのときの選択肢(自己資金・住み替えローン・任意売却)
  • 一括返済の手数料、住宅ローン控除、売却損が出たときの税金の扱い

この記事の結論

  1. 住宅ローンが残っていても売却はできます。決済日に売却代金で一括返済し、抵当権抹消登記を同時に申請するのが一般的な流れです。
  2. 判定は「売却価格−諸費用」と残債の比較です。3,000万円で売る場合、仲介手数料の上限だけで税込105.6万円かかるので、売却価格だけで比べないでください。
  3. 抵当権抹消登記の登録免許税は不動産1物件につき1,000円(土地と建物なら2,000円)。必要書類は完済時に金融機関から出されます。
  4. 一括返済の手数料は金融機関やローンの種類で異なります。【フラット35】は手数料無料・返済の1か月前までに申し出が必要です。
  5. 住宅ローン控除はその年の12月31日まで住んでいることが要件なので、売って引っ越した年から使えません。売却損が出たときは、損益通算できる特例があります。

住宅ローンが残ってる家は売れる?|カギは抵当権の抹消

結論

住宅ローンが残っていても家は売れます。ただし引渡しまでに抵当権を抹消することが売主の義務なので、ローンを完済できる資金の見通しが前提になります。

住宅ローンを借りるとき、金融機関は購入した土地と建物に「抵当権」を設定しています。返済が続いている間は、この抵当権が登記簿に残ったままです。

家を売るときに問題になるのは、ローンの残高そのものよりも、この抵当権が付いたままでは買主に引き渡せないという点です。

用語の補足:抵当権

お金を貸した人(金融機関)が、返済が滞ったときに担保の不動産から他の債権者より先に回収できる権利です(民法第369条)。借り手が住み続けたまま設定されるのが特徴です。

抵当権が残ったままでは買主が見つからない

抵当権は、家の持ち主が変わっても自動的には消えません。抵当権が残った家を買うと、前の持ち主のローンが返されなかった場合に、買った家が競売にかけられるおそれを抱えることになります。

そのため、不動産の売買契約書のひな型では、売主は所有権移転の時期までに抵当権などの負担を消除すると定めるのが一般的です。全国宅地建物取引業協会連合会の売買契約書式(第11条)にも同じ趣旨の条項があり、抹消できなければ売主の契約違反になります。

売却代金で一括返済するのが一般的

「先にローンを全部返さないと売り出せない」というわけではありません。売り出しも売買契約もローン返済中に進められ、最後の決済日に、買主から受け取った代金でローンを一括返済します。

不動産流通推進センターが運営する不動産ジャパンも、抵当権が設定されている物件の売却では「ローンの全額返済と抵当権抹消のための準備を進めます」とし、引渡しの際に抵当権抹消の登記も同時に申請すると説明しています。

POINT

売れるかどうかは「残債を消せるか」で決まる

  • 売り出し・売買契約はローン返済中でもできる
  • 決済日に売却代金で一括返済し、抵当権を外して引き渡す
  • 売却代金で返しきれない分は、決済日までに別の資金を用意する必要がある

まず残債の正確な金額を確認する

最初にやることは、ローンの残高を正確に知ることです。返済開始時に受け取った返済予定表(償還予定表)、金融機関のインターネットバンキング、年末に届く残高証明書などで確認できます。

ただし売却のときに必要なのは「決済予定日時点で一括返済するといくらか」です。残高は毎月の返済で減っていくので、売却を決めたら借入先の金融機関に問い合わせ、決済予定日での返済額を確認しておきましょう。

  • 借入先の金融機関名と、ローンの種類(【フラット35】か民間ローンか)
  • 現時点の残高と、決済予定日に一括返済した場合の金額
  • 一括返済の手数料と、申し出の期限
  • 別の借入れなど、同じ家に付いている抵当権がほかにないか(登記簿で確認)

アンダーローンかオーバーローンか|「手取り」で判定する

結論

売却価格から諸費用を引いた手取りが残債を上回ればアンダーローン、下回ればオーバーローンです。売却価格ではなく手取りで比べるのが判定のポイントです。

残債のある家の売却は、アンダーローンかオーバーローンかで進め方が大きく変わります。アンダーローンなら売却代金だけで抵当権を外せますが、オーバーローンなら不足分をどう埋めるかを先に決めなければなりません。

用語の補足:アンダーローン/オーバーローン

売却で得られるお金がローン残高を上回る状態をアンダーローン、下回る状態をオーバーローンと呼びます。法律用語ではなく、不動産の売買で使われる呼び方です。

判定式は「売却価格−諸費用」と残債の比較

よくある失敗が、「3,000万円で売れそうで、残債は2,950万円だから大丈夫」と売却価格だけで判断してしまうことです。実際には仲介手数料などの諸費用が売却代金から出ていくため、手取りはもっと少なくなります。

判定式は「売却価格 − 売却諸費用 ≧ 決済日の残債」です。この式が成り立てばアンダーローン、成り立たなければオーバーローンと考えてください。

売却時にかかる諸費用の内訳

売却諸費用のうち、金額が大きいのは仲介手数料です。上限は国土交通省の告示で決まっていて、税込で売却価格400万円超の部分は3.3%、200万円超400万円以下の部分は4.4%、200万円以下の部分は5.5%です(国土交通省)。

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費用 金額の目安 根拠・補足
仲介手数料 3,000万円で売る場合、上限は税込105.6万円 宅地建物取引業法にもとづく告示の上限。実際の額は媒介契約で決める
売買契約書の印紙税 1,000万円超5,000万円以下の契約書は1万円 2027年3月31日までに作成する契約書の軽減税率
抵当権抹消登記の登録免許税 不動産1物件につき1,000円 土地1・建物1なら2,000円。マンションは敷地権の数だけ加算
司法書士への報酬 依頼先によって異なる 抹消登記を代理で申請してもらう費用。見積もりで確認する
一括返済の手数料 ローンの種類・金融機関によって異なる 【フラット35】は無料。民間ローンは契約内容を確認

※印紙税は国税庁 No.7108、登録免許税は法務省の案内による。このほか引越し費用などが別にかかります。

具体例

3,000万円で売れて、残債が2,600万円の場合

  • 仲介手数料(上限):200万円×5.5%+200万円×4.4%+2,600万円×3.3%=105.6万円
  • 印紙税1万円+抵当権抹消の登録免許税0.2万円(土地・建物の2物件)
  • → 手取りは約2,893.2万円。残債2,600万円を返しても約293万円が残るアンダーローン

司法書士報酬と引越し費用はこの手取りからさらに出ていきます。売却価格が約2,700万円を下回ると、手取りで残債2,600万円を返しきれなくなります。

売却価格は査定額の幅で見積もる

判定に使う売却価格は、あくまで「売れそうな価格」の見込みです。査定額は不動産会社によって差が出るうえ、売り出してから値下げすることもあります。

1社の査定額だけで判定すると、高めの数字を信じてしまいがちです。複数の査定額のうち低めの数字でも手取りが残債を上回るかを確認しておくと、売り出した後に「返しきれない」と気づく事態を防げます。

この項目のまとめ
  • 判定は「売却価格−諸費用」と決済日の残債で行う
  • 3,000万円の売却なら仲介手数料の上限だけで税込105.6万円
  • 査定額は低めの数字でも試算しておく

残債がある家を売る手順|金融機関への連絡から決済日まで

結論

流れ自体は通常の売却と同じですが、借入先の金融機関への連絡と一括返済の申し出が加わります。返済・抹消・所有権移転は決済日の同じ日に行うのが一般的です。

残債がある家の売却では、不動産会社・買主・司法書士に加えて、ローンを借りている金融機関が登場します。どの段階で何を伝えるかを押さえておけば、決済日に慌てずに済みます。

売却の全体の流れ

売却を決めてから引き渡すまでの流れは次のとおりです。金融機関への一括返済の申し出は、期限があるので決済日が決まり次第すぐに行います。

  1. 残債と返済条件を確認する返済予定表や金融機関への問い合わせで、残高・一括返済の手数料・申し出の期限を確認します。
  2. 査定を受けて手取りを試算する複数社の査定額をもとに、アンダーローンかオーバーローンかを判定します。
  3. 媒介契約を結んで売り出すオーバーローンの場合は、不足分の資金の手当てを売り出し前に決めておきます。
  4. 売買契約を結ぶ所有権移転の時期までに抵当権を抹消することを約束し、決済日を決めます。
  5. 金融機関に一括返済を申し出る決済日を伝え、その日に返済する金額を確定させます。司法書士とも日程を共有します。
  6. 決済・引渡し残代金を受け取り、ローンを一括返済して、抹消登記と所有権移転登記を同時に申請します。

決済日に起きること|返済と抹消は同じ日

決済日の段取りについて、不動産ジャパンは、売主の所有権移転・引渡しと、買主の残代金の支払いを同時に行うことを原則としています。

このとき司法書士が売主・買主の双方を代理して登記を申請するのが一般的で、抵当権が設定されている物件では抹消登記も同時に申請します。売主が別の日に自分で抹消しに行く、という流れには通常なりません。

  1. 残代金を受け取る買主がローンを使うならこの日に実行
  2. ローンを一括返済売却代金から借入先へ返済
  3. 抹消書類が出される解除証書・登記識別情報・委任状など
  4. 登記を同時に申請司法書士が抹消と所有権移転を申請
図:決済日の流れ。返済から登記申請までを同じ日に行う

抵当権抹消登記の書類と費用

法務省の案内によると、抵当権抹消登記の申請には、金融機関から送られる登記識別情報(または登記済証)、解除証書・弁済証書などの登記原因証明情報、委任状と、金融機関の会社法人等番号が必要です。

登録免許税は不動産1物件につき1,000円で、土地1物件と建物1物件なら2,000円です。マンションで敷地権が3物件ある場合は、建物1物件と合わせて4,000円になります(法務省民事局)。

注意

登記簿上の住所・氏名が今と違う場合(引越しや結婚など)は、抵当権抹消の前提として住所・氏名の変更登記が必要になることがあります。売却を決めた段階で登記簿を確認し、司法書士に伝えておきましょう。

住み替えなら「売り先行」か「買い先行」かを先に決める

今の家を売って次の家を買う場合は、どちらを先に進めるかで資金計画が大きく変わります。ローンが残っている家では、売れた金額で残債をいくら返せるかが決まるまで、次の家に回せるお金が確定しない点に注意が必要です。

進め方 利点 注意点
売り先行 売却額と残債の精算額が確定してから、次の家の予算を決められる 引渡しと入居の時期がずれると、仮住まいの家賃や2回分の引越し費用がかかる
買い先行 次の家をじっくり選べ、今の家は空き家の状態で売り出せる 売れるまで2つのローンを同時に返す期間が生じ得る。想定より安くしか売れないと資金計画が崩れる

※新居のローン審査では、今のローンの返済も含めて返済能力を判断されるのが一般的です。条件は金融機関に確認してください。

残債がある家では、まず売り先行を基本に考え、買い先行は2つのローンを並行して返せる見通しがある場合に限るのが堅実です。売却と購入の決済日を同じ日にそろえる段取りも、不動産会社に早めに相談しておきましょう。

オーバーローンのときの選択肢

結論

手取りで返しきれない場合は、不足分を自己資金で補うのが基本です。住み替えなら住み替えローン、返済自体が難しいなら任意売却が次の選択肢になります。

オーバーローンでも売却できないわけではありません。決済日に残債を全額返せれば、抵当権は外せます。問題は、足りない分をどこから持ってくるかです。

不足分を自己資金で補填する

最もシンプルなのは、預貯金などの自己資金で差額を埋める方法です。決済日に売却代金と自己資金を合わせて一括返済すれば、アンダーローンと同じ流れで売却できます。

具体例

2,500万円で売れて、残債が2,700万円の場合

  • 仲介手数料(上限):200万円×5.5%+200万円×4.4%+2,100万円×3.3%=89.1万円
  • 印紙税1万円+抵当権抹消の登録免許税0.2万円
  • → 手取りは約2,409.7万円。残債2,700万円に約290.3万円足りない

売却価格と残債の差は200万円でも、諸費用を含めると約290万円の自己資金が必要です。司法書士報酬や引越し費用も別に見込んでおきます。

不足分を親から援助してもらう場合は、贈与税に注意が必要です。暦年課税では1年間にもらった財産の合計が110万円を超えると贈与税がかかります(国税庁 No.4402)。

住み替えなら住み替えローンという方法も

今の家を売って新しい家を買う場合は、売却で返しきれない残債を、新居の購入資金とまとめて借りられる「住み替えローン」を扱う金融機関があります。手元の資金を減らさずに住み替えられるのが利点です。

一方で、借入額が新居の価格より大きくなるため審査は通常より厳しくなりやすく、今の家の売却と新居の購入を同時に進める必要があります。条件は金融機関ごとに異なるので、検討する場合は早めに相談してください。

返済自体が難しいなら任意売却を検討

自己資金もなく、毎月の返済も苦しい場合は、金融機関の同意を得て売る「任意売却」という方法があります。住宅金融支援機構は、任意売却は通常の不動産取引として売買されるため一般的に競売より高値で売却できることが期待されると案内しています(住宅金融支援機構)。

ただし売却後も残った債務の返済義務は残ります。また住宅金融支援機構は、任意売却が成立する見込みがないと判断した場合には競売の申立てを行うことがある、としています。流れや期限は任意売却の流れと期限で詳しく解説しています。

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選択肢 向いている人 注意点
自己資金で補填 不足分を預貯金などで用意できる 手元資金が減る。諸費用込みの不足額で準備する
住み替えローン 新居を買う予定があり、収入に余裕がある 借入額が増える。売却と購入を同時に進める必要
任意売却 返済の継続が難しく、補填する資金もない 金融機関の同意が必要。残った債務の返済は続く
ちょっと一息

その家、今の残債を返せる価格で売れますか?

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一括返済の手数料と申し出の期限

結論

売却時の一括返済は「全額繰上返済」にあたり、手数料と申し出の期限はローンごとに決まっています。【フラット35】は手数料無料で、返済の1か月前までに申し出が必要です。

売却代金でローンを返すことは、金融機関から見ると予定より早くローンを完済する「全額繰上返済(完済)」です。通常の毎月の返済とは別の手続きなので、手数料や申し出の期限がかかわってきます。

手数料はローンの種類と手続き方法で変わる

【フラット35】の全額繰上返済は、窓口で申し出る場合「手続に手数料はかかりません」とされています(【フラット35】繰上返済)。一部繰上返済も無料です。

民間金融機関の住宅ローンは、手数料の有無や金額が金融機関、金利タイプ、窓口かインターネットかといった手続き方法で異なります。金銭消費貸借契約書や金融機関のウェブサイトで確認し、売却諸費用の試算に入れておきましょう。

  • 全額繰上返済の手数料(窓口とインターネットで違うか)
  • 申し出の期限(返済日の何日前・何か月前までか)
  • 決済日に返済できるか(返済日が毎月の約定返済日に限られないか)
  • 同じ家に複数のローン(ペアローンなど)がある場合、それぞれの手続き

申し出の期限から逆算して決済日を決める

【フラット35】の場合、全額繰上返済は繰り上げて返済する1か月前までに、返済中の金融機関に申し出る必要があります。インターネットサービス「住・My Note」で申し込む場合は、完済日の2か月前から1か月前の日の前営業日までが申込期間です(【フラット35】(保証型)は住・My Note での全額繰上返済の申込みはできません)。

売買契約で決済日を決めるときは、この期限に間に合うかを必ず確認してください。期限を過ぎると決済日に完済できず、抵当権を外せないため、引渡しが延びて買主との約束を守れなくなるおそれがあります。

POINT

決済日は「金融機関の都合」も含めて決める

  • 売買契約の前に、借入先の申し出期限を確認しておく
  • 決済日が決まったら、すぐ金融機関と司法書士に連絡する
  • 決済日が変わったら返済額も変わるので、金融機関に再確認する

住宅ローン控除はどうなる?|売った年から使えない

結論

住宅ローン控除は、控除を受ける年の12月31日まで住んでいることが要件です。年の途中で売って引っ越した場合、その年分から控除は受けられません。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、2022年以降に入居した場合、年末のローン残高に0.7%を掛けた金額を所得税などから差し引ける制度です。売却を考えるときは、今の家の控除がいつ終わるのか、住み替え先で控除を使えるのかの2点を確認します。

年末に住んでいないと控除は受けられない

国税庁は住宅ローン控除の要件として、「この特別控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住の用に供していること」を挙げています(国税庁 No.1211-1)。

そのため、たとえば2026年8月に家を売って引っ越した場合、2026年分の控除は受けられません。控除期間が何年残っていても、売却して住まなくなった年で控除は終わりと考えてください。控除が残っていることを理由に年末まで売却を待つかどうかは、その年の控除額と売却の時期を比べて判断します。

住み替え先の控除と3,000万円特別控除は併用できない

住み替え先の新居で住宅ローン控除を使う予定がある場合は、もう1つ注意点があります。新居に住み始めた年とその前2年・後3年の計6年間に、今の家の売却で3,000万円特別控除などの特例を受けると、新居の住宅ローン控除は受けられません。

  1. 新居に住んだ年の2年前この年からの売却で特例を使うと対象
  2. 新居に住み始めた年住宅ローン控除の起点となる年
  3. 住み始めた年の3年後この年までの売却で特例を使うと、新居の控除は受けられない
図:新居の住宅ローン控除と、旧居の売却特例が重なる6年間

売却で利益が出る場合は、3,000万円特別控除で譲渡所得税を減らすか、特例を使わずに新居の住宅ローン控除を受けるかを比べることになります。どちらが得かは利益の額と新居のローン額で変わるので、税務署や税理士に試算してもらうのが確実です。

この項目のまとめ
  • 今の家の住宅ローン控除は、売って住まなくなった年から使えない
  • 新居の控除と旧居の3,000万円特別控除は、6年間の範囲で併用できない
  • 利益が出る住み替えは、どちらを使うか試算してから決める

売却益・売却損が出たときの税金

結論

利益が出れば3,000万円特別控除、ローン残高を下回る価格で売って損失が出れば損益通算の特例を確認します。オーバーローンの売却損は給与所得などと相殺できる場合があるので、確定申告を忘れないでください。

家を売ったときの税金は、売却価格から取得費(建物は減価償却後の金額)と譲渡費用を引いた「譲渡所得」にかかります。残債の多い少ないは税金の計算には直接関係しませんが、オーバーローンの売却では損失が出ることが多く、その場合に使える特例があります。

利益が出たら3,000万円特別控除を確認

住んでいた家を売って利益が出た場合は、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります(国税庁 No.3302)。すでに引っ越している場合は、住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが条件です。

特例を使わずに税金がかかる場合、所有期間が5年以下か5年超かで税率が大きく変わります。数え方は短期譲渡所得の税率と1月1日判定で解説しています。

オーバーローンの売却損は給与と相殺できる場合がある

住宅ローンのあるマイホームを、ローン残高を下回る価格で2027年12月31日までに売って損失が出た場合、一定の要件を満たせば、その損失を給与所得などと損益通算し、控除しきれない分を翌年以後3年間繰り越せます(国税庁 No.3390)。

主な要件は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていることと、売買契約日の前日に償還期間10年以上の住宅ローン残高があること、親子や夫婦など特別な関係にある人への売却でないことです。

損益通算できる額は、契約日前日のローン残高から売却価格を引いた金額が上限になります。また繰越控除は、合計所得金額が3,000万円を超える年は使えません。

具体例

残債2,700万円の家を2,500万円で売り、譲渡損失が出た場合

  • 前提:取得費(減価償却後)3,300万円と仮定、譲渡費用(仲介手数料・印紙税)90.1万円
  • 譲渡損失:2,500万円−3,300万円−90.1万円=−890.1万円
  • → 損益通算の上限は2,700万円−2,500万円=200万円(契約日前日の残高で計算)

損失が890万円あっても、給与所得などと相殺できるのは200万円までです。適用には確定申告が必要です。

新居を住宅ローンで買い換える場合は、別の特例(国税庁 No.3370)の対象になる可能性があり、新居の取得時期や床面積50平方メートル以上などの要件が加わります。こちらも親子や夫婦など特別な関係にある人への売却は対象外です。

決済日を確実に決めたいなら買取も比較する

残債がある家の売却では、決済日を金融機関の申し出期限や住み替えの日程に合わせる必要があります。仲介で買主を探す場合、いつ・いくらで売れるかは買主が見つかるまで確定しません。

不動産会社が直接買い取る「買取」は、価格が仲介より低くなりやすい一方で、買主を探す期間がなく、決済日を相談して決めやすいのが特徴です。住み替えの日程が決まっている場合や、仲介で売れずに返済が続く負担が重い場合は、仲介と買取の両方の価格を比べてから決めると判断を誤りにくくなります。

買取のメリット

  • 買主探しが不要で、決済日の見通しが立てやすい
  • 一括返済の申し出期限から逆算して日程を組みやすい

買取のデメリット

  • 仲介で売るより価格が低くなりやすい
  • 価格が下がる分、オーバーローンになりやすい
  • 手取りと残債の比較を、買取価格でやり直す必要がある
結論

住宅ローンが残ってる家を売れるかどうかは、決済日に残債を全額返して抵当権を外せるかで決まります。まず査定額から諸費用を引いた手取りを出し、残債と比べるところから始めてください。

よくある質問

住宅ローンを完済してからでないと売り出せませんか?

いいえ。売り出しや売買契約はローンの返済中でも進められ、決済日に売却代金でローンを一括返済して抵当権を抹消するのが一般的な流れです。ただし売買契約では所有権移転の時期までに抵当権を抹消すると約束するので、手取りで完済できるかを契約前に確認しておきます。

抵当権抹消登記は自分でできますか?

法務省は自分で申請する場合の案内を公開しており、登録免許税は不動産1物件につき1,000円です。

ただし売却の決済日には所有権移転登記と同時に申請するのが一般的で、司法書士が双方を代理して手続きします。売却時は司法書士に任せる前提で準備するのが現実的です。

家を売った年も住宅ローン控除は受けられますか?

受けられません。住宅ローン控除は、控除を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいることが要件です。年の途中で売却して引っ越した場合は、控除期間が残っていても、その年分から控除の対象外になります。売る時期を決めるときは、この点も含めて検討してください。

オーバーローンで自己資金が足りない場合はどうなりますか?

決済日に残債を全額返せないと抵当権を外せないため、通常の売却は成立しません。住み替えなら残債を新居の資金とまとめて借りる住み替えローン、返済自体が難しいなら金融機関の同意を得て売る任意売却が選択肢です。任意売却が成立しないと競売を申し立てられることがあります。

この記事のまとめ

  • 住宅ローンが残ってる家も、決済日に一括返済して抵当権を抹消すれば売れる
  • 判定は「売却価格−諸費用」と残債の比較。仲介手数料の上限は3,000万円で税込105.6万円
  • 返済・抹消・所有権移転は決済日に同時に行う。抹消の登録免許税は1物件1,000円
  • オーバーローンは自己資金で補填、住み替えローン、任意売却の順に検討する
  • 一括返済の申し出期限を確認する(【フラット35】は1か月前まで・手数料無料)
  • 住宅ローン控除は売った年から使えない。売却損は損益通算の特例を確認する

どの選択肢を取るにしても、出発点は「今いくらで売れるか」です。まずは現在の価格を知り、手取りと残債を比べるところから始めてください。

この記事を書いた人

売却ナビット編集部(運営:合同会社GREA)
不動産の一括査定サービス「売却ナビット」を運営。相続・老朽化・投資物件など、売りにくい不動産の売却相談を扱っています。
〒113-0033 東京都文京区本郷1-4-4 水道橋ビル6階/TEL 03-5615-9793(10:00〜18:00 年中無休・年末年始を除く)
記事内の税制・法令に関する記述は、国税庁・法務省・国土交通省などの公表情報をもとに作成しています。個別の判断は必ず税理士等の専門家にご確認ください。

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